「北海道工場の飛鷹さん」
BAKE社内でよく名前を聞くけれど、どんな人なんだろう? そもそもお菓子工場の工場長って、一体どんな仕事なんだろう?
BAKEのものづくりの現場を支える、大黒柱。 それにも関わらず、普段はなかなかその仕事ぶりを知ることができません。 一緒に働いているのに、なんだか距離がある。 この事態、なんとかしなくては……
ということで、改めてお話を伺うべく、北海道工場に飛びました。
早速迎えてくれた工場長の飛鷹さん。 びしっと工場着で迎えてくれて、こちらも気が引き締まります! (早朝の眠気も吹き飛びました…!)
本日はよろしくお願いします!
飛鷹:こんにちは!飛鷹です。本日はよろしくお願いします。
さっそくですが、飛鷹さんはBAKEに入られてどのくらいになるんですか?
飛鷹:入社したのは2017年、そして工場長になったのは2018 年の春です。でも、製菓業界自体には高校生の頃から関わっています。
そうなんですね!
飛鷹:BAKE創業者のお父さんの会社「きのとや」でアルバイトをしたのが最初です。クリスマスや春休みはかなり忙しかったんです。すごい数のケーキを作って、お客様のもとに届けて、毎日みんなで乗り切って。
毎日が文化祭前夜のような。
飛鷹:うんうん。僕にとっては、その忙しさとか必死さがすごく楽しかったんですよね。 あと、職人さんが綺麗に仕上げていくのを間近で見ていて、学生アルバイトながら憧れたというか、純粋にお菓子作りって面白い!という原体験があって、続けてこれたんだと思います。
しかも、ちょうど大学4年の時に、BAKEの「焼きたてチーズタルト」のルーツとなる、「ブルーベリーチーズタルト」の開発が始まっていたんです。
飛鷹:当時の商品開発部長に「うまいのができたから、食べてみろ」と言われて、食べた時の感動。あのときの美味しさは今でも忘れられません。
歴史的瞬間ですね!では、お菓子との関わりはかなり長いのでは?
飛鷹:大学を卒業してからは、製菓ではないメーカーに入社したんです。でも、学生時代の感動した思い出も手伝って「やっぱりお菓子の世界に戻りたい!」と気持ちが大きくなって。
それで、学生時代にお世話になった「きのとや」に転職しました。だから、お菓子との関わりはもう21年くらいでしょうか。
そうなんですね。やはり、製造の担当ですか?
飛鷹:いや、販売担当の時期もありましたねぇ。製造から販売まで、垣根を超えて様々な職種を経験させてもらいました。
おかげで、それぞれの現場の大変さがわかりましたし、その経験が今の仕事でも活きています。特に店舗の大変さは、工場にいるからこそ、より強く感じます。
どんな瞬間に感じますか?
飛鷹:たとえば2013年、BAKEでチーズタルトが爆発的に売れはじめた時「お店の商品がなくなってしまう!明日から2倍の数を作ってほしい」というオーダーが工場に来たんです。
僕は当時、「きのとや」の製造課長として働いていたのですが、厳しいオーダーに思わず苦笑するほどでした。生産ラインを急に倍にするのは、本当に大変なことなんです。
でも、売っている現場のことを思うと「みんなで一生懸命応えて乗り切るしかない」と気合いが入りました。
飛鷹:一日に5,000個から10,000個、20,000個……と、どんどん製造数が増えて嬉しい悲鳴をあげるのと同時に、たくさんのお菓子をお客様に届ける現場の大変さに思いを馳せました。
店舗に立ったことがあるからこそ、商品の先のお客さまのことをリアルに思い浮かべられるんですね。お話を伺っていると、飛鷹さんは大変な時こそ、パワーを発揮していらっしゃるように感じました。
飛鷹:そうかもしれませんね(笑)。大変な状況を楽しめるから、乗り越えられたんだと思います。やっぱり「売れる、作れる」というのは嬉しいことじゃないですか。
はい。お客様から求められている証拠です。
飛鷹:当時は必死でしたが、達成感も人一倍感じていたかも。
商品のその先を考えられると、力が湧いてきますね。
BAKEの工場長になられてからは、どういう時に達成感を覚えますか?
