2015.06.12

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「紀元前から続くビジネス」に一生をかけて挑み続ける、農家のイノベーターとは?

「紀元前から続くビジネス」に一生をかけて挑み続ける、農家のイノベーターとは?

2015.06.12

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人生観を変えるような取材って、記者冥利に尽きると思います。そんな好機に巡り会えたので、これはもう、ぜひ多くの方にお伝えしたいです。 北海道の広い広い牧場で知った、びっくりするくらい美味しい牛乳と、それを作る人と、牛と、土と、すべてが循環する世界のこと。北海道の空気を感じていただければ、嬉しいです。

入社当日に課せられたミッションは、北海道でBAKEのルーツを探ること!

5月某日。私しおたには、このTHE BAKE MAGAZINEで記事を書くために株式会社BAKEにジョインしました。まだ先輩社員の名前すらあやふやなその日に長沼社長から…

長沼真太郎

「塩谷さん、ちょっと来週あたり、北海道行ってきてもらえる? 現地では田村を同行させるから。」 突然の社長命令。いきなりの北海道出張。というか、田村って誰だ……。 「お菓子のスタートアップ」であるBAKEは、本当にものごとの進むスピードが速いのです。さっき決定したことを、今実行する。でも誰もがとても前向きなので、その空気に私は漠然とウキウキして

塩谷舞

「…行きます!楽しみです!頑張ります!(田村って誰だろう…) と、爆速で北海道出張に出発することになりました。 この出張のミッションは、北海道でBAKEのルーツをしっかり取材してくること。親会社である「きのとや」のこと、そして人気商品「クロッカンシュー ザクザク」の原材料のひとつである牛乳を生み出している、契約農家さんのこと。 エアドゥ北海道と東京を結ぶかわいい飛行機「エア・ドゥ」に乗って、出発です! ろくに知らないままに羽田空港で待ち合わせた「田村」さんは、BAKEの2人目の社員でした。いろいろあって北海道大学に7年間も在学していたらしく、北海道の山々のことにはとても詳しいです。

田村涼

登場人物:田村さん(28)。北海道の山々にすごく詳しい。現在はBAKEのマネージャーになり、常に電話が鳴り止まない。 レンタカーを借りて、帯広空港から車で1時間ほどの距離にある「十勝しんむら牧場」にやって来ました! この牛はニセモノ 東京慣れした私にとってはお金を払いたいくらい、美味しい空気を吸うことができる場所です。 案内してくださったのがこの方。 新村浩隆さんです 牧場主である、新村浩隆(しんむらひろたか)さんです。 どうですか? 強そうでしょう。 「100年後にもこの人は、笑いながら大自然の中で仕事をしてるのではないか?」と思わせられるほどの、エネルギーを放つ方でした。東京では触れたことのない種類の、大きな大きなエネルギーでした。 まずご案内いただいたのは、「クリームテラス」というカフェ。ぶっちゃけ「牧場取材に行くぞー!」しか情報がなかったので、カフェが存在することに驚いてしまいましたが…

( http://www.n-slow.com/ より)
( http://www.n-slow.com/ より)

とっても感じの良い、おしゃれなカフェです。正直全然アクセスは良くない…と思える立地ながらも、この日は何組ものお客様で賑わっていました。 お水の代わりに出てきたのが、この牛乳です。 牛乳だ (正直、私は、牛乳がそこまで好きではありません。) 牛乳だ (ですが、取材ですので、飲まざるを得ない状況です。) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ うまい ヤバい顔してますが、演技でもステマでもネイティブアドでもなく、本当に、純粋に美味しかったんです。本当です。今までの牛乳って何だったんだろう? そう思わされる、超すっきりとしていて、ごくごく飲みたくなるような、こんな美味しい美味しいものが、牛乳だなんて信じられない。 「どうしてこんなに美味い牛乳が存在するのですか?」 その答えには、新村さんの大きな大きな挑戦がありました。

