人気店の仕掛け人は、こう考える。ブランドが生まれる店舗づくりとは?

2018.01.17

海外で久しぶりに日本食でも、と入ったお店で「あれ?なにかが違うなぁ」と感じたこと、ありませんか?逆に、日本にある南国風のレストランや、アメリカンなカフェは、その国の人からは違和感があるのかもしれません。

店内全体の雰囲気だったり、照明やテーブルなどちょっとしたインテリアに違和感を持ってしまうような〇〇”風”レストラン。

せっかくなら〇〇”風”じゃなくて、日本でもリアルな本場の空気を楽しみたい…!という方にオススメなのがこちらのお店。



DOMINIQUE ANSEL BAKERY(ドミニクアンセルベーカリー)」は、ハイブリッドスイーツ「クロナッツ®」を開発したNYのペイストリーショップ。2015年、表参道に日本初出店。

台湾の新食感かき氷「ICE MONSTER(アイスモンスター)」は2015年、原宿に日本初出店。かき氷ブームの火付け役になったことは記憶に新しいです。

台湾でも大人気の「マンゴーかき氷」

イスラエルで創業したチョコレートブランド『マックス ブレナー チョコレートバー』。2013年に日本に初上陸。店舗写真は東京ソラマチ店。

「チョコレートチャンクピザ」や「クラシックヨーロピアンフォンデュ」などのチョオレートメニューが楽しめる。



そして実は、これら3つのお店はすべて、TRANSIT GENERAL OFFICE(以下TRANSIT)がプロデュース・運営しているお店なんです。外苑前のカフェからはじまったTRANSITは、アパレルのハイブランドとのコラボカフェや、日本初上陸のお店を数多く手掛けられています。

今回、TRANSITが参加される「店舗イノベーターサミット」に、BAKEも登壇させてもらえることに。これはしっかり学ばせてもらわねば、と思いTHE BAKE MAGAZINE編集部も会場へ駆けつけました。

会場となるNagatacho GRIDには各セッション200名以上の参加者が集まりました。

「店舗イノベーションサミット」とは…
未来に残る店舗づくりとは何か、店舗や設計にについてのトークイベントが開催されました。当日は店舗づくりにおいて第一線で活躍している経営者や、プロフェッショナルを招いて、講演やパネルディスカッションなど5つのセッションが行わました。

TRANSITのエグゼクティブプロデューサーである中村さんと、BAKEのクリエイティブディレクターである貞清の対談テーマは「空間プロデュースとブランディングの手法」。

何度も訪れたいと思う店舗には「食事をする」「物を買う」だけではない、様々な魅力が詰まっています。そういった店舗を生み出す企業に共通するのは、空間設計を「費用」ではなく「投資」と捉えていること。そして「店舗」ではなく「ブランド」をつくりあげていること。人々を惹きつけるブランド化された店舗はどのように生まれるのかを紐解いていきます。

【この記事で紹介するテーマ】

メインテーマ:売上に繋がった店舗事例の紹介
1.ブランドディレクションの手法
2.投資としての店舗デザインとは
3.お店を話題にしてもらうためのPR、コミュケーション戦略

TRANSITのプロデュース事業部 エグゼクティブプロデューサーの中村さんは、創業3年目に参画し、13年間多岐にわたるプロジェクトを手掛けてこられた。(写真中央)BAKEのストアデザイン部部長の貞清は創業1年目のBAKEに参画し、現在は全ブランドのクリエティブを統括する。(写真右)


1.ブランドディレクションの手法

「なるほど!」と納得させられたのは、「店舗のデザイナーさんはどのように決めている?」という問いに対するTRANSIT中村さんの以下の答えです。

TRANSIT)中村:TRANSITだと、海外か国内かという軸と、あとは旬の人かどうかの基準で依頼していますね。THE APOLLOのような海外ライセンス店は海外デザイナーさんを起用します。

銀座の数寄屋橋交差点に面するランドマーク東急プラザ銀座、その最上階にあるモダン ギリシャレストランTHE APOLLOは日本初出店とその立地から話題になった。

TRANSIT)中村:なぜかというと「このブランドを日本に持っていきたい」と思ったときに感じた雰囲気やディテールを再現しないと、「なんとなく海外からきた風」になってしまうんです。

照明の選定ひとつにしても、文化の違いやそもそも持っている素材の違いがあります。細かい素材にディテールの違いが出るんですよね。小さい建材1つであっても、多少費用をかけてでも、極力本国と同じような素材を輸入して取り入れるようにしています。

「MAX BRENNER」や、「DOMINIQUE ANSEL BAKERY」など日本初上陸で話題をさらう人気店には、きちんと背景のある店舗づくりがされていたようです。そして、日本オリジナルのブランドでは……?

