2025.07.25

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『SWEETS MEETS ART』イベントレポート — お菓子とアートのコラボレーションで生まれる、新しいしあわせのかたち

『SWEETS MEETS ART』イベントレポート — お菓子とアートのコラボレーションで生まれる、新しいしあわせのかたち

2025.07.25

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7月1日に開催された新プロジェクト『SWEETS MEETS ART』の発表会。
このプロジェクトは、私たちBAKE INC.(以下、「BAKE」)が運営する「PRESS BUTTER SAND」のプレミアムシリーズ「PRESS BUTTER SAND GALLERYと、株式会社The Chain Museum (以下、「The Chain Museum」)が運営するアート・コミュニケーションプラットフォーム「ArtSticker」がコラボレーションして生まれた、新しい挑戦です。

 

なぜ今、お菓子ブランドがアートと手を組むのか?
そして、この取り組みが提示する “豊かさ” とは何か?

この日の発表会で語られたのは、単なる新プロジェクトの説明ではなく、これからの時代を生きる私たち一人ひとりの生き方を照らすような、“気付き” のメッセージでした。

コントロールを手放すという挑戦 — PRESS BUTTER SANDがアートと挑む、新たな創造

「お菓子のブランドが、なぜアートとコラボをするのか?」
その問いに答えたのは、PRESS BUTTER SANDのブランドマネージャー・後藤でした。

 

「私たちBAKEは、創業当初から『おいしさの次にデザインが大事』という価値観を大切にしてきました。お菓子は、ただ “おいしい” ということだけでなく、誰かのために選び、贈り、箱を開け、味わう…そういった一連の体験すべてが価値をつくると考えています」

 

お菓子の価値を最大化し、記憶に残る『ブランド体験』を届ける
その思想のもと、BAKEでは社内のデザイナーが、ブランドの哲学を深く理解し、緻密に世界観を設計してきました。これは、目的に沿って機能や美しさを論理的に構築する、まさに “デザイン” によるアプローチ。

しかし、今回のプロジェクトは、あえてその正反対の道を選択したのです。

「デザインが目的を達成するための設計だとしたら、アートはアーティスト自身の内面や感性を自由に表現するもの。今回のプロジェクトでは、私たちブランド側の意図や目的をあえて手放して、アーティストの皆さんの感性に委ねることにしたんです」

PRESS BUTTER SAND ブランドマネージャー 後藤理絵

自分たちで緻密に作り上げてきた世界観。
そのコントロールを手放すことは、BAKEにとって初めてとなる、大きな挑戦です。

「でも、だからこそ、私たちだけでは生み出せない化学反応が起きて、新しいお菓子の「体験」が生まれるのではないかなと期待しています」

 

そして、この挑戦をともにするパートナーとして、BAKE選んだのが「ArtSticker」でした。

「ArtStickerは、アートと出会い、対話を楽しむ “体験” を提供するプラットフォーム。このアート鑑賞を一連の体験としてデザインするという考え方は、私たちのものづくりに対する姿勢とも深く共鳴するものでした

 

また、PRESS BUTTER SANDが、 “定番の手土産” という評価に甘んじず、常にお菓子の新しい可能性を探求してきたように、ArtStickerもまた、アート業界に変革をもたらしてきました。アート鑑賞の体験をデジタル化し、ファンがアーティストを直接支援する新しいビジネスモデルを確立したのです。

「お互いに、挑戦を続け、 “新しいスタンダードをつくる” という志を持っている。そのスピリットにも強く共鳴しました」

こうして、『SWEETS MEETS ART』は生まれました。

味わいを、アートで表現する — 視覚が味覚を増幅させる「クロスモーダル体験」の創出

このプロジェクトの革新的な特徴は、『味わいを、アートで表現する』という制作プロセスそのものにあります。
アーティストたちは、発売前の商品を実際に味わい、バターの香りやクッキーの食感、フレーバーの広がりといった、「かたちのない感覚」をアートで可視化していきます。

後藤はこの取り組みで「人間の感覚に五感が相互に作用し合う “クロスモーダル体験” を創り出したい」と語りました。

「アーティストが生み出す強力な『視覚』の情報によって、私たちが大切にしてきた食感、香り、そして味覚といった感覚をさらに増幅させることができる。お客さまの中に、これまでにない感動体験を生み出せると信じています」

こうした感覚の相互作用により、「食べる」という行為が「記憶に残る物語」へと深化する。
それはまさに、BAKEのミッション『しあわせに、BAKEる。』の、新たな次元での実現です。

