「どこを拠点に制作活動を行うのか?」クリエイターの住む場所、つくる環境によって、生み出される作品には大きな影響が現れます。 今回THE BAKE MAGAZINEがインタビューさせていただくのは、札幌と東京の二拠点生活を続ける映像作家 / フォトグラファーの北川陽稔(きたがわ あきよし)さん。北海道で生まれ、東京での挑戦を続けながらも、故郷である北海度の自然をバックグラウンドに制作活動をされています。まさに、北海道「きのとや」をルーツとし、東京でビジネス展開をしながら北海道に工場を持つという、私たちBAKEの在り方とも重なります。そんな北川さんに、北海道と東京という二拠点で、制作を続ける意味を伺いました。
—先日は、BAKEのコーポレートムービーや、SLUSH ASIAでのプロモーションムービーを制作していただき、ありがとうございました。BAKEという会社にとって、北川さんのワークスタイルには運命的なものを感じます。 北川:こちらこそです。 これまでにも、北海道でよく知られているカフェ「森彦」や、東京の「手紙舎」の関連映像を制作していましたが、自分自身はカフェやスウィーツというジャンルにこだわっているというよりも、ナチュラルな世界観や、コンセプトとしての北方性を意識していました。それがそのまま徐々に仕事に反映されてきたというか…。 そんなタイミングでBAKEさんから映像制作のご相談をいただき、これは今の自分らしいお仕事だ、と思いました。さらにお菓子屋さんでありながらスタートアップ、というBAKEさんの在り方は、自分自身が日頃意識している「映像におけるインディペンデント」の考え方と相性が良い気がしたんです。 カフェ森彦 Promotion Video BAKE, Inc. Promotion Video
—どうして今の二拠点生活というワークスタイルになったのでしょうか? 北川:東京は常に新しい動きに触れることができて、作家としてもトライし続けられる場所です。もう一方の北海道には何にも増して心地よく生活できる環境があり、どちらかの場に限定するのが難しいというのが率直なところです。 6年くらい前、一時的に東京から札幌へと拠点を移していました。その時にふと、北海道をベースに制作をした方が、生活の部分を含めて物事の核心に近いような気がして北海道に戻り、その延長線上で今も活動をしています。 今では東京と地方を行き来するクリエイターはたくさんいるので普通の話かもしれませんが、首都圏/地方都市/大自然という3つの属性をアクチュアルに感じながら、感覚的にはどこにも所属していないというワークスタイルが今の自分には合っているし、作品制作を行う上でも有益な気がします。 —なるほど。とはいえ、どうしても時間や移動コストなどがネックになるかとは思うのですが、それでも北海道を選ぶ理由は何でしょう? 北川:北海道では仕事場から車で30分も走れば、作品の素材になるランドスケープがあります。一方、東京で全ての業務を行っていた頃は、作風に合ったロケーションで撮影を行うためには時間的/コスト的なロスが多いような気がしていました。ですから、二拠点生活での飛行機代はさほど気にしてはいません(笑)。 北川さんが撮影・ディレクションを行ったミュージックビデオ『piana – I Think…』 そして、自分は映像制作だけではなくフォトグラファーとしても活動していいますが、写真作品の視点でも北海道の風土や歴史的な背景は外せないものがあります。
—確かにこの景色は、北海道でなければ撮れないものですね。 では今、北海道のクリエイティブシーンで今面白いものは何でしょう? 北川:昨年は札幌国際芸術祭が開催されていましたが、北海道らしい地域のアートイベントにも注目すべきものがいくつかあると思います。自分自身の実感を伴うところでは、夕張の炭坑の遺構を舞台にしたアートプロジェクトや、苫小牧の樽前という地区で行われているアートイベントが、キュレーション的にもユニークなものでした。
北海道では、東京に比べるとどうしてもアートに対する認知や助成が限られてしまいます。そんな中で、自分自身が追求しているコンテクストと矛盾の生じないアートプロジェクトと巡り合えることは嬉しいですね。 —そんな出会いがあると、一気に人との距離も縮まりますよね。
