2021.10.27

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なぜ『やまえ栗』は極上なのか?村の誇りをかけた、復活への挑戦

なぜ『やまえ栗』は極上なのか?村の誇りをかけた、復活への挑戦

2021.10.27

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焼きたてチーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」では、2021年11月1日より期間限定で「ひとつぶ栗のモンブランチーズタルト」を発売します。

渋皮つきのマロンペーストを使ったチーズタルトの上に、熊本県産の『やまえ栗』まるごと一粒とカスタードクリームをのせ、モンブランクリームで包み込んだ今回のモンブランチーズタルトは、重さ約103g・高さ約6cmと「BAKE CHEESE TART」史上最大のボリューム感!そして特筆すべきは、今年収穫した採れたての『やまえ栗』の渋皮煮をまるごと一粒使ったことです。

『やまえ栗』と言えば、昭和天皇にも献上された実績を持つ熊本県球磨郡山江村で栽培された極上の和栗。

今回のTHE BAKE MAGAZINEでは、やまえ栗の生産者を代表して山江村果樹研究会 会長の豊永高希さんと、渋皮煮をはじめやまえ栗の生産加工を手掛ける有限会社やまえ堂 代表取締役社長の中竹隆博さんに、『やまえ栗』の美味しさの秘密や日本有数の栗の産地である山江村の取り組みについてお話を伺いました。

写真左:有限会社やまえ堂 代表取締役社長 中竹隆博さん、右:山江村果樹研究会 会長 豊永高希さん

美味しい栗ができる条件が全て揃った山江村

熊本県南部、鹿児島県にほど近い人口約3,240名の山江村。現在は約200件の農家さんが栗を栽培されていると伺いました。いつ頃から栗を栽培されているのでしょうか?

豊永会長:歴史を辿れば、鎌倉初期から栗が年貢として納められていたそうで、昔から自生の山栗が豊富でした。栗の栽培は、1931年に熊本県から栗の原種の配布を受け、村で採取畑を設置したのが始まりです。1950年代から村の農業構造改善事業の基幹作物の1つとして栗の栽培に力を入れ始めました。

山江村は面積の9割が山林で田んぼや畑の面積が少ないため、農家の所得を上げるために栗の栽培が必要だったんです。米一升よりも栗一升の方が高価な上、栗栽培には設備投資がさほど必要ありません。

盆地特有の気候で夏と冬、昼と夜の寒暖差が大きい上、南向きの丘陵で水はけがよく、赤土の肥沃な土壌で火山灰の影響も少ない。美味しい栗が育つ土地の条件が揃っているんですよ。おかげで、山江村では実が大きくて深い甘味と豊かな風味のある栗ができます。

山江村は、栗栽培に打ってつけの場所だったわけですね。地の利の他に、美味しい栗を作るための秘訣はありますか?

豊永会長:まずは、その土地に合った品種を複数植えることです。ひとことで『やまえ栗』と言っても、利平栗や銀寄、筑波、丹沢、杉光など、品種によって樹勢や収穫時期、実の大きさ、色艶や味が違います。私は現在、10品種約600本の栗を栽培しています。

同じ品種ばかり植えるのではなく、複数の品種を混在するように植えると受粉しやすくなり多くの実がなるんです。また、木と木の間隔を一定に空けて植えることで、日当たりが良くなり甘味のある実ができます。

完熟した実を収穫するため、木から落ちた栗を毎日こまめに拾う必要があるんですよ。収穫調整ができないから、最盛期になると毎朝6時に起きて収穫して選別してという作業を1日何度も繰り返します。例年だと9月下旬から10月頭までがピークなのですが、今年は2~3月が暖かかったり台風の影響がなかったりして少し早かったですね。

しっかりと選別してから出荷することも大切です。大きさだけでなく、水選別といって栗を水に入れても浮いてこない、実がしっかり詰まった質のよいものだけを出荷しています。

 

世界レベルの電機部品製造会社が、栗製造会社へ転身!

なるほど。『やまえ栗』という極上のブランド栗が作られるまでには、農家の皆さんのさまざまな工夫や手間がかかっているんですね。
「ひとつぶ栗のモンブランチーズタルト」では、やまえ堂さんが作られたやまえ栗の渋皮煮を使用しています。どのように作られているのでしょうか?

