こんにちは! THE BAKE MAGAZINE編集長の塩谷です。 取材で色んな職業の方にお話を聞くのですが、自分自身に「バチン!」とハマッたお仕事をされてる方って、なんというか、細胞レベルで幸せそうだなぁと感じちゃいます。。 そして、最近は就職するまでのプロセスも色々ですよね。 「どの企業に就職すれば、自分の好きな仕事が出来るんだろう?」というカタチから「自分の出来ることはこれだから、求める企業はぜひ声かけてください!」というカタチが増えつつある、ように感じています。 さてさて、今回取材をさせてもらったのは、湘南T-SITEの中にある「SQUARE Lab 食とものづくりスタジオ FERMENT」で働く小枝指来実(こえさし くるみ)さん。
インタビューをしてみたところ、彼女のスキルと、この場所の魅力がセットになっていました。 「食とものづくりスタジオ FERMENT」は一体どんな場所なのか、そして小枝指さんはどんなキャリアの方なのでしょうか??お話を伺いました!
「FERMENTさんは“食とものづくりスタジオ”というキャッチコピーがありますが、どうして食をテーマにされているんでしょうか?」
「都内だと3Dプリンタやレーザーカッターが置いてある施設ってどんどん増えていますよね。でも、いきなりドカンと3Dプリンタがあっても、日頃から使っている専門職の方以外はいまいちピンとこないもの。そこで、最も身近なものづくりである”食”や”くらし”を入口にして、ものづくりを楽しむスタジオをオープンしたんです」 なるほど通りで……FERMENTの施設をぐるっと見回してみると…… まずは、最新鋭の設備が揃ったキッチンスペース。 炊飯器とかも並んでます。 そして、これは… 「食品乾燥機」なんだそう。果物や椎茸なんかが乾かし放題です。 そして、その反対側を見てみると… 出た!3Dプリンタ!!! カッティングマシン!!! なんと、このFERMENT内の照明はこのカッティングマシンで作られたものだとか。おしゃれ…。 まだまだあります。 刺しゅうミシン!!
「いやぁ、充実してますね〜!ミシン使いたいです。無地の靴下に馬のロゴ入て、高値で売りたい。」
「そういう使い方はNGですよ?」
「冗談ですよ…」 これは……?
「これはなんですか?とすぱっく?」
「これは真空包装器といって、なんでも真空にパッケージしちゃう機械です。やってみますか?」
「はい!!」 ということで、やってみました。 都合よく生肉などを持っていたら良かったのですが、そんなものは持っていなかったので、手持ちの「お金」を全て真空化することに成功。
「ふふふ……ペシャンコになった……満足しました」
「本来は、食べ物なんかを長期保存するのに使ったりするんですけどね。まだまだ設備はありますので、奥にもどうぞ!」
「こちらは、CNC切削マシンといいます。木やケミカルウッド、モデリングワックスのような固まりの素材を、パソコンで作成した3Dデータを元にドリルのようなカッターで少しずつ削るもので、すごく精度が高いんです」
「これはレーザーカッターですね。レーザービームの力で素材を自由にカットしたり、表面に細かな彫刻が出来るツールです。手作業では難しいことも、レーザーカッターだと出来るんですよ。例えばこちら……」 すごく薄い雪の結晶が!
