2016年3月、JR池袋駅の1階に焼きたてカスタードアップルパイ専門店「RINGO」の1号店がオープンしました。
あれから5年。RINGOは、年間600万個以上お買い上げいただくBAKE Inc.の主力ブランドへと成長。国内に15店舗、海外に6店舗を構え、毎日焼きたての美味しさをお届けしています。
今回のTHE BAKE MAGAZINEでは、メンバーのインタビューを通してRINGOの5年間を振り返りつつ、これまで、そしてこれからの挑戦について紹介します。
小阪:1号店のグランドオープンから「RINGO」に携わってきました。オープン前に入社したら、新しく立ち上げるアップルパイブランドの店舗配属になって。
実は私、煮たリンゴが嫌いで、アップルパイが食べられなかったんです(笑)しかも、既存ブランドである「BAKE CHEESE TART」と比べて、ブランド名も商品の価格も結構攻めていたし、食べてみるまでは正直なところ大丈夫かな?と思っていました。
でも、実際に食べて衝撃を受けましたね!他のアップルパイは食べられないけれど、RINGOは本当に美味しかった。これはいけると思いました。
しかし、グランドオープンを前に、いざ池袋店のオーブンで焼いてみたら全然上手く焼けなくて!オーブンの種類や大きさなど、条件によっても出来上がりが変わるので、美味しく焼きあがるまで何度も試行錯誤を重ねました。無事に開店できてホッとしましたね。
竹本:私は、今期(2020年7月)からクリエイティブを担当しています。BAKEは会社全体としてブランディングに力を入れていますが、中でもRINGOはしっかり作り込まれているんです。前任者から引き継ぎを受けた時、かなりプレッシャーを感じました。
RINGOのデザインには、ロゴマークや色使いはもちろんのこと、幾何学模様で統一感のあるデザインパターンなどきっちりとしたデザインガイドラインがあります。デザイナーとしては、やりやすい半面、これまで作り上げられたRINGOの世界観の中でどう新しいチャレンジをしていくか、緊張の連続です。
小阪:以前はパティシエをしていました。当時は、多くのお客様に食べていただくスイーツというより、ウェディング業界で目で楽しんでいただくデザイン系のスイーツを作っていました。
スイーツ作りの職人であるパティシエは、技術を学ばせてもらうという感覚の厳しい世界でした。6年間ほどスイーツ作りをしているうちに、自分の中で優先度が変わったんです。これまでとは違うかたちでお菓子に携わりたいと思って、BAKEに入りました。
竹本:私は、様々な企業のブランディングや事業プロデュースを手掛ける事務所でデザイナーをしていました。製菓企業からIT企業まで幅広い業界を担当しましたね。ロゴマークやパッケージのデザイン、他にも漫画の装丁なども手掛けたことがあります。
小阪:RINGOの5年間を振り返ってみて、特に思い出深い出来事は3つあります。
1つは、先程お話した1号店(池袋店)のオープン、
2つ目は、2017年12月の岡山店オープン、
3つ目は、2019年5月のRINGOベリージャックプロジェクトです。
岡山店は、東京(池袋・川崎)、福岡、大阪に続く国内5店舗目でした。人口の多い都市部ではない上、当時RINGOの新店立ち上げを担当できるのが私しかいないという状況だったんです。
中国四国地方で初出店ということは、もちろん誰もRINGOの存在を知りません。お客様は来てくださるのか、店舗スタッフの求人応募はあるのか、社内でも心配されていました。
そんな中、工房一体型店舗での焼成の仕方からお客様対応まで、ゼロからRINGOについて周囲に伝え、オペレーションを確立してスタッフを育成していきました。
そして迎えたオープン。想像をはるかに超えるほどとにかく毎日行列で、多い時は50名ほどのお客様にお並びいただくほどでした。
めちゃくちゃ忙しい日々だったのですが、当時、お客様からお褒めの言葉をいただいて。今でも深く心に残っています。
RINGOベリージャックプロジェクトも印象深いですね。当時、定番の焼きたてカスタードアップルパイと季節のフレーバー商品との併売がまだ難しく、個数制限をしながら販売していました。「買いたいときに買えない」というお客様からのご指摘もたくさんいただいて。そこで、フレーバー商品だけを販売する日を作ろうと考えたのが、ベリージャックでした。
店装からパッケージデザイン、ブランドサイトに至るまで全てをRINGOからベリーに替えるという本気のプロジェクトだったんですよ。
わずか4日間ということもあり限られた告知だったのですが、予想以上の大きな反響で。毎日夕方には売り切れ、最終日にはお昼に完売してしまって、通常のRINGO商品を販売するという状況でした。
4日間、ご来店いただいた全てのお客様にベリーパイをお買い求めいただけなかったという点では大失敗だったと思うのですが、RINGOというブランドの新たな可能性を感じたプロジェクトでしたね。
竹本:私は、2020年9月にRINGOで初めて携わった「焼きたてカスタードお芋アップルパイ」と、2020年11月から年末にかけて実施した「シルバニアファミリー」とのコラボレーションが印象に残っています。
「焼きたてカスタードお芋アップルパイ」は、初めて撮影から主動させてもらったフレーバーでした。RINGOをどう演出すれば、多くの人に秋を感じていただけるビジュアルになるか、試行錯誤しながら撮影に臨んで作り上げたクリエイティブだったので、たくさんの方にご覧いただけて本当に嬉しかったです。