「スープは『作品』だった」 — 遠山正道さんの表現の哲学

後藤が語った “挑戦するスピリット” に強く共鳴するかのように、遠山さんは、ご自身の哲学を象徴するエピソードについて語りました。

それは、彼が「Soup Stock Tokyo」を立ち上げたときの話です。

「絵を描くって、発意して、手を動かして、表現する。そういう意味では、起業も一緒だなと思って『Soup Stock Tokyo』を立ち上げたんです。1997年、当時三菱商事から出向していた日本ケンタッキー・フライド・チキンにプレゼンしたときは、キャンバスにロゴを描いて『Soup Stock Tokyoって、作品なんです』と伝えました。だから、外食産業をやっているという感覚は、当時も今もあまりないんですよね」

 

その思想は、ロゴや店舗の素材選びにも色濃く現れています。

「スープに彩りがあるから、余計な、意味のない色を使わないようにしました。ロゴマークはスミ(黒)一色、店内も木やステンレス、モルタルといった素材だけ。その中で、唯一、私の作品『The Color』のようなタイルの作品だけが色を持つんです。創業してからずっと、コンセプチュアルに展開してきました」

遠山さんにとって、食は “ビジネス” である以前に “自己表現” の手段だったのかもしれません。

The Chain Museum 代表  遠山正道さん

「作品を描いて販売するよりも、スープのほうが広く届くことに気づいたんです。誰かが誰かにスープをプレゼントしたり、『おいしかったよ』と言ってもらったり。『ああ、これは絵を描いている場合じゃないな』と思ってね」

そして、​近年再び湧き上がったアートへの想いが、The Chain Museum​の設立へとつながります。

「思い返してみると、私はずっと “食” と “アート” のことばかりをやってきた。だから、今回のプロジェクトには強い親和性を感じてい​るんです」

 

遠山さん流の哲学は、デザインの捉え方にも表れていました。

「Soup Stock Tokyoを立ち上げたときから、デザインというものが当たり前すぎて、すべてがデザインといえばデザインだと考えていました。平面も、空間も、体験も。なので取り立てて “デザイン” という言葉をつかうことはなかったですね」

 

アート鑑賞の「一連の体験をつなぐ」というArtStickerのあり方そのものに、遠山さんのデザインに対する考えの神髄が、垣間見えるようでした。

とろけるバニラと、とぼけた表情。アーティストが紡いだ「おいしい」の物語

今回のプロジェクト『SWEETS MEETS ART』は、1年間にわたり4人の若手アーティストとコラボレーションし、アート作品をパッケージに展開していく取り組みです。

発表会では、その先陣を切る第1弾アーティストのnico itoさんと第2弾アーティストの島田萌さんが登壇。
第1弾商品となる「バターサンド〈バニラココナッツ〉」と、nicoさんが手がけたアートワーク、そして心ときめくアート缶もお披露目されました。さらに、この日限りのサプライズとして、まだパッケージになる前の島田さんの作品も一足先に公開、プロジェクトへの期待が一層高まりました。

 

記念すべきプロジェクト第1弾のパッケージを手がけたnicoさんは、第1弾商品をひとくち食べて得たインスピレーションについて、こう語ります。

特に印象的だったのが、バニラの甘さと口の中でとろける食感。それを表現したいと思って描き始めました」

物語の主人公のココナッツくんが、常夏の空の下、気持ちよくお昼寝をしていたら、いつのまにかバニラアイスの上に乗っていて、気づいたらバニラパフェになっていた。そんな不思議な体験をしたココナッツくんの、お昼寝からハッと目覚めた瞬間の表情が表現されています。

「笑顔より、とぼけた表情が好きなんです。私らしい、とぼけた感じのキャラクターになりました」

第1弾アーティストのnico itoさん

味覚を視覚に落とし込むのは楽しい作業だった」とnicoさんは言います。

「このようなかたちでアートが日常に入り込むのは嬉しいです。パッケージを手に取った瞬間から、非日常が始まるようなわくわくを感じてほしいです」

 

発表会では、遠山さんが登壇アーティストにこんな問いかけをしました。
「紙袋や缶になるってめちゃめちゃ嬉しくないですか?」

すると、nicoさんも島田さんも「嬉しいです!!」と笑顔で答えます。

第1弾アーティストのnico itoさん(右)と第2弾アーティストの島田萌さん(左)

「たとえば島田さんは、普段は静物画を描かれているんです。つまり、彫刻のような立体感のあるモチーフを平面に描くスタイル。でも、今回のプロジェクトでは、作品がまた缶という立体物になる。平面が三次元化する。おもしろい体験ですよね」

島田さんは、こう答えます。

平面の中だけで完結していたものが、実際に立体物になって、誰か知らない人の家庭に入る。そのこと自体がわくわくしますし、街中で紙袋を見かけるのもとても楽しみで嬉しいです」

