コロナ禍で変容するライフスタイル。SNS上には「おうち時間」といったワードが並び、消費スタイルはリアルからオンラインへのシフトが進んでいます。お菓子のマーケットも例外ではありません。
一方で、配達ドライバー1人あたりの荷物取扱数が急増するなど、運送業の深刻な人材不足が浮き彫りに。
今回THE BAKE MAGAZINEでは、withコロナ時代におけるお菓子の届け方をテーマに、自宅での“ある時間”にフォーカスして立ち上げたというスイーツブランド「Pocco(ポッコ)」についてお話を伺いました。
仕事を終えて大急ぎで夕食の準備をしていると「おなかすいたー!」と子供にお菓子をせがまれる。「あとちょっとだから」と言い聞かせても、駄目な日もある。
スナック菓子を食べると子供のお腹は満たされて、せっかく作った夕食を残してしまう……。
小さいお子さんのいるご家庭では、よくある光景ではないでしょうか。
食前スイーツ「Pocco」を立ち上げた萩原美緒(はぎわら みお)さんも同じ悩みを抱え、大人も子供も罪悪感のないスイーツを模索していたそう。
“食前”というオケージョンに注目したのはなぜですか。
萩原:食事前にスイーツ?と思われるかもしれませんが、仕事終わりに「これから早く作らなきゃ」っていうときに、優雅にりんごを剥くなんて私にはできません。
夕食までの30分、腹ペコで不機嫌な子供たちをどうにかしてあげたい、でも正解がわからないという親御さんは少なくないと思います。私もその一人でした。
萩原:健康に良いものを食べてほしいと思って、市販の野菜チップスや煮干しなどをあげても、肝心の娘たちはどうもテンションが上がらないみたいで。
夕食前にスナック菓子を食べさせるのは罪悪感がありますし、健康だからといって大人の都合を押しつけても喜んでくれません。
せっかくなら喜んでほしいという親心を感じます。
荻原:ありがとうございます。スイーツはなんでもない日を“ハレ”にする存在だと思います。夕食前のひとときが、ささやかでも楽しい時間であってほしい。
大人の罪悪感を解決するだけではなく、子供が毎日食べたいと思うものを突き詰めないと、事業として継続しないと感じていました。
親子がご機嫌でいられるスイーツがきっとあるはずだ、とリサーチを続けていたある夏の日…….
夏といえば。
萩原:そう、アイスです!
去年の夏「冷凍庫にアイスあるよ」というと子供たちは大喜び、そのはしゃぎっぷりを見てこれだ!と思ったんです。さっそくアイスの試作が始まりました。
北海道産の素材にこだわる理由は何ですか。
萩原:実は4年前、私たち家族は北海道に移住したんです。最初は3ヶ月間だけのお試し移住でしたが、あまりにも居心地がよくて東京に帰れなくなりました(笑)。
北海道に移住してから気づいたことは、食材自体の力があれば簡単な調理で十分美味しくなるし、楽になること。ずいぶん料理が好きなりましたね。
移住がきっかけで食材の底力に気づかれたんですね。
萩原:特にフルーツは、もぎたてを食べたとき親子ともに感動してしまって。この美味しさを生かしたアイスをつくりたいと決意しました。
私も移住するまで知らなかったのですが、北海道余市町はフルーツ大国と言われているそうです。こちらはブドウの畑です。
萩原:美味しいフルーツを作るために、農家のみなさんが非効率でも手間暇をかけて育てられていることを知りました。
萩原:また、フルーツ加工工場の技術も素晴らしく、老舗の高級果物店のジュースを製造するなど、小規模でも信頼のあるパートナー企業の存在も大きかったです。
農家や加工工場の方々は、コロナ禍で出荷先の店舗が営業停止になり、どうやって消費者へ届ければよいか悩んでいらっしゃいました。そんな大変な状況にありながら、新しいフルーツの届け方として製品化にご協力下さり、励ましの言葉もたくさんいただきました。身の引き締まる思いでしたね。
北海道の美味しい素材がアイスになって自宅に届く、なんとも魅力的なプロダクトだ。さらに聞くと、萩原さんはもうひとつ“罪悪感”を解決したかったという。果汁を常温で保存することがボトルネックとなり、開発は難局に突き当たる。
萩原:オンラインショップで注文した商品を受け取れなかったり、自分で時間指定したのに急用がはいったり、なんだか罪悪感がありませんか?