—では最後に。今回BAKEのプロモーションムービーをいくつか撮影いただきましたが、どのような解釈で、制作いただいたのでしょうか? 北川:最初にコーポレートサイト用ムービーの打合せで伺った時、自由が丘の店舗とオフィスがニューヨークのSOHOのような雰囲気で、何か新しくてクリエイティブなことがそこで起きているのだと感じました。その後、細かい内容をBAKEさんと打合せして詰めつつ、基本的には最初に感じた衝動をストレートに映像化しました。
人物の動作や表情のディティールを引き出していく手法は自分のいつものやり方ですが、今回は都市型のアクティブな世界であることを意識しつつ、「お菓子のスタートアップ」という事業のスピード感と、そこに関わっているスタッフの皆さんの丁寧な所作を視覚的にリンクさせたいと思いました。いつものように小型のビデオカメラでオーバークランク撮影(スローモーション)をしているのですが、スピード感が伝わるよう、少しタイトにカットを割るように心がけています。 コーポレートムービー完成後まもなく、SLUSH ASIAに登壇されるとのことで、そこで流していただくPICT CAKEのプロモーションムービーも作らせていただきました、北海道の工場も含めて撮影・制作したものです。
—こちらは時間のない中、本当にありがとうございました…。 北川:そうですね(笑)、確かに制作期間は短かったのですが、ちょうど打合せのタイミングでは東京にいて、ロケ予定の時期は札幌にいるというスケジュールで動いていたので、とてもスムーズに制作が進みました。札幌工場の撮影時は、現場の皆様にも色々とご協力いただけましたし、それ以外のロケ場所やモデルさんも、札幌の他の仕事のネットワークなどが上手く噛みあって、効率の良いワークフローが組めたと思っています。 —北川さんの北海道での繋がりもご紹介いただき、本当にわかりやすくて魅力的なプロモーションムービーになりました。ありがとうございます。 事業スピードが速くなると、どうしてもデザイン制作物のクオリティが低下してしまうこともあります。ただBAKEでは、お菓子の美味しさを追求する製菓メーカーであること、そしてテクノロジーを活用するスタートアップ企業であることと同等に、「お菓子屋さんをデザインする」という観点でもしっかりとしたイメージを形成していきたいと思っています。そんな中で、北川さんのようなクリエイターさんとご一緒出来ることは、とても幸運なことです。 今後BAKEは、北海道・東京だけではなく、全国・世界中に事業を拡大していく予定です。これからもきっとお世話になるかと思いますが、どうぞ宜しくお願いします。(Text by Mai SHIOTANI)
北川 陽稔(KITAGAWA akiyoshi)Photographer / Video Artist 札幌生まれ。東京にて映像作家として活動し、短編映画の制作等を行う。作品はアンディ・ウォーホルやガス・ヴァン・サントを輩出したアメリカの映画祭 Ann-Arbor Film Festival において選考上映され、国内映画祭にて入賞。近年は主に、ランドスケープや人物をモチーフに時の多層性を可視化する写真やビデオ作品を制作。sprawl Inc. 代表として、ミュージックビデオやTVCM等の演出・撮影も手がけている。札幌市と西東京に居住。http://www.akiyoshikitagawa.com ■主な受賞 42nd Ann-Arbor Film Festival (2004 入選)・キャノン写真新世紀 (2011 佳作受賞)・2013 KAWABA NEW NATURE PHOTO AWARD(2013 入賞)・JRタワー アートボックス(2014 優秀賞) ■主な個展・グループ展 グループ展「写真新世紀 2011 東京展」(2011東京都写真美術館) ・個展「annoski #01 tuie-pira」(2011 Gallery Cosmos) ・個展「北川陽稔展 annoski」(2012 Gallery Poetic Scape) ・グループ展「写真・重力と虹」(2013 CAI02) ・個展「meltgram」(2014JRタワー ART BOX)・グループ展 札幌国際芸術祭2014連携企画「そらち炭鉱の記憶アートプロジェクト2014」(2014)・個展 北海道文化財団アートスペース企画展 北川陽稔展「annoski」(2014 北海道文化財団アートスペース)・「もうひとつの眺め(サイト) 北海道発:8人の写真と映像」(2015 北海道立近代美術館)
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— 株式会社BAKE (@bake_jp) 2016年6月2日