中竹社長:私自身も栗を栽培していますが、多くは山江村の農家の皆さんから直接仕入れた栗です。生栗を水につけて鬼皮を柔らかくし、渋皮を傷つけないように座の方から包丁で剥きます。やまえ堂では、質のよい渋皮煮を作るために、一つひとつ手作業で皮を剥いています。

お鍋に渋皮付きの栗を入れて、多めの水を入れて強火で煮ます。2~3日かけて水が澄むまで3回ほど繰り返し、灰汁やスジをきれいに取り除き柔らかくしていきます。大きな鍋でいっぺんに煮ると実がすぐに崩れてしまうので、たくさんの鍋に分けて行います。だから、最盛期になるとここの作業場は鍋だらけですよ(笑)

一つひとつ丁寧に優しい手つきで栗そうじをしたら、砂糖を入れて煮込みます。栗本来の風味を楽しんでもらえるように、余計なものは入れず丁寧に仕上げています。

栗の皮を剥く皆さんの手さばきがスゴイ!まさに匠の技ですね。何年くらい携わっていらっしゃるのでしょうか?

中竹社長:私が栗加工を始めたのが2009年ですから、皆さん十数年のベテランですね。実は、以前は電機部品の製造会社で、携帯電話のVCO(電圧制御発振器)やWindows95の頃に使われていたマイクロプロセッサなどを検査していて、世界の約7割をうちで検査していたんですよ。

しかし、リーマンショックの影響で経営が厳しくなり、以前からお声がけいただいていた栗加工に転向することを決断しました。父の代から20年以上続けていた会社でしたし、社員のことを考えると辞めるにはかなり勇気が必要でしたね。

もともと兼業で栗の栽培自体はしていたので、これを機に専業で栗の加工まで手掛けてみることにしました。今、渋皮煮を作ってくれている彼女たちは、当時、電機部品を作るために顕微鏡を覗いたりしていたメンバーなんですよ。

 

キーパーソンはスナックのママ?!

電機部品製造会社から栗製造会社への転身とは、ものすごいチャレンジですね。

中竹社長:そうですね。最初は、近所の人たちに協力してもらって渋皮煮の試作品を作りました。2009年の1月10日に作って、瓶詰めして手作りのラベルを貼って、1月21日に東京で行われた商談会に何とか間に合わせたんです。

栗の品質は良いものの、瓶詰めで重く割れやすいこともあって、最初はなかなか興味を持ってもらえませんでした。しかし、パッケージを瓶詰めから真空パックに変えたり、味などを改良したりと、試行錯誤を重ねたことで人気商品となりました。

渋皮煮の作り方も改良されたのでしょうか?

中竹社長:はい。どうすればもっと美味しくなるだろうと、いろんな人に話を聞いてみたんです。そうしたら、みんな口を揃えてあるスナックのママが作る渋皮煮が美味しいと言うわけですよ。その方を探したところ、すでにお店を閉めて上京されていることがわかり、甥御さんから紹介していただけるようお願いしました。

1週間こちらへ来ていただいて、直接皮の剥き方を含め作り方を教えてもらいました。すると、本当にきれいに、しかも倍の速さで皮が剥けるようになり、質も量も一気に上がったんです。今では、オーダー制で作っている大粒の渋皮煮の場合、一粒2,000円ほどで販売させていただくこともあります。老舗の日本料理店や高級フレンチレストラン、パティスリー、大手百貨店などにもお取引いただき、やまえ栗の渋皮煮の価値をしっかりとご評価いただけるようになりましたね。

 

市場から『やまえ栗』が消えた!皇室献上された極上栗の危機

『やまえ栗』のブランド力が高まっているんですね。生産量も伸びているのでしょうか?

