こんにちは。BAKE Inc.の科学研究員の大嶋(Facebook)です。 みなさんは、料理やおやつを食べる時、食べ物と飲み物の相性を意識しますか? お肉料理と赤ワイン、スイーツとコーヒーや紅茶といった具合に、相性の良い同士を一緒に食べ合わせると、それぞれの美味しさがよりいっそう引き立ちますよね。BAKE Inc.(以下、BAKE)でも今月から、BAKE CHEESE TARTをよりおいしくお召し上がりいただけるように、チーズタルトの酸味と相性抜群のコーヒー「BAKE BLEND」の提供を始めました(※自由が丘店限定)。 →焼きたてチーズタルトの新しいパートナーに、とびきりのコーヒーブランドが登場です。 相性の良い食べ合わせを知っていれば、普段からもっと食べ合わせを意識できるようになって、毎日の食事やおやつがさらに楽しみになりそうじゃありませんか?実は、てっとり早く相性の良い組み合わせを探す方法があるんです!それは、「Foodpairing(R)」(https://inspire.foodpairing.com/)というサービスを使うこと。 このサービスは、食べ物の相性分析を専門とするアメリカのFoodpairing社が作ったもので、食材を入力すると、その食材と相性の良い食材を提案してくれるのです。すべて英語にはなりますが、無料版は、名前やメールアドレスを入力すれば誰でも使うことができます。 トップ画面はこんな感じ。 まずは食材を選びます。 一例として「トースト」を選択。すると、トーストに合う食材を提案してくれます。 食材の隣にある緑の丸が大きいほど、相性が良いようです。この場合だと、エメンタールチーズ(「Emmental」)やグリュイエールチーズ(「Gruyere」)との相性が良いようです。食材は1つだけでなく2つ、3つとマッチしていくことができます。 この例では、グリュイエールチーズと、フライドポテトを合わせてみています。こんな具合に、相性の良い同士を探していくことができます。この記事では、Foodpairing(R)を実際に使いながら、フードペアリングの楽しみ方をご紹介いたします!
筆者は、寒くなるとチョコレートが無性に食べたくなるので、まずは「チョコレート」と入力してみたところ、さっそく気になる組み合わせを提案してくれました。「ダークチョコ+しょうゆ」と「ミルクチョコ+味噌」です。一体どんな味がするのでしょうか。 どちらも、もう少し調味料の加え方を工夫すれば、十分「アリ」な組み合わせだと感じました! ダークチョコはしょうゆが加わることで、しょうゆのピリ辛感が際立ち、アクセントになります。芳醇になり、大人な味わいに変化した気がします。ダークチョコだからこそなせる味わいだと感じました(写真左)。 一方で、ミルクチョコと味噌は、口に入れた瞬間は味噌とチョコに分断されているのですが、噛んでいるうちに口の中で両者が混じりあうと、確かに相性が良いと思えてきます。チョコがより濃厚になり、味噌の旨味や塩味が、チョコの甘味を引き立てるのです(写真右)。
次に、洋菓子作りに欠かせない材料である生クリームと相性の良い食材を探してみたところ、まさかのベーコンと合わせる提案をされました。生クリームというスイーツ材料と、明らかに料理にしか使われない肉を合わせて食べるとどうなるのか、想像もつきませんね。そこで、ベーコンに生クリームを垂らすという直球勝負を挑んでみました。その結果… 「あ、これはいい!!」 条件反射的ともえる第一声はこれでした。ベーコンと生クリーム、これは合います。生クリームの脂肪の甘い感じが、ベーコンの甘味を引き立てます。安物のベーコンでさえも、脂肪分特有の味が濃厚でクリーミーに感じられ、おいしいです。これは良い組み合わせであり、応用の可能性も大だと思います。
続いて、「スイートコーン+ポップコーン+セサミシード」を試してみました。ポップコーンに弾け損ねたコーンが紛れ込んでいることはあれど、生のコーン自体が混ざっていることはほとんどありませんね。両者をゴマとともに混ぜ合わせると、どんな味わいになるのでしょうか。 結論から言いますと、このサービス、完璧というわけではないようです。 ポップコーンとゴマは合います。スイートコーンとゴマも合います。ポップコーンとスイートコーンは、確かに元が同じだけあって、味が干渉しません。しかし、決定的な欠点がありました。乾いているポップコーンに対し、水分を含むスイートコーンを一緒にすると、ポップコーンが濡れたような感じになり、軽い食感が消えてしまうのです!乾いてるとも濡れてるとも言い難い、なんとも言えないネチャっとした食感になってしまいます。味が良いことは確かなのですが、味以外の要素も大切であることを思い知らされました。 それでも、Foodpairing(R)を使うことで、新しい味の組み合わせを発見できる可能性は十分にありそうです。提案された食材の合わせ方を少し工夫して、相性が引き立つ調理法を見つけられると良いですね!
ところで、このサービスは、どのようにして食べ合わせの良し悪しを決めていると思いますか? 人間だったら「ノリが合う」とか「笑いのツボが合う」みたいに、相性が良い理由はなんとなく納得できるものですが、食べ物の相性の良さは何が理由なのかを考えてみても、感覚的で曖昧なことしか言えないのではないでしょうか。相性の良い食べ物と悪い食べ物は、いったい何が違うのでしょうか。 近年では、シェフやパティシエのみならず、科学者もこの不思議を解明しようとしています。炭水化物も、タンパク質も、脂肪も、細かく分解するとすべての食品は化学的な成分で成り立っていますので、科学者はそのような成分を詳しく調べることで、食べ合わせの秘密を探ってきました。 これまでの研究で、私たちが相性が良いと感じる成分の組み合わせが見つかってきました。 その法則とは・・・ 1)似たもの同士 2)真逆なもの同士 3)組み合わさることで新しい味が出現する同士 の3つです! たとえば、ホワイトチョコレートとキャビアは、どちらも「アミン」という成分を含んでいるので相性が良いといいます。また、赤ワインと魚介の組み合わせは、赤ワイン中の鉄イオンや、赤ワインとホタテの成分が組み合わさって揮発性の成分が生じるため、不快な味わいが生じやすいようです。 Foodpairing(R)では、それぞれの食材がもつ「香りの成分」を自社で分析し、成分同士が上の3つの法則に当てはまるかどうか等によって、食材同士の相性を決めているようです。 上の図では、いちごの香りの成分には、チョコやチーズ、バジルと共通する成分が含まれていることを示しています。 もちろん、「スイートコーン+ポップコーン+セサミシード」の例で見られたように、食感や、個人の食経験や文化なども、相性を良いと感じる感覚に影響してくるので、成分だけで全てが語れるわけではありません。しかし、食品の成分を科学的に解明していくことは、未知の食べ合わせを見つける上で欠かせません。食の世界に科学を導入することは、未来の食体験を豊かにすることにつながるのです。BAKEでも、科学を使って、よりおいしくて幸せになれるお菓子を作っていければと思っています。 食べ合わせの相性について科学的にもっと知りたい方は、OPENLAB Reviewの記事をご覧ください! →フードペアリング理論──「科学的に相性の良い食べ合わせ」はどこまで解明されているか
→商品開発の落とし穴?「ペプシパラドックス」を防ぐために、気をつけたいポイント →食品の科学者はどんな研究しているの?最新研究をわかりやすく紹介! →「溶けないアイス」の秘密はイチゴに納豆?世界の溶けないアイスを集めました
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