こんにちは! THE BAKE MAGAZINE編集長の塩谷です。 突然ですが「カカオベルト」って言葉、覚えてますか? かつて地理の授業で習ったかもしれない……。 赤道を中心にした、南北緯20度以内が、カカオが育つ地帯、別名「カカオベルト」。中でも、アリカや中南米に多いのがカカオの生産地……ということでした。 つまり、それより北や南では、カカオの栽培は難しいよということです。 ですが今回「初となる東京産のカカオでチョコレートが出来たので、記者会見を行います!」というお知らせが……。 東京は北緯35度41分、東経139度46分です。 え、不可能を可能にしたの???カカオの限界越えに成功???? という疑問をもって記者会見に参加してまいりました。
記者会見を開いたのは、埼玉県草加市にある、平塚製菓さん。和菓子屋さんとして明治34年に創業(!)し、現在では様々な洋菓子を手がける老舗お菓子メーカーです。 平成24年創業の私たちBAKEにとっては大大大大先輩です…!! どうやって東京産のカカオを成功させたのでしょうか?? 平塚製菓の平塚社長が、たくさんのメディア陣を前にそのヒストリーをお話ししてくださいました。
平塚製菓とカカオの闘いはなんと、2003年にその幕が開けたそうです。こちら、ガーナのカカオ農園を視察に行かれた様子。 調べてみたところ、ガーナ行きの飛行機は、乗り継ぎがスムーズなもので東京から29時間ほどかかるようです。めちゃ遠い。 現地で見たカカオの木に魅了されたという平塚社長。「日本にもカカオを根付かせたい!」と、カカオの栽培計画を策定されます。 ちなみに当時、日本でのカカオといえば、植物園に数本生えている程度。亜熱帯でない国では、難易度の高すぎる植物です。 その後も海外カカオ農園の視察を続けたのち、日本での栽培地を決めることに。「東京カカオ」の栽培地となったのは…… ・ ・ ・ ・ ・ ・ ここ。 …東京カカオ……? 東京…… 間違いではありません。
「小笠原諸島に行くと、品川ナンバーの車が走っていました!」 そう、小笠原諸島は東京都品川区。 しかし、カカオの栽培地に選んだ「母島」までの道のりは…… 船で26時間で父島に到着。そこからさらに「小笠原丸」に乗って2時間。合計28時間かかります。 ぶっちゃけガーナへの所要時間とほとんど変わらないですが、母島の農家さんと共に、東京産の東京カカオ栽培をスタートされたのです。それが2010年のことでした。
初年度は1000粒の種を植えて、そのうち167つだけが発芽。でもそれも、2、3ヶ月で全てダメになってしまったそうで……。 そんな初年度の失敗を聞きつけたのが、母島で折田農園を営む折田さんでした。 平塚製菓さんのところに、「カカオ、ウチなら出来るんじゃないかな…」という電話がかかってきたそうです。実は折田さん、母島で唯一無農薬のマンゴー農園を成功させたという研究熱心な農家さん。 そこで平塚社長が口にした、折田さんの畑で育ったマンゴー。 「こんな美味しいマンゴー、食べたことなかった!」と、その技術力に感動。 「この農家さんなら、出来るかもしれない」そんな思いで平塚製菓と折田農園は契約を結び、共に「東京カカオ」の挑戦が始まったのでした。 それからハウスを建てたり…… 母島までカカオ栽培のための社員を派遣したり…… カカオの木は年間5,000個もの花を咲かせるのですが、そのうち実になるのはたった50〜70個。ラグビーボールのようなカカオの実「カカオポッド」が出来るまでには、様々な試行錯誤があったそうで…… 土の中に空気を入れたり、日陰をコントロール出来るように工夫したり。 様々な努力の成果、2013年にはじめてカカオの実が出来たそうです!! 記者会見にて、笑顔で振り返るお二人。
「織田さんのカカオに対する情熱と探究心がなければ、実は結びませんでした」
「まさか本当に出来るとは。母島といっても冬場は寒い。そこで木が枯れないで、花が咲いて、実が出来たんですよ」 そこからは、平塚製菓さんの力の見せ所です。 カカオポッドを加工してチョコレートにしていきます。なのですが、これがまためっちゃ大変。 クリーニング、ウィノーイング、ロースティング、グライディング、ミキシング、リファイニング、コンチング、テンパリング、モールディング、クーリング、デモールド、エージング…… という工程を踏んで、ようやくチョコレートが完成します。詳しくはこちら。 そうして出来た、チョコレート。初の「東京産」チョコが完成したのです。 最初は「本当にチョコレートの味がするんだろうか…?」と思いながら口にしたそうです。すると……
「ちゃんと、チョコレートの味がしたんですよ。着想から13年かかって、やっとです!」 努力の結晶「東京カカオ」から生まれたチョコレート。感動の味ですね。 記者会見会場で試食があり、私もいただいてみたのですが…… モグッ ((す、すごい……確かにチョコレートなのですが、すごい肉厚…… フルーティーで、もっちりしていて、口に残る果物のような香り……)) ((リッチすぎる……めちゃくちゃ美味しい……)) お土産をBAKEに持って帰ったところ、社内でも大好評でした。 この東京カカオのチョコレート、2018年の商品化を目指して現在生産をされているそうです。
「小笠原諸島に、カカオアイランドを作りたい。島おこしになるようなことが出来ればいいなと、思っています」 まだまだ平塚製菓さんのカカオ道は続きます!! 2年後のバレンタイン、そこで渡されるとびきりの本命チョコは「MADE IN TOKYO」になっているかもしれませんね。
・美味しいチーズの裏側に、私たちの知らない農家の現実がありました ・「紀元前から続くビジネス」に一生をかけて挑み続ける、農家のイノベーターとは?
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— 株式会社BAKE (@bake_jp) 2016年6月2日