2017.10.26

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商品開発の落とし穴?「ペプシパラドックス」を防ぐために、気をつけたいポイント

商品開発の落とし穴?「ペプシパラドックス」を防ぐために、気をつけたいポイント

2017.10.26

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こんにちは。BAKE Inc.の科学研究員の大嶋(Facebook)です。 BAKE Inc.(以下BAKE)では、日々、新ブランドや、既存ブランドの新フレーバーの開発を行っています。直近では、BAKE CHEESE TARTの広島店限定フレーバーや、クロッカンシュー ザクザクの期間限定フレーバーが発売されました。 新商品を作るときには、開発チームがアイデア出しから試作まで行いますが、最終的な商品になる前に、社内で試食会が行われます。いくつかのサンプルを食べ比べて、おいしさや味の特徴についてのアンケートを行い、改良の参考にするためです。 しかし、このアンケート、やり方に気をつけないと、間違った方向に改良が進んでしまうことがあります。今回は、コーラの味を例に、アンケートに潜む罠についてご紹介します。

ブランド名を明かすと味の好みが変わる?

コーラといえば、ペプシコーラとコカコーラが世界的に人気ですよね。両者は、1位の座をめぐって長年競い合ってきました。実際、ペプシコーラとコカコーラはどちらが人気なのでしょうか。ある日、戦いに決着をつけるべく、飲み比べのテストが実施されました。

ブランドを明かさないで飲み比べ:ペプシコーラの勝ち

まずは、どちらのサンプルがどちらのコーラなのか、ブランドを明かさない条件で飲み比べが実施されました。その結果、ペプシコーラの方が好ましいと答える人が多かったようです。つまり、味の面ではペプシコーラが勝っていたわけです。

ブランドを明かして飲み比べ:コカコーラの勝ち

しかし、次に、ブランドを明かした状態で飲み比べを行ったところ、コカコーラの方が好ましいと答える人が多いという結果になったのです!味はペプシコーラの方が好ましかったにもかかわらず、です。コカコーラというブランド情報が、参加者の味の好みを変えてしまったのです。 この現象は、「ペプシパラドックス」として知られています。ペプシパラドックスは、脳科学研究からも裏付けが取れているようです。ブランドを明かす条件では、コカコーラを飲んだ時にのみ、情動や記憶に関係する脳部位が活発になっていることがわかりました。これは、コカコーラのブランドが、特定の気持ちやイメージに結びついたためだと考えられています。

▶POINT 試食会を行うときには、味以外の要素が好みを変えてしまう可能性に気をつける必要があります。試食サンプルが、参加者に余計な情報を与えていないか十分に注意したほうがよさそうです。

甘くておいしい、は有利?

ただし、このペプシパラドックスは、ブランドを明かさない飲み比べテストの結果が完全に中立だ、という前提をもとに成り立っています。 しかし、ブランドを明かさない飲み比べでも、好ましいほうの選ばせ方によって結果が変わってしまうこともあるのでは?と考えた研究者がいました。 そこで、次のような実験が行われました。

3条件でブランドを明かさずに飲み比べ:一部ペプシコーラの勝ち

先ほどのように、ペプシコーラとコカコーラをブランドを明かさずに飲み比べる実験を行ったのですが、このとき、参加者を3つのグループに分けました。 1)何も指示がない状態で飲み比べてもらうグループ 2)好きな理由を分析しながら飲み比べてもらうグループ 3)嫌いな理由を分析しながら飲み比べてもらうグループ この3つのグループに、どちらのコーラが好みだったかを尋ねたところ… 2)のグループでのみペプシコーラを好む人が多く、1)や3)では好みに差はない、という結果に。ブランドを明かさないで飲み比べる場合でも、質問の仕方によって、結果に違いがでるのは興味深いですね。 好きな理由を分析しながら飲み比べてもらうと、なぜペプシコーラが選ばれるようになるのでしょうか。実は、人は「理由をつけやすい」というだけの理由で、ものを選ぶことがあるのです(理由に基づく選択仮説)。 実験時、2)の参加者はペプシコーラについて、「こっちのほうが甘くておいしい」という具合に、好きな理由を挙げやすかったと述べていました。実際、事前の成分分析で、コカコーラよりもペプシコーラのほうが、糖度が高くて甘味が強く感じられることが分かっていました。ペプシコーラは、はっきりした味の特徴を好きな理由として挙げやすかったために、選ばれやすかったのだと考えられるのです。 一方で、3)の参加者は、どちらのコーラも、嫌いな理由の挙げやすさは変わらないと述べていました。事前の成分分析でも、どちらのコーラにもマイナス評価につながる味の特徴はありませんでした。3)では、「どちらも特に嫌いな理由はないな〜」という印象が、どちらかを選ぶ動機をなくし、好みに差がでなかったのだと考えられます。

▶POINT 好きなほうを選んでもらう方法によって、選ばれるサンプルが変わってしまうことあるようです。アンケートを作成するときには、質問の仕方が、参加者の心理を特定の方向に誘導しまうことがないかを吟味したほうがよさそうです。

完全に中立的な試食会を行うのは、案外難しいのかもしれないですね。BAKEでも、試食会を行うときには、なるべくこうしたバイアスが生じないように注意していきたいと思います!

BAKE OPENLAB

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