ところが毎日牛たちに感謝の気持ちを込めて「ありがとう」と声をかける、ちょっと変わった酪農家さんがいます。その名も、「ありがとう牧場」の吉川さん。
お菓子屋さんであるBAKE Inc.の新卒研修のひとつには、そんな「ありがとう牧場」さんでの酪農体験があります。北海道の山の中で、寝食も一緒にしながら、どんな暮らしを共にするのでしょうか?
2017年の新卒研修をアテンドしたのは、人事担当の金子さん。「ありがとう牧場」での生活や研修の様子を書いてもらいました。それでは金子さん、よろしくお願いします!
はじめまして、BAKE人事で採用担当をしている金子です。普段はオフィスで働くメンバーや新卒の採用や、ジョインされた方の研修やフォローを担当しています。その他にも、採用イベントやミートアップイベントの企画運営をしています。
しかし、今回の仕事は新卒研修のアテンド。その中でも、北海道の山の中にある牧場での生活は3人の新卒生にとってもはじめての経験でしたが、オフィス勤務の私にとっても、それは同じ。
ちなみに今回お邪魔した「ありがとう牧場」さんは、BAKEのシュークリームブランドであるクロッカンシューザクザクで使用している牛乳を作ってくださっている牧場でもあります。
さて、わたしが北海道へ行って、見て、感じたことを、書きたいと思うのですが、お食事中の方はややびっくりする内容も含まれていますので、ご了承くださいね!
研修メニューはこちらの3つ。
1.BAKE北海道工場での製造体験 2.「ありがとう牧場」での酪農体験 3.足寄町(あしょろちょう)の酪農家の方々との交流会
この研修の目的は、BAKEの製品ができるまでの生産・製造のこだわりについて学び、自身の業務へ活かしながら、周囲のメンバーへ学んだことを伝えていくこと。
さっそく、実際に牧場で作業を手伝わせてもらった、ありがとう牧場での生活と、酪農家の方々との交流会の様子をお伝えします!
牧場では、朝は3時に起床、夜は21時には就寝。陽が出るまえの暗い時間から作業にかかり、一仕事終えた後に朝ごはんを食べる、という生活が当たり前に営まれていました。
朝ごはんを食べてから電車に揺られて出社する社会人にとってはありえない生活ですよね…。それでも、新卒のみんなは1日目こそ辛そうでしたが、2日目には意外とパチッと目が覚めて、午前4時ごろにはそれぞれの仕事に取りかかっていました。
朝一番の仕事は牛たちを起こして搾乳場へ連れていくことだったのですが、彼らは目覚めたとたんに用を足すんです。
だからそれを必死に避けたり、搾乳時には糞が腕についたり、糞でぬかるんだ道を転びそうになりながら歩いたり…。
「汚くてイヤ」というよりも、「おおぅ、まじか!」と感心してしまうような衝撃でした。
↑搾乳後、次の牧区に移動する牛たち
2017年のBAKE新卒のメンバーは店舗スタッフ1名、北海道工場の製造スタッフ2名。
普段から生乳やチーズなどを扱っている工場スタッフの2人は、チーズ作りや生乳の加工の現場を見て興味深そうにしているのが印象的でした。日ごろの業務とのつながりを意識できる、貴重な体験になったのではないでしょうか。
一方、店舗スタッフの子は、都会育ちの都会勤務。池袋の店舗ではたらいています。コンクリートの地面と牧草地の環境とのギャップに”いい意味”でカルチャーショックを感じたようでした。
私はというと、彼女たちを見守りつつも仕事モードできていたのでメールチェックを、と思ったのですが、電波がどこにも見当たらず…。
かろうじて部屋の隅っこにわずかな電波を発見したものの、メールを開くことはできませんでした。すっかり諦めてしまって、オフィスに残った仲間にすべて託し、牧場での仕事に打ち込みました。
大変なことはもちろんありますが、自然や食の豊かさ、世話をするたびに牛をかわいいと思えること、電波がほとんどない環境でスマホを触らずに生活すること、そして生産者の方が何を考えて生活しているのかなど……普段の生活でできないことを身をもって知り、大きな学びになりました。
「ありがとう牧場」での3日間の酪農体験を終えたあと、足寄町の酪農家の方々との交流会に参加しました。
なんと農林水産省の方も一緒だったのですが、序盤は今後の牧場運営について、酪農家の方々から質問の嵐。酪農家のみなさんの真剣な眼差しと、姿勢に、気圧されてしまいそうなほどでした。さっきまでの張りつめた空気にドキドキしていたのですが
「BAKEがなぜ放牧牛乳を使うのか?」 「なぜありがとう牧場さんと取引をしているのか?」
など、酪農家のみなさんに色々とご質問いただきました。私は創業者である真太郎さんや、BAKEの第一次産業への想いをみなさんにお話させてもらいました。
前半の真面目な雰囲気からだんだんと、みなさんの表情が柔らかくなり、ホッと一安心。すごくいきいきとした表情で聞いてくださったのが印象的でした。
放牧酪農家さんたちのお話によると、牧場の環境やえさにもこだわりを持って牛を育てているにも関わらず、作られた生乳は、他の牧場のものと区別なく販売されている現状があるのだとか。
「自分のつくった生乳がどんな形で製品になり、消費者に届くのかを見たい」、「直接企業と繋がれる酪農家がもっと増えたらいいのに」と、口々におっしゃっていました。
作り手の気持ちはどんな産業でも一緒で、手をかけたものが「どんな環境で、どうやって手に取られて、どう感じ取ってもらえたのか」がなによりも気になるもの。
モチベーションの源ってやっぱり誰しもそこだよなぁと、なんだかグッときてしまいました…!
初めての試みだったので引率も兼ねて、私も体験した酪農体験。
牧場の世界のことは、聞いたり、調べることが簡単にできるから、少しわかったつもりになっていたかもしれません。今回、新卒研修のアテンドを経験して、見学だけでなく、自分の手を動かしてやってみることの大切さを痛いほど感じました。
新卒の3人にとっても、BAKEが大切にしていることを感じてもらえる研修になったのではないでしょうか。
最後になりましたが、「ありがとう牧場」の吉川さん、足寄町の酪農家のみなさん、ほんとうにありがとうございました!
搾乳場であるパーラーを去る牛達へ「ありがとう」と毎回声をかける吉川さんの姿勢を忘れず、BAKEのお菓子をたくさんの人に届けたいと思います。
やわらかい牧草をもぐもぐと食べ、草原を気持ちよさそうに走るありがとう牧場の牛たち。
一方で、牛舎で与えられた穀物などの飼料を食べ、草を踏みしめることなく一生を終える牛のほうがずっと多いのだそう。
牧場をのびのびと駆け回っている、放牧牛から搾れた牛乳は、草の香りがしてとっても美味しい上に、エネルギーとして消化されやすくベータカロテンなどの栄養価も高いので、健康に良いそうです。
BAKEのお菓子にも、そんなありがたい牛乳を使わせてもらっていることに、改めて背筋がしゃんと伸びるような気持ちです。
現在、BAKEでは「牧場」について取り組みを始めています。くわしくは、こちらの記事をご覧ください。最後までお読みいただき、ありがとうございました!
執筆:金子未和、池田彩花 写真・動画:菊池百合子 編集:塩谷舞(@ciotan)、名和実咲(@miiko_nnn)
・美味しいチーズの裏側に、私たちの知らない農家の現実がありました