TRANSIT)中村:自分たちのオリジナル店や企業のプロデュース店舗では、今注目され始めていて、兆しのある若手デザイナーを起用するようにしています。デザイナー自身にメディアとしての魅力があって、話題にも繋がります。

そして話題性だけではなく、彼らのアイデアやアウトプットに、僕たち自身がすごく刺激を受けています。

司会:BAKEさんも多くのデザイナーさんと一緒に店舗づくりをされていると思いますが、ディレクションで苦労されたことはありますか?

BAKE)貞清:直近もっとも大変だったのが広島にオープンしたBAKE CHEESE TARTの店舗です。ありがたいことにオープンしてからずっと、たくさんのお客さまが来店されているのですが、店舗づくりは施設の制約が大きくデザインに頭を抱えました。

BAKE CHEESE TART ASSE広島店。シーソーのように上下に稼働する陳列台は、思わず店舗に踏み入れたくなる視覚的フックにもなっている。

BAKE CHEESE TARTの広島店は、期間限定で焼きたてレモンチーズタルトを取り扱うなど、かなり力が入ったお店。ただ、店舗設計の面ではなかなか大変だったようで……

BAKE)貞清:特に難易度が高かったポイントが、3面ガラス張りで、壁のない区画です。製造スペースやディスプレイなど見せる部分と、そうでない部分を、作り込める余地が少ないなかどう設計していくか、とても悩みました。

本来ガラス面だった部分を壁にしてデジタルサイネージ(電子看板)を設置し、壁の裏にはバックヤードなどの店舗機能を設けられている。

BAKE)貞清:なんとか勝負したいのですが、デザインできる幅が狭かったんです。それ故にデザインを誰にお願いするか、とても悩んだ店舗です。

それで、多角的な視点と解釈で表現していただけるデザイナーさんを探していて「この人だ」と。それがSIDES COREの荒尾さんでした。


SIDES COREサイトより

司会:外部のデザイナーさんを、どのようにディレクションされているのでしょうか?

BAKE)貞清:全部任せきってしまうのではなくて、デザインの提案をしていただきながら、僕達も一緒に図面を引くようなスピード感と精度でやっています。デイレクター側もしっかりデザインに責任を持ち、売上やブランディングを徹底的に考えながら進めていきます。出店スピードが今年だけで国内16店舗という状況ですが、手を抜けるお店はひとつもありません。

2.投資としての店舗デザインとは

さて、続いては出店戦略について。出店場所のこだわりは、ブランドの要にもなるようです。

TRANSIT)中村:投資としての店舗デザインということで、出店戦略の考え方についてお話したいと思います。TRANSITでは、一番ニュース性の高い場所や、新しい商業施設であれば、飲食区画のなかでとにかくいい場所をもらえるよう、企画段階からコミュケーションをとるようにしています。

TRANSIT)中村:例えば、東急プラザ銀座にあるモダン ギリシャレストランTHE APPOLOだと、最上階で一番広い130坪に出店できることになりました。なぜ出店区画にこだわるかといいますと、一番店と言われる場所には、店舗単独の売上以上の付加価値を持っているからです。

TRANSIT)中村:いい場所にあって、認知があがっていくと、お店の収益以外が大きく伸びます。例えば他店のメニュー監修で、THE APOLLOの名前をつかっていただき、ライセンス収益に繋がることもあります。つまり、店舗単体のポテンシャル以上に、どれくらい伸びしろがあるかを考えて投資回収をしています。

…と、お店単体での枠に囚われず、次に繋がる店舗づくりのための投資を実践されていました。中途半端なお店をつくって、伸びしろが見込めないのであれば手を引く。これはお店つくるだけでなく、運営まで責任を持つTRANSITさんだからこそ、シビアな判断軸があるのかもしれません。一方、BAKEが大切にしていることとは?

BAKE)貞清:BAKEのお店は1ブランドに1商品しかありません。例えばBAKE CHEESE TARTなら焼きたてチーズタルト、クロッカンシュー ザクザクならシュークリームといったように。いわゆる「専門店業態」は、お客様が購入できる商品の選択肢が少ないというリスクを伴います。ただ、一商品に絞ることで運営をシンプルにしたり廃棄率を低くできたりと、利益を保ちやすいビジネスモデルです。ゆえに、デザインへの投資を可能にしています。

photo by Takumi Ota
BAKE CHEESE TART 自由が丘店は、ブランドのフラッグシップショップ。詳しい店舗デザインの詳細はこちら

BAKE)貞清:出店候補地を見るうえで重要視しているのは人通りが多いか、ですね。そもそもお菓子を買うんだ!という目的で来る人よりも、「なんだろうこのお店」と、立ち止まってもらう人のほうが多かったりします。だから、そのためのフックがつくれるか。