「「綺麗!」」
「クリスマス会用のピックを手作りしてみました!こちらのレーザーカッター、食べ物専用機もあるんですよ」 高野豆腐に「高野豆腐」の文字が…。 ちょっと見づらいですが、海苔だってカットできます。キャラ弁に良さそう。
なんとも充実した設備。でもなかなかここまで機材が揃っていても、持て余してしまうのでは? と聞いてみたところ……
「最初はキッチンとして利用されていた主婦の方が、次に刺しゅうミシンに挑戦されたりします。すると隣でレーザーカッターを使ってるお兄さんがいるのを見て『ちょっとやってみたいんだけど』って声を掛けてくださることも多くて」 なるほど。料理から入って、どんどん発展していくんですね。しかも、どの機械でも小枝指さんがサポートしてくれるんだから、素人でも取り組みやすい。 逆に、一般の料理教室に入りづらい男性向けのお料理講座もあるようです。
「定期的に開催している男子料理教室では、どうしてパンケーキがふくらむのかを化学的に説明したり。感覚ではなく、数値的に納得していただけるような説明をしてるんですよ」
「女子ですが……すごく興味あります!! でも、そういう講座の先生方って、どうやって集めているのでしょうか?」
「では少し長くなりますが、この町の説明から。 このFERMENTが入居する湘南T-SITEのあたり一帯は、藤沢サスティナブル・スマートタウンというニュータウンなんです。様々な企業が地域と一緒に、ここに住む方々の街づくりを行っています。 そんな中で、街のマネジメントオフィスから、私たちが所属する特定非営利活動法人フードデザイナーズネットワークに、ここFERMENTの運営が依頼されました。フードデザイナーズネットワークは、もともとこのような先生との繋がりがたくさんあるので、最初はその繋がりから依頼していたんです」
「なるほど〜〜」
「でも次第に、利用者の方の中からも『私はこんなことが出来ますよ!』と声を掛けていただく機会が増えてきて。どんどん地元の方が講師として活躍してくださっています。そしてシェアスペースとしてご自分の工房のように、自由に使っていただくこともできるんですよ』
「どんどん地元に根付いてきてるんですね! もう1つ気になったのですが、小枝指さんはデザインも出来るし、料理も作れるし、機材の説明も出来るし……そんなに幅広いスキル、一体、どうやって身につけたんですか??」
「私ですか? 私は、大学が理系だったのですが、そこで食べ物と化学の研究をしていたんです。そして、ものづくりが好きで好きで……在学中から卒業後までフードスタイリストの仕事をしていました」
「フードスタイリスト??」
「私の場合は、CMや映画の撮影用に使う食べ物を作ってました。撮影用ですから、美味しく見せるために、様々なものを使ってましたね。そのあとは、横浜のアートカフェでメニューの開発もしていました。展覧会の内容にあわせて、カフェのメニューも作品を反映したものにしたり」
「すごく楽しそうなお仕事ですね!そしてかなり、特殊なスキル……。そんなスキルがあったから、フードデザイナーズネットワークに声を掛けられたのでしょうか??」
「そういうことになります。しかも私、地元が隣町の茅ヶ崎なので、すごくこの土地には親しみがあるんですよ〜」
「食べ物が作れて、物作りが得意で、しかも地元!こんなにピッタリと条件がハマるなんて、すごいです」
「そうですね、すごく楽しい仕事だなぁと思っています。でももっと、やりたいことはありますね。 やっぱり私自身が地元の人間なので、今以上に地域に根付いた場所にしたい。ものづくりが好きな人はたくさんいらっしゃるのですが、ワークショップに参加しよう、はじめての機材を使ってみよう、というとまだまだ垣根があるなと感じてます。 『あそこにFERMENTがあるから、自分でつくってみよう!』って思ってもらえるような存在になりたいですね」 – – そう語ってくださった小枝指さん。 どの機材も非常にわかりやすく、かつ優しく説明してくださるので、「ここなら恥ずかしさもなく、チャレンジできるかも…!」と前向きになれました。 しかも利用料が都内のものづくりスペースよりもかなりリーズナブルなのもうらやましい。海も近くて、空気も良くて、ついつい長居したくなっちゃうような穏やかな空気でした。都内と流れる空気が、全然違う……。 でも話を聞くだけじゃなくて、まずは手を動かしてみたい!! 講座一覧を除いてみたところ、「絵本で世界を旅しよう inイギリス アリスのティーパーティー」というものがあり興味津々だったのですが、こちらはお子様向けでした……。FERMENTの真横は、蔦屋の児童書スペースなので、親子で参加できる講座も多いようです。 もひとつ気になるのはこれ。「0からはじめる はちみつ収穫体験」ですね。 他にもたくさんの講座があるので、ぜひぜひ、こちらでチェックしてみてください! ・FERMENT ワークショップ一覧 実はBAKEもまもなく「お菓子」と「化学」を軸にした研究スペース「OPEN LAB」がはじまるので、大いに勉強させていただくことにもなりました…! 小枝指さん、ありがとうございました!!
・舞台は、東京から28時間も離れた東京。構想から13年、東京産のカカオとチョコレートの実現に成功! ・専門は「おいしさ」の研究!宮城大学・石川伸一先生にあたらしい食のお話を聞きました
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— 株式会社BAKE (@bake_jp) 2016年6月2日