「一生必要とされる仕事」を手にいれるための、4代目の大きな挑戦

十勝しんむら牧場が誕生したのは、今から82年前、昭和3年のこと。新村浩隆さんのひいお爺さまである新村吉春さんは、富山県から開拓民として十勝の地に入植し、大木を切り倒して、畑を開いていきました。 つまり、新村浩隆さんは4代目。「代々受け継いだ牧場で…」と思いがちですが、そこには想像以上の葛藤があったそうです。幼いころは、家業を継ぐことへの抵抗があり、世の中の様々な仕事に興味がありました。でも、バブルが崩壊して、生まれては消えゆくビジネスを目の当たりにし、新村さんの中で「一生必要とされる仕事をしたい」という強い意志が生まれます。 どんなに仕事の形態が変わっても、農業だけはなくならない。だって農業は、紀元前からあるビジネスですから。 ただ、新村さんは単純に「家業」を受け継ぎたいのではない。代々受け継いだ牧場ですが、それまで牛舎にいた牛を外に出してしまいました。 これが放牧なんとものどかな風景です。 畜産業に馴染みがない私にとっては「放牧」するということの大変さがすぐには理解できなかったのですが… 放牧をするには、美味しい牧草が必要です。それまで手入れをしていなかった牧場では、牛が食べてくれるような草は生えていないそうです。 では、栄養価が高く美味しい牧草はどうすると生えるのか? そのためには、土壌の開発が必要です。それは1年や2年では到底終わらないプロジェクト。理想の土を育てるまで、何年も苦労され、ニュージーランドから専門のコンサルタントを呼んで、共に研究・改善していたほど。 しかも、その広さたるや…。人の手に負える範囲ではないように見えました。 広すぎる見渡す限り、しんむら牧場さんの敷地です(実際はもっともっとあります)。

田村涼

「さすがに広すぎませんか? こんなにいらないでしょう」

新村浩隆

「いえ、150頭の牛を放牧するには、狭いくらいです。すぐに食べ尽くされてしまいます」

田村涼

「オゥ…」 この広さの土を育てていくには、一体全体どれくらいの努力が必要なのでしょう。ITビジネスばかりに注目していた私には、もう想像することすら追いつきません。

「親でさえ説得できなければ、お客様には到底伝わらない」放牧への決意と、母との衝突

さらには、放牧をするにあたって、3代目の牧場主であったお母さまとの衝突も、半端ではなかったようです。牛を放してしまうことで、それまで確実に得られていた牛乳は? 利益は? もちろん、減ってしまいます。 「母とは、意見がぶつかりました。でも、親より自分の方が長くこの牧場を育てていくんです。次世代としてどうしていきたいのか、ビジョンを持って開拓していく。親でさえ説得できなければ、お客様には到底伝わりません。」 そのように、あらゆる難題を直視しながらも1994年にスタートした放牧でしたが、4年後の1998年には様々な牧場が参加する「草づくりコンクール」にて、北海道知事賞を受賞されるまでに。そして、現在は100%放牧に成功しています。その道程に、どれほどの苦労があったのか。 東京と全然ちがう なんだかもう、世界が違いすぎて 塩谷舞_牧場 「今まで大変ぬるい世界で生きてまいりました……」 恥ずかしくなって、反省したくなりました。だって、どの言葉も、景色も、味も、人生感を変えるような衝撃の連続だったのです。書きながら思い出しただけでも、事務所で涙が出そうです。 そんな新村さんが愛おしそうに見つめるその先にあるのは…  ・  ・  ・ (お食事中の方はここでストップしてくださいね)  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・ かわいてないフンうまれたての牛のうんちと、群がるハエの皆さんです。 この「ヒメフンバエ」こそ重要だと、新村さんは語ります。放牧をスタートした1994年当時は、ハエ等の昆虫、ミミズ、バクテリア、微生物などがいなくて、牛が糞をしてもその栄養素が分解されないままでした。そうすると、牧草は過剰な養分を得てしまい、そんな草は「牧草」としては食べられないそうなのです。 ちなみにこのヒメフンハエは、牛の糞にしか興味のないハエだそうで、土の改良と放牧を続ける中で、どこからともなく辿り着いてきてくれたんだそう。ハエなしには、放牧は成立しないんですって。 かわいたフン おもむろに持ち上げる田村さん。

