こんにちは! THE BAKE MAGAZINE編集長の塩谷(@ciotan)です。
あなたの会社に「MVP」の表彰制度はありますか?
もちろん、人目につかないところで頑張っている人がいたり、意外なところでバリューを発揮している人がいたりと、なかなか「この人が一番!」と決めにくいことも多いかもしれません。
でも「彼女なら納得!」とBAKE社員みんなから拍手喝采で祝福された、BAKE Inc.2016年のMVPが、この人です。
みんなから「ケリー!」と呼ばれている彼女は、マレーシア出身。なんとマレー語、中国語、英語、日本語、それに広東語と北京語が話せます。
そう、2015年8月の香港店を皮切りに、シンガポール、韓国、台湾、中国……と現在20店舗以上をアジア圏にオープンさせているBAKE Inc.なのですが、ケリーさんの活躍(と語学力)なくしては、その成長は語れません。
18歳で「パティシエになりたい!」という夢を抱いて、母国のマレーシアを離れ日本にやって来た彼女。BAKEには、2015年の11月、ちょうど海外出店が加速する頃にジョインしました。
ほとんど海外出張で飛び回っているために、あまり東京オフィスにはいないのですが、見かけるときにはいつも本当に楽しそうに働いているケリーさん。
「そのエネルギーは、一体どこから?!」と気になって、お話を伺ってみたところ……
塩谷:ケリーさんは、高校を卒業してすぐ、パティシエを目指して日本に来たんですよね。当時は、調理師の専門学校に行かれてたんですか?
ケリー:いや、普通の大学で法律の勉強をしてました。
塩谷:あれ、どうしてまた?!
ケリー:マレーシアの物価って、日本と全然違って、すごく低いんですよね。だから、私にとってはパティシエの専門学校の学費があまりにも高くて。まずは普通の大学に行って、就職して、貯金してからもう一回専門学校に行こう、という計画だったんです。
塩谷:ええっ、すごい長期計画……。そもそも、18歳でマレーシアから日本に留学するのにも、相当お金がかかりますよね?
ケリー:そうなんです。だから、大学生活もとりあえず授業が終わったらアルバイト。必死でバイトしましたね〜。
塩谷:すごい…。そして、最初の就職はどこに?
ケリー:翻訳・通訳の仕事をやっていました。というのも、翻訳の仕事じゃないとビザがおりないんです。だから3年くらい翻訳と通訳をやって、そこからやっと、パティシエになるための専門学校に行くことができました。
塩谷:日本人だと、高卒ですぐに専門に入れるところを、大学に行きながらアルバイトして、翻訳の仕事をしてから……ものすごく長い道のりですね。でも、それだけパティシエになりたかったんですね。 ケリー:はい、どうしても日本でパティシエになりたかった!そして念願叶って、新宿のとあるお店で6年間パティシエをやってました。焼き菓子をつくったり、特注のケーキを作ったり。
塩谷:そこからどうして、BAKEに?
ケリー:私、その頃は大宮に住んでいたんです。大宮にBAKE CHEESE TARTのお店があるから、友達が来た時に一緒に食べたんですよ。
ケリー:そしたら、その味に感動して……速攻で会社のことを全部調べて。「よし、この会社に入るぞ!」と思い切って応募したんです。
塩谷:美味しいって感動してからの行動が速い…!でも、当時のBAKEはパティシエの募集をしていなかったですよね?
ケリー:はい。でも、海外本部のスタッフを募集していたので、それに応募しました。
塩谷:えっ、でもせっかくずっとパティシエを目指して、その夢が叶っていたところだったのに。
ケリー:パティシエになって6年目に突入して、何か新しいチャレンジをしたいと思っていたんですよ。そのタイミングで、BAKE CHEESE TARTを食べたら最高に美味しかったから!
今後は現場のパティシエじゃなくて、もっと広い行動範囲で……海外のマーケットでお菓子の仕事ができるんだったら、すごく良い! と思って。
塩谷:でも実際のところ、BAKEの海外事業部って現地の物件を探したり、交渉したり、契約したり、現地スタッフの採用をしたり、海外の支社ごと立ち上げたり……ケリーさんがそれまでにされていた翻訳やパティシエのお仕事とは、全然仕事内容が違いますよね。不安はなかったんですか?
ケリー:私はもう、とりあえず思い切って「やる!」と決めました。ただ、入社してすぐはBAKE CHEESE TARTの大宮店に勤務していたのですが。それがすっごく楽しくて、もう「ずっとここで働きたい!」ってくらい、ハッピーだったんですよ。なのに……
塩谷:なのに?