豊永会長:1977年にやまえ栗が昭和天皇に献上され、山江村の栗の出荷量は400トンに達しました。『やまえ栗』は村民の誇りのような存在になったんです。しかし、生産者の高齢化が進み、300件ほどあった栗農家は200件ほどに減り、出荷量も100トンまで減少しました。

中竹社長:1992年に、JAの再編で一時期『やまえ栗』という名称が使えなくなり、市場から『やまえ栗』ブランドが消えたこともありましたね。名前が使えないのならば、と生産を辞めてしまう農家もいました。当時は、95%近くを生の栗のまま出荷していて、残りの5%を森林組合が栗饅頭に加工して販売するのみでした。
そして、2008年に『やまえ栗』の復活をかけた全国展開事業が始まったんです。ちょうど私が栗加工を始めた時期ですね。

豊永さんはいつ頃から栗栽培を始められたのですか?

豊永会長:私も同じ頃、10年ほど前から始めました。以前は、山江村役場に勤めていたんです。父の代から栗農家で、私は長男なので小さいころから跡継ぎとして育ちました。だから、高校時代には接ぎ木をしていましたし、役場で働いている時も収穫を手伝っていましたね。栗農家になるのは自然な流れでした。

 

『やまえ栗』ブランドを全国へ!復活にかける産地の想い

『やまえ栗』の出荷量を100トンから300トンまで増やす計画だと伺いました。具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか?

豊永会長:品質の良い栗を栽培できるように、栗農家の支援をしています。良い栗は高く出荷でき、農家の所得向上に繋がります。兼業農家も多いのですが、栗の質が上がり所得が増えることを実感してもらえば、専業農家も増えて村全体の出荷量も増えていくでしょう。

新しく栗栽培を始める人もいますから、研修会を開いて、栗の木の植え付けから接ぎ木の仕方、剪定の仕方、肥料のやり方などをお話しています。場所によって管理の仕方も違いますから、それぞれの農家の土地に合った栗の品種を植えてどのように育てれば良いか、コツを説明します。

すでに栗栽培をしている農家には、より質の良い栗を育てることに関心を持ってもらうことが大切なんです。熱心さはそれぞれですが、村全体の栽培レベルを上げていかないと、『やまえ栗』の価値は上がりませんから。

中竹社長:栗農家を増やすために、「55歳で栗を植えよう」運動をしているんです。少しずつですが、子や孫の世代が栗に興味を持ち栽培を始めるケースも出てきていますね。

栗づくりに携わっていて、どんな時にやりがいを感じますか?

豊永会長:やっぱり友人や親戚をはじめ、食べてくれた人が美味しい!と喜んでくれる時ですね。数年前に、孫が「今年の栗は甘もうない!じいちゃんば叱っとかないかん」と言っていたそうです(笑)一番厳しいご意見番かもしれません。

これから『やまえ栗』はどのように進化していくでしょうか?

豊永会長:新たに『やまえ栗』のオーナー制度を始めました。18,000円で栗を10Kgお渡しするのですが、全国で募集をし先着10組の方にご参加いただいています。主目的は、山江村に直接来てもらって収穫などの体験をしてもらい交流することです。今年はコロナ禍で収穫体験が中止となり、農家で収穫した栗をお送りしたのですが、やはり直接来て交流できる方がいいですね。

中竹社長:毎年9月下旬には栗まつりを開催しています。同時開催される「やまえ栗スイーツフェスタ」は今年は中止になったのですが、前回開催された時は1万人ほど訪れ、高速道路から降りられないほどの渋滞になりました。

豊永会長を中心とした『やまえ栗』の品質向上や出荷量増加に向けた取り組み、やまえ堂などでの栗商品の開発や販売強化によってブランド化が進めば、囲い込みが始まると思います。ここに来なければ食べられない、といった特別な栗・栗商品が生まれれば、山江村の活性化にも繋がっていくでしょうね。

山江村でしか食べられない『やまえ栗』のスイーツ!開発されたら真っ先に駆けつけます!豊永会長、中竹社長、ありがとうございました。

「ひとつぶ栗のモンブランチーズタルト」商品概要
価格  :1個 600円(税込)
販売期間:2021年11月1日(月)〜11月14日(日)
※無くなり次第終了。限定数量に達し次第、予告なく販売終了となる可能性があります。
販売場所:BAKE CHEESE TART 国内全店舗、BAKE CHEESE TART plus RINGO ラゾーナ川崎店

文/真鍋 順子

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