もう1つ印象に残っているのは、エポック社「シルバニアファミリー」とのコラボレーションです。BAKEとしてもRINGOとしても、キャラクターとのコラボレーションは初めて。しかも、「シルバニアファミリー」は35周年で、多くのファンに愛されるブランドです。中途半端なコラボレーションでは、双方のブランドの世界観を壊すだけでなく、ファンの皆さんをがっかりさせてしまうので、正直プレッシャーや不安が物凄くありました。
しかし、RINGOの担当者の熱意が功を奏し、企画が通った時には、チーム全体が盛り上がって情熱がみなぎっていたので、私自身も「やるぞ!」と意気込んで取り組みました。
結果的に、シルバニアファミリーとRINGOの良さを活かしたコラボレーションとなり、大きな反響を呼ぶことができました。
シルバニアファミリーのキャラクターたちに癒されつつも、エポック社のご担当者やチーム全体で試行錯誤して作り上げられたことが非常に思い出深く、印象に残っています。
小阪:そうですね。リサーチデータを見ても、RINGOはBAKEの中でファン率が最も高いブランドです。
ファンの皆さまにご支持いただいている理由は、「デザイン」と「代わりになる商品がない点」だと考えています。
RINGOは、30~40代の女性から多くのご支持をいただいていますが、赤い色や幾何学模様を活かしたシンプルだけどかわいいデザインを気に入ってくださっているのだと思います。このため、RINGOのノベルティはいつも大人気なんですよ。
例えば、2017年に作ったRINGO初のノベルティ「FUU RINGO(ふうりんご)」は、朝からお店に行列ができるほどでした。また、2018年に作った「ミニトートバック」は、お客様からの反響が最も大きく、リクエストにお応えして何度かプレゼントに登場しています。
代わりになる商品が世の中に少ないこと(希少性)も、ファン率の高さに繋がっていると思います。アップルパイが食べられなかった私でも食べられるという、美味しさの強みがあります。
多くのアップルパイにはシナモンが使われていますが、RINGOにはシナモンが入っていないため、お子様や男性など幅広い方にお召し上がりいただきやすい味です。さらに、カスタードクリームが加わることで、りんごの酸味が抑えられ、パイ生地に練り込まれたバターの風味と合わさって、美味しさが引き立っています。
食感も一般的なアップルパイとは違います。サクサクの食感を生み出す144層のパイ生地に、2㎝角にカットされたキューブ型のりんごフィリングのゴロッとした歯ごたえ。後入れしたなめらかなカスタードクリーム。
リンゴが入った生地を先に焼き、その後にカスタードを入れて2度焼きすることで、サクサク・ゴロッ・とろーりなめらかな食感が活かされ、時間が経っても美味しく楽しんでいただける工夫が施されています。
アップルパイをご自宅で美味しく作るのは、結構難しいと思うんです。お菓子作りがお好きな方でも、RINGOのようなサクサクのパイ生地を焼き上げるのは大変でしょうし、素材や製法にこだわったりんごフィリングやカスタードクリームもなかなか揃えられないと思います。だからこそ、お客様はお店に足を運んで下さるんですよね。簡単に作れるものに、お金を払うお客様はいらっしゃらないでしょう。
小阪:2018年3月の「東京ミッドタウン日比谷店」のオープンではないでしょうか。RINGOにとって7店舗目のお店ですが、以降にできたお店のお客様はほとんどが日比谷店をご存知いただいているんです。
日比谷店は、東京ミッドタウン日比谷のグランドオープンに合わせて開店したこともあり、マスメディアでのご紹介を含め、かなり発信力が強かったと思います。通常の店舗では、オープンから数か月経つとお客様のご来店状況が落ち着いてきますが、日比谷店は1年以上ずっと行列の日々が続きました。
日比谷店へのご来店・ご購入をきっかけにRINGOを知り、気に入ってくださったお客様が最寄りの店舗などに足を運んでくださる、というような循環ができたのだと思います。
小阪:RINGOは知っているけれど、まだ食べたことがない、という方はたくさんいらっしゃると思います。また、アップルパイが好きじゃない、買うほどではないと思っている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
私は、RINGOはアップルパイの軸では語れないスイーツだと思っています。アップルパイの軸ではなく、RINGOというスイーツとしてブランディングしていければ、新しいファンも増えていくのではないかと考えています。
「アップルパイが食べたい」というのではなく、「RINGOが食べたい」と思っていただけるブランドにしていきたいですね。
竹本:より多くの方にRINGOを知っていただき、まず食べていただきたいです。RINGOの美味しさを実際に感じていただければ、きっとファンになってくださるはず。
そして、RINGOのお店を、日常の中にある自然と行くお店、生活の一部になるようなお店にしていければと思っています。そのために、私はデザイナーとして、お客様にRINGOのお召し上がり方、楽しみ方をクリエイティブを通して提案していきたいですね。
春夏秋冬をRINGOで感じていただける、いつご来店いただいても新しい発見や体験ができる、そんなワクワクするブランドにしていきたいと思います。
小阪さん、竹本さん、ありがとうございました。
最後になりましたが、RINGOファンの皆さま、いつもご愛顧いただきありがとうございます!
スタッフ一同、これからも皆さまにしあわせを感じていただけるよう、取り組んでまいります。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします!
文/真鍋 順子