ケリー:入社2ヶ月後には「ケリー、一人でシンガポール支社の立ち上げに行って来てくれないか?」と言われて。
塩谷:なんというスピード人事だ!!!
ケリー:ビジネス経験がほぼなかったので「本当に私で大丈夫か?!」と思ったのですが、当時の海外事業部は3人しかいなくて、確かに私しかいなかったんですよ。
そこでシンガポールに駐在して、店舗の立ち上げから、スタッフ採用面接から、何から何まで。もちろん本社からもヘルプが来てくれたり、海外事業部長の印牧さんとは日々電話で相談しながらですがね。
そうしてなんとか、2016年の4月にBAKE CHEESE TARTのシンガポール1号店を、2016年の10月には2号店をオープンしました。そのあたりでやっと落ち着いてきたので、現地法人のCEOを採用して。ジェイソンという人なのですが、彼がシンガポール側のCEOになって私のミッションはひとまず一段落したので、去年の11月にシンガポールのみんなとお別れして、日本に帰ってきました!
塩谷:よくやり遂げられましたね…!?
ケリー:実はみんなも、最初は「ケリーを一人で行かせて、大丈夫か?辞めちゃわないか?」って不安だったらしいですよ。後から言われましたけど(笑)。
でも、結果としてシンガポール店は世界中のBAKE CHEESE TARTの中で売り上げ上位に入る勢いで、店舗の接客や衛生水準もアジア圏の他の店舗のお手本になっているので、本当に良かった!
マレーシアに住む姉たちが、シンガポールで働く様子を見に来てくれた
塩谷:マレーシア出身のケリーさんにとっては、シンガポールはかなり母国に近い環境ですよね。
ケリー:そうですね。シンガポールとマレーシアは文化も民族もすごく似ています。18歳にマレーシアを離れてからすっっ…ごく久しぶりに戻ったことになるので、料理も懐かしいし、言葉も。「あっ、日本語じゃなくていいんだ!」って、変な違和感がありましたね(笑)。
塩谷:高校を卒業して母国を出てから、1度も帰ってなかったんですか?
ケリー:1度だけ帰国したんですけど、当時はLCC(格安航空券)もなかったですからね。飛行機代が高くて高くて、全然帰れていなかったんです。今はLCCがあるから幸せですね〜!
塩谷:シンガポールで働いていると、地元の友達や家族にも会えたりしましたか?
ケリー:そう!私、歳の離れたお姉ちゃんが4人いて、末っ子なんですよ。それで「今、シンガポールで働いてるよ〜」って家族に言ったら、お姉ちゃんたちが揃って会いに来たんです。
彼女たちからすれば、私はずっと子ども。だから「大人になったね〜!」「頑張ってるね〜!」って言われましたね(笑)。
塩谷:全然子どもじゃないのに…(笑)。
塩谷:ところで、ケリーさんは5ヶ国語?6ヶ国語?くらい喋れるんですよね。それって何リンガルになるんですかね。フィフリンガル…?
ケリー:6ヶ国語いけるのですが、マレーシアはテレビでいろんな言葉の番組や映画を放送しているので、その環境さえあったら誰でも3ヶ国語くらいは喋れますよ! もちろん勉強は必要ですが(笑)。あと私は祖先が北京語の人なので、北京語と広東語も話せますね。
塩谷:アジアで困ることはほとんどなさそうですね…。
ケリー:そうですね、たとえばみんなで香港出張に行ったりしても、みんなの代わりに料理の注文やタクシーの指示が出来るので、便利ですよ〜。
やっぱりその国の言語を喋れないと、新規店舗の立ち上げに行っても仕事が進まないので、喋れて良かったですね。シンガポールに駐在している間にも上海でBAKE CHEESE TARTの立ち上げもあったし、台湾でも2店舗の立ち上げを担当しました。
塩谷:いろんな国で仕事をしてると「こんな文化があるんだ」とか「常識が違うな」ってびっくりすることも、多いのでは?