田村涼

「軽いですね、この土。」 塩谷舞_牧場 「田村さん、それうんちですよ。」 そうです。これは、ハエたちによって分解された糞、とのこと。無臭だし、まるで乾いた土のようです。ここから美味しい牧草が育つのだそう。 そんなお話を聞いているのうちも、周りを取り囲むのは100頭を越す牛、牛、牛…… うしだらけ 目が合いましたね どうやら興味を持たれたようで ちょっといいですか びびりながら触ってみたところ、 おうおう 非常に喜んでスリスリしてくれました。か、可愛い………!たまらぬ!
まるで飼い犬のようになつっこくて、なでなでし放題なんですよ。「ねこあつめ」などで癒されている場合ではない。 きたない (触ったのは左手です。臭くはなかった。) 取材中ずっと良い天気だったし、牛たちもとっても幸せそうでした。でも雨の日も雪の日も、牛たちはいつもこの広い牧場で、放牧されています。牛のあるべき姿で、暮らしてもらうのが新村さんのポリシーだそう。 だから、しんむら牧場では搾乳体験などはしていません。お客さんが牛の乳しぼりをすることで、余計なストレスを与えてしまうことを懸念しているのです。人の都合に合わせるのではなく、ビジネスパートナーである牛たちの都合に合わせているんです。 そうしてストレスなく育った牛たちは、牛本来の健康的なパワーを発揮できるので、美味しいおいしい牛乳をもたらしてくれるんだそうです。 驚くべき動画もあります。しんむら牧場の牛は、人に指示されて動くのではありません。搾乳の時間になれば、群れのリーダーが先導して、列をなして牛舎にやってきてくれます。1日2回、牛の行進。なんとも美しい光景です。 「どうしてこんなに美味い牛乳が存在するのですか?」 その答えは、とても一言では説明できない。長年の真摯な努力と、牛への最上のリスペクトがつまった「しんむら牧場の本気の挑戦」が反映された味だったのです。 しんむら牧場さんの挑戦は、放牧だけに留まりません。「牛乳の美味しさは、Webやパンフレットだけでは伝えられないから」と、取れたての美味しさを味わってもらえるためのショールームとして先ほどのカフェ「クリームテラス」もオープン。牧場の前と、街中の「エスタ帯広駅店」2店舗を構えつつ、そこで販売している「ミルクジャム」は、都内でもDEAN &DELUCAなどを中心に取り扱い、ネット販売も行っています。 こちらのミルクジャムですが…… ミルクジャム めちゃくちゃ美味しいので是非ともご購入をオススメします! http://www.milkjam.com/shop/ ※ステマじゃないよ。 そんなこんなで、美味しい牛乳やアイスクリームやミルクジャムまでご馳走になり、自分のぬるい人生を懺悔したくなる気持ちと、それ以上に大きな感動をもらって、十勝しんむら牧場さんを後にしました。 私たちの車が見えなくなるまで、ずっとずっと手を降って見送ってくださる、新村さんたちの姿がありました。 そんな彼らが命をかけてつくった牛乳が、BAKEの「クロッカンシュー ザクザク」原宿店のカスタードクリームになっています。 クロッカンシューザクザク これまで気持ち的にも、距離的にも、そしてビジネスとしても遠くにあった、牛乳の生産現場。でもこうして、直接お知り合いになることで、もっとフレッシュで、もっと美味しいスイーツを作ることができるようになりました。これは、とってもハッピーなご縁です。 そしてこの取り組みは、他の農家さんとも進んでおりまして……実は北海道には、衝撃な経営方針をもった牧場が、他にもありました。その真相は、これからのTHE BAKE MAGAZINEでお伝えします。更新をご期待ください! 最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。少しでも北海道の空気をお伝えできていれば、嬉しいです。 十勝しんむら牧場さんの情報はこちらから ・Facebook ・オフィシャルサイト ・ミルクジャム オンラインショップ

– – Text by 塩谷 舞( @ciotan )編集協力 樽見祐佳

こちらも併せてどうぞ!

・「お菓子のスタートアップ」を立ち上げて丸2年。1人から120人に増えたBAKEのこれまでと、今後のミッション(長沼真太郎) ・株式会社BAKE 採用情報 ・株式会社BAKE Facebook

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