わかります。申し訳無い気持ちで再配達をお願いしています。
萩原:オンラインショップの利用増加に伴って、運送業のドライバー不足が深刻になる中、少しでも負荷を減らしたいと考えていました。
萩原:アイスはフルーツの果汁とペースト、てんさい糖、レモン果汁のみの完全無添加で作っているため、常温配送が壁になっていました。
解決策を模索するなか行き着いたのが、北海道食品加工研究センターです。常温でフルーツを保存する技術を参考にさせていただき、完全無添加での製品化が叶ったのです。
スイーツとして美味しく栄養もあり、さらに完全無添加で常温配送・・・。ポストに届けば時間指定の手間も、再配達の手間も省けます。さらに配達料も抑えられて、三方良し。
萩原さんの願いが詰まったアイスがついに完成したのですね!
萩原:はい。それに、郵便局に「1つの荷物に1つのストーリー」という標語が大きく掲示されていて、ハッとさせられたんですよ。
当たり前だと思ってはいけないですね。配達のサービスしかり、農家のフルーツしかり、食べ物の向こう側にはたくさんの人や自然の恵みがあります。お客様には「Pocco」を通してストーリーの一員になってもらえればと思います。
お客様からの反応はいかがですか。
萩原:ポストに届くのを楽しみに待ってくれるお子さんもいるみたいです。親御さんも手軽にフルーツを味わえるとメリットを感じてくれています。
忙しない日々のなかで、Poccoを通してささやかでも親子のコミュニケーションが生まれていることを嬉しく思います。お客様がInstagramで投稿してくださった写真を見て、Poccoの完成を実感しますね。
これからの展望を教えてください。
萩原:Poccoでは北海道素材をつかった新フレーバーを開発中です。私達の会社のミッションは「明日のご飯を楽しみに眠りにつく毎日を」です。「明日のご飯何かな」なんて考えながら幸せに眠れるような事業ができないかと構想しています。
そのひとつがスイーツですが、食前というシーンはまだまだ広がりがあります。例えば習い事の前、外出中、様々な食前のシーンに繋がるスイーツは作っていきたいですね。
【Poccoに学ぶWithコロナ時代のスイーツ おさらい】
1)大人の罪悪感を解消し、食前スイーツというオケージョンを創出 2)子供が毎日でも食べたくなる美味しさを追求し、北海道の食材にこだわる 3)常温でポストに届ける商品にすることで、配送負荷を軽減
Poccoのご注文はこちら:https://Pocco.me/
BAKE Inc.でも、最近リニューアルした「POSTBOX COOKIES(ポストボックスクッキーズ)」はポストへ投函、受け取りが可能なサイズをラインナップしています。
コンセプトは「大切な人へ、想いを贈るクッキー。」
グリーティングカードを送るように、人々のライフスタイルやお菓子を贈るシーンの変容を背景に、“大切な人に気持ちを贈る”体験を届けたいという思いから誕生しました。
シーンや相手に合わせて選べる8 種のデザインと、お客様ご自身でオリジナルイラストやメッセージを書き込める無地のパッケージをご用意しています。
常設 1 号店「POSTBOX COOKIES 」は、2020年8月5日(水)に東京駅八重洲北口に開業する新スポット「東京ギフトパレット」内にオープンします。
withコロナ時代。
ライフスタイルの変化にあわせて、お菓子の届け方、食べ方、そしてお菓子そのものも進化していきます。THE BAKE MAGAZINEでは、そんなお菓子の進化について、引き続きご紹介していきたいと思います。