ケリー:う〜ん。衛生に関する意識が国ごとにかなり違って、特にタイの飲食店は衛生に対する意識が低かったりします。だからタイのみんなを連れて、シンガポール店で研修をしました。 シンガポールは日本と同じくらいに綺麗なので、それを見て欲しかったんです。実際に目にすると、それまでなかなかイメージしてもらえなかったBAKEが求める衛生水準も、ちゃんと理解してもらえたみたいなんです。シンガポール店に影響を受けたようで、改善しようって意見を出してくれるようになりました。
塩谷:しっかり意識から変えていくって、すごいことですね。
ケリー:あと、日本の接客業は厳しく教育する文化がありますが、海外では怒るとすぐ辞めてしまう人も多いんです。
だから、盛り上げながら褒めて育てていくことが大切。たとえばシンガポールのBAKE CHEESE TARTでは「卵を塗る作業を8分以内」と目標にしてるのですが、特に男の子には「7分を切るとかっこいい!モテるよ!」と伝えると、すごいやる気を出してくれます! そうやって楽しく工夫しながらも、時には厳しく教育して、海外の店舗を作っていってます。
塩谷:日本男子とは違う文化ですね(笑)。しかし、BAKEに入社されてからの1年半は、本当に怒涛ですね……!
ケリー:すごい経験ですよね!あと、結婚もしたんですけど、まだまだ仕事は頑張りたいので、仕事はセーブせずにやりたいことは全部やろうと思っていて。もし妊娠で産休に入ったら、今みたいに世界中で働けないですしね。
塩谷:ケリーさんじゃないと出来ない仕事が多いから、産休に入るのも大変なのでは?
ケリー:心配ではありますが、最近海外事業部に新しく入って来た人たちみんな、英語と中国語が喋れますしね。それに、これまでの経験をまとめていて、共有できる知識も増えていますし。より働きやすくしようとしてます!
塩谷:…ケリーさん、すごくアグレッシブに働かれていて。「疲れた〜!」って気が抜けてしまうときとか、ないんですか?
ケリー:うーん……あ、1回ありました。シンガポールと日本を行き来してると、気温差が激しすぎて風邪ひいちゃって。店長に「ごめん、今日行けないから、頑張って〜〜」って電話してね。自分で立ち上げたお店だから、すごーく心配になっちゃって。でも、任せなきゃいけない時だな、とも思いましたね。
まぁでも…あんまり落ち込まない性格かも。
塩谷:リフレッシュ方法って、なにかありますか?
ケリー:シンガポールの社宅の下に、ジムが入ってるんです。そこが私のリフレッシュ場所! 疲れたと思ったらジムに行って、プールで泳いで、美味しいもの食べて、元気になる。簡単! 海外出張でトラブルが多くて他のスタッフが疲れていたりしても「美味しいご飯食べにいこ!」って誘ってね。
塩谷:ポジティブ!
ケリー:あ、でも悩みもありますよ!いろんな国のお金がごっちゃになっちゃって。日本で「円がない!」って焦ったりもするし(笑)。 あと、シンガポールでも日本でも行きつけのマッサージ屋さんがあるんだけど、いつも爆睡しちゃうから、目がさめると「…あれ?今どこの国?」って。たまにあります。
塩谷:脳みそが混乱しますよね(笑)。ところで、昨年開催された全社会議(BAKE Fes.)ではBAKE社員の中で、MVPを受賞されてましたよね!いかがでしたか?
ケリー:びっくりしましたよ! でも私、いつも日本にいないから、東京本社のみんなからは「ケリーって一体、何やっているの?」って聞かれることも多いんですけどね。だから余計に、受賞してびっくりしましたよ〜。
塩谷:いやはや、私もケリーさんのお仕事ほとんど知らなかったのですが……お話聞いて、こんな攻めたことをされてるのか、とビックリしました。MVPも納得の人選です!それにしても、いつも本当に楽しそうに働かれてる。
ケリー:だって、楽しいのが一番ですからね。今、新しいブランドも次々と発表してるし、海外事業部ではアジア以外にも出店準備をどんどん進めているので、それも楽しい!
塩谷:本当に開拓されてる!遠い国にBAKEのお店が出来るのが楽しみです。これからも頑張ってください!
ケリー:は〜い!
超ポジティブで、どんどん広い世界を開拓していくケリーさんのお話。いかがでしたか?
ケリーさんも所属しているBAKE Inc.の海外事業部では現在、海外店舗スーパーバイザーと、海外フランチャイズ管理部部長を募集しています!
海外出張で飛び回るポジションになりますが「こんな人を待っている!」とのことです。
○美味しいお菓子に目がない ○自ら手を動かし汗をかき、目の前の事を一生懸命頑張れる ○自ら考えベターなアクションを決断できる ○スピード感のある環境でフレキシブルに働ける ○チームワークを大切にできる
・「日本を代表する製菓企業へ」BAKE海外FC管理部長候補 ・「日本を代表する製菓企業へ」BAKE海外店舗SV
海外事業部長・印牧さんのインタビューはこちらです。ぜひ、あわせてどうぞ!
執筆:塩谷舞 編集協力・撮影:池田彩花