 

BAKE 取締役の北村は今回のプロジェクトのパッケージについて、こう説明しました。

BAKE 取締役 CBO  北村萌

「普段、PRESS BUTTER SANDは紙のパッケージなんです。でも、今回缶にしたのはこだわったポイントです。たとえば、nicoさんデザインの缶だと、見る角度によって、ココナッツくんの目がキラキラしたりするんです。アーティストさんの表現したい質感をしっかり再現できるように、そして作品として残していただけるように缶にしました」

「しあわせに、BAKEる」ために。アートが導く、これからの豊かさ

「私は、作品もなんですけど、 “アーティスト” という存在が好きなんです。アーティストって最高なんですよ。なにかを感じたとき、それをかたちにできる力がある。これって他人事じゃなくて、これからの時代、我々は誰であっても、表現側にまわるしかやれることがなくなるんです

遠山さんの言葉は、アートの枠を超え、これからの “生き方” そのものへの問いを投げかけます。

「 “与えられる側” でいる人って、多いと思うんです。上司や会社がミッションやルールを決めてくれないと、次に踏み出せない。でも、ビジネスってAIやロボットのほうが、得意な領域が多いと思うんですね。そうなると、私たちには、自分で創造して、表現していく力が必要になっていくと思うんです。自分のしあわせを自立させる、そのためには「自分の理由」をもっていることが、精神的な自立につながると思うんです」

 

そうした気付きのきっかけとなるのが、テーブルの上に置かれたPRESS BUTTER SANDのアート缶であるかもしれない。「なんだろう?」と興味をもって手に取る、その瞬間、新しい創造の扉が開かれるかもしれません。

遠山さんはこれを「気付きのトリガー」と表現します。
The Chain Museumのミッションである「気付きのトリガーを、芸術にも生活にも。」という言葉は、このプロジェクトにも通じているのです。

「気付きのトリガー」について語る遠山さん

続けて、遠山さんは岡本太郎の著書『今日の芸術』に掲載されている野球の例えを引用しながら語りました。

「野球を見にいって、お気に入りの選手のホームランを見る。ファインプレーを見る。そして、胸がスーッとする。それもいい。でも、そのとき、自分はただの見物人で、参加してはいないんですね。楽しみながらも、実は空虚を感じてしまう。草野球でもいいから、バッターボックスに立って、バットを振る。空振りして、尻もちをつく。そのことのほうがよっぽど意味があるんです。アートも同じで、作品を見て、買ったり、飾ったりというのも、もちろんいいんですよ。でも受け身だけじゃなくて、『自分だったらどうするか』を考える。そんな想像が、自分自身を動かし始めるきっかけにもなりうると思うんですね」

 

アートに込められた、作家の思考や生き様。
それに触れたとき、ふと心に浮かぶ「じゃあ自分だったら?」という小さな問い。
遠山さんの言葉は、私たちが、自分自身を「ただの見物人」で終わらせないための、大切なヒントのように感じられました。

 

「これからの時代、週休五日の時代になっていく」

遠山さんは、会社が365日分給料を払ってくれるというのがなくなり、週二日働いたらあとはプロジェクトごとに声がかかる、そんな時代になるのではないかと予測します。

「そうなったとき、自由な五日間を、どう豊かに過ごせるかnicoさんだったら『ココナッツくんが目覚めたときの顔が!』と、想像を膨らませて、しあわせを感じられるわけですよ」

 

誰かに与えられたミッションやビジョンではなく、
人が決めたルールではなく。

自分で創造してみる。表現してみる。自分の「理由」を探してみる。

「アートが、そのきっかけになるといいなと思うわけです」

BAKEのミッションは、「しあわせに、BAKEる。」

私たちは、この『SWEETS MEETS ART』という挑戦を通じて、お菓子がもたらすしあわせを「忘れられない感動体験」へと深化させていきます。

そして、この小さなアート缶が、誰かの心を動かし、日常を豊かに彩る「気付き」や「創造」のきっかけになること、新しいしあわせのかたちに “BAKEる” ことを、心から願っています。

 

PRESS BUTTER SAND GALLERY 『SWEETS MEETS ART』特設ページはこちら
https://buttersand.com/gallery_art_collaboration/

 

Text by 久保田 由美

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アーティスト・nico ito氏とのコラボパッケージによる新商品「バターサンド〈バニラココナッツ〉」が登場! 細切りのココナッツとココナッツペーストを練りこんだサクサクのココナッツクッキーに、濃厚なバターキャラメルとバニラココナッツのバタークリームを挟みました。厳選されたバニラの芳醇な香りとココナッツの風味が絶妙に調和し、余韻深い味わいをお楽しみいただけます。

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