投資回収という点では1〜2年を基準においていますが、そこに縛られず、デザインを通していかにブランドを表現するかを大切にしています。

4月にローンチした「PRESS BUTTER SAND」はBAKE初の土産菓子業態。

ルミネエスト新宿店にオープンした生どら焼き専門店「DOU」は2号店となる。


3.お店を話題化させるためのPR、コミュケーション戦略

TRANSIT)中村:企画段階からPR、コミュニケーション戦略でしっかり正しいメッセージを伝えられるかは、新業態で重要なポイントです。東急プラザ銀座の開業販促も含めて、話題になる日本初出店を提案をしました。

ただ、日本初出店の話題性だけでなく、私たちが伝えたいのは、インターナショナルフードの文化をつくっていきたいということです。これは、TRANSITの日本初進出のお店に共通する思いです。今後オリンピックを見越しても、日本はグローバルな都市の中でロンドンやNYに比べると食のジャンルの幅がすごく狭いんです。

司会:話題化という一部を切り出すのではなく、もっと長い視点で展開されているということですか?

TRANSIT)中村:その通りです。もちろん話題化も大切ですし、ブームの兆しや話題化させる土台をリサーチしています。ただのブームではなくスタイルとして定着するように、戦略をタテています。

BAKE)貞清:10年以上前から食領域でファッション感のあるスタイリッシュなPRをされていたTRANSITには、本当に衝撃をうけましたね。

TRANSIT)中村:ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいですね。

司会:BAKEさんだと、クロッカンシュー ザクザク原宿店なんかはカオスな原宿の街にありながら、独特の存在感がありますが、いかがでしょうか?

BAKE)貞清:BAKEでファッション的なアプローチをしたのが、まさにそのお店です。BAKEが創業してやっと4店舗目だったので、とにかく負けられない、という気持ちが強かったですね。

2015年5月にオープンしたクロッカンシュー ザクザク原宿店。工房一体型で、力強さを押し出した空間。

BAKE)貞清:クロッカンシューザクザク原宿店に関しては、2年半以上経ちますが安定した売上を維持しています。竹下通りの圧倒的な人の多さと色群に埋もれないお店づくりを掲げて、「ファッション感のある黒」を打ち出しました。その効果が出ているのかもしれません。

「あえて明るく賑やかな竹下通りに、黒を打ち出して異質感を」という詳しいお話は、こちらの記事でお伝えしています。

司会:TRANSITさんだと、メーカーをクライアントに、飲食店を展開されている企画も多いですね。

TRANSIT)中村:そうですね。たとえば、東京・六本木にある、メルセデス・ベンツのショールーム「メルセデス ミー」の企画があります。コミュニケーション戦略としてご紹介させてください。

そこでクライアントの要望は、ショールームのイメージをもっと若者にも身近なイメージに変えたい、そしてブランドを新しい手段で伝えたい、ということ。新しいショールームの形として1階にコーヒースタンド、2階にレストランという構成になっています。

東京の「DOWNSTAIRS COFFEE」では待ち合わせやノマドワーカーの利用も多く、ショールームへの来店のハードルを下げる事例となった。

TRANSIT)中村:この写真を見ていただくと、カフェが前面にあって奥に車があります。気軽に入れるカフェがあって、奥に車を展示することで、メルセデスのハードルを下げつつ、入りやすい空間に設計しています。

確かにある時期から、カフェを併設したショールームや、食品以外のメーカーのコンセプトカフェをよく見かけるようになりました。

TRANSIT)中村:今でこそ、ショールームにカフェを併設することは一般的になってきましたが、8年前にできた「メルセデス ミー」はそうした新しいスタイルの先駆け的な企画になったのではないかと思います。

司会:国内だけでなく、新しいショールームのかたちを海外でも展開されていて、グローバルでの大きなトレンドつくった事例ですね。おふたりとも、本日はありがとうございました。



TRANSITは国内外の幅広い食領域で、様々な関係者を巻き込みながら、上質な店舗づくりやコミュニケーションで新たな流行とスタイルを創り出されています。

一方、BAKEは1ブランド1商品というシンプルなビジネスモデルで、デザインへの投資や、スピーディーな店舗展開を推進しています。

“食”という共通領域でも、異なる店舗づくりを行う両社ですが、パネラー同士が質問し合う場面も見られたトークセッション。どのセッションも、参加者が食い入るように傾聴する姿や、終了時間を惜しむように繰り広げられる熱量の高いトークが印象的でした。

文・会場写真:名和実咲(@miiko_nnn
編集:塩谷舞(@ciotan

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