お菓子作りでもよく使われるリンゴやイチゴを生産するときには、みつばちによる受粉が欠かせません。ところが、今、農薬の使用や気候変動の影響で、農園からみつばちがいなくなる問題が起きています。みつばちがいなくなると、世界の作物の1/3が消えてしまうと言われているほど、みつばちは多くの作物の生産を支えています。
農園内のみつばち不足を解決するために、みつばちの貸出や販売を行う専門業者さえ存在します。それだけでなく、近年では、ロボットを使った受粉の自動化の研究も進んでいます。
理科の授業で聞いたことがあるかもしれませんが、作物が実をつけるためには、おしべの花粉がめしべに付着する必要があります。おしべの花粉は、風や虫が運ぶことで、めしべに付着します。みつばちは花粉を運ぶ虫の一種です。
受粉が起きた結果、実がつき、作物の収穫ができるようになります。みつばちは、りんごやいちごなど、多くの作物を作る上で欠かせない仕事をしているのです。
もし、みつばちがいないと、花一つ一つのめしべに花粉をつける作業を人の手で行わなければなりません。が、それはあまりにも途方に暮れる作業…。
そこで、みつばちの仕事をロボットで補おうとする研究が行われています。
アメリカ・ハーバード大学Wyss研究所は、みつばちと同じように花粉を運ぶ小型飛行ロボット「RoboBee」の開発を進めています。
このロボットは1円玉ぐらいの超小型サイズ!センサーや人工筋肉を使って、みつばちと同じように飛び回ります。物の上にとまる、障害物を避けるといった動きもできます。さらに、水中を泳いだり、水中から空中に飛び立ったりするなど、みつばちにできない動きも搭載されています。
こちらのRoboBeeですが、まだ開発途中で、実用化はされていません。RoboBeeがみつばちの役目を果たすためには、自分自身で花をみつけ、花粉を他の花に運ぶという課題が残っています。
現在は、GPSトラッキングや画像解析を使って、みつばちの仕事を代行できるようにさらなる開発が進められています。
一方、みつばちを呼び寄せて分析し、みつばちの生態系を回復させようとする試みも行われています。
オーストラリアのアーティストMichael Candyさんが作った「SYNTHETIC POLLENIZER」は、みつばちを分析して人工的な受粉をサポートする花型ロボットです。
この花形ロボットは、みつばちが本物の花と間違えるように工夫されています。この本物さながらの花びらやおしべは3Dプリンターで作られており、みつばちがとまりやすい色と形にするまで何年もかかったといいます。
この花びらやおしべの表面に、下のタンクから”人工蜜”や花粉が出てきます。人工蜜は砂糖水でできており、花粉は本物の花粉を収集したものです。試作品はナタネの花がモデルとなっています。
みつばちは本物の花と同じように、蜜と花粉に引きつけられ、花形ロボットの表面にとまります。ロボットには、みつばちの観察のためにカメラが搭載されています。花粉と一緒に色素を出せるようにすれば、みつばちの体に印をつけ、みつばちの移動を追跡することもできるといいます。
こうして、実際に活動するみつばちの実体への理解を深め、みつばちの生態系の回復や、人工的な受粉方法の開発につなげようとしています。
私たちの食卓に届けられる食品の多くは、みつばちの力を借りて作られています。いなくなったみつばちの代わりとなる手段を研究することも大切な一方で、みつばちが戻ってきてくれるような環境や農業のあり方についても、これからの私たちは考えていかなければならないでしょう。
文:大嶋絵理奈(Facebook)
編集:名和実咲(@miiko_nnn)