飛鷹:当たり前に思われるかも知れませんが、美味しさをキープしたまま、生産効率をアップできた時です。数量をこなせても、品質が落ちては意味がありません。
我々は作り手なので、作ったものはなるべく食べてもらえるように、一定の品質を保つのも大切な仕事です。
BAKE CHEESE TARTだけでもここ1、2年でかなり変わりました。期間限定フレーバーの展開があり、店舗も国内外に増えました。
品質を保ちながら、その成長を支えるのは並大抵のことではない、と感じます。
飛鷹:ありがとうございます。日々の仕事の中では、作業工程を見直して店頭で販売できない商品を少なくできた時にも、とてもやりがいを感じます。
たとえば、アップルパイの「RINGO」でパイ生地が規定のサイズより膨らみすぎてしまい、販売できない商品が増えてしまった時。一度基本に立ち返って、パイ生地の寝かせ時間、リンゴのシロップの切り時間、原材料の保管時間や保管場所の湿度を見直しました。
それぞれの時間と湿度を一定にできるよう、ひとつひとつの作業を組み立て直し、販売できない商品を減らすことができました。
お菓子業界に入った時に美味しいお菓子作りの秘訣は温度・室温・時間にある、と教わっていて。この時も初心を忘れずに対応しました。
作業性や効率とのバランスを取りながら、基本を大切に。お菓子作りの工程を俯瞰してみていくのが、工場長の仕事のメインなんですね。
飛鷹:そうですね。それと、商品であるお菓子のことと同じくらい考えるのは、スタッフのこと。5年先、10年先、みんなが楽しんで仕事を続けていけるかどうか。
工場内でテキパキと仕事をこなしていて、かっこよかったです。
飛鷹:みんなすごく仕事熱心で、向上心があるんですよ。BAKEは1ブランド1商品だから、人の流れを工夫をしています。みんなの力を引き出して、いいモチベーションで仕事ができるような人員配置を考えるのも私の大事な仕事です。
飛鷹それと、規模が大きくなってくると声が届きづらくなってしまうので、組織の仕組み作りも重要です。伝え方を間違うと、何万個も販売できない商品が出てしまう。
みんなを混乱させないためにも、常にブラッシュアップしていかなければいけません。
製造の流れも、人の流れも。考えるべきレイヤーが多いですね。
飛鷹:よく言うように、人・もの・お金の流れは大切で。 人は楽しんでいるか?製品は良いものができているか?会社はちゃんと儲かっているか?この3つを常に意識しています。
なるほど、工場長という仕事が少し見えてきた気がします。
飛鷹:でも、BAKE北海道工場は僕というより、スタッフがいてこそ、です。みんな本当にやる気があって、諦めないし妥協しない。今、BAKEの増産が叶っているのはスタッフの熱意が繋がっている証拠です。
2018年9月6日、北海道胆振地方中東部を震源として発生した地震は、北海道ではじめて震度7を観測する前例のない災害となった。
BAKEのサポートオフィスでも工場のことを心配していました。
飛鷹:朝3時に地震が起きた時、僕自身は停電してブラックアウトした街の光景に驚きました。真っ暗で、どうしようかと思っていたら、マネージャーのふたりからすぐに連絡があって。
さらに管理職以外のメンバーも、早朝に続々と集まってきてくれて。車のないスタッフは歩いてきてくれたんですよ。
みんな、自主的に……?
飛鷹:そうなんです。何も連絡していないのに、「何か手伝うことはないですか」って。
工場は稼働できなかったものの、その行動自体に勇気づけられました。
飛鷹:地震発生からしばらく電力は復旧しないまま。不安を覚えつつも復旧した後のことを考えながら待機していました。33時間後、冷蔵庫内の品温が問題ないことを確認できた時は、本当にホッとしましたよ。
地震から中2日ほどでしたでしょうか。再稼働まですごく早かったですよね。
飛鷹:工場が無事だったのと、協力会社さんの頑張りにも支えられました。協力会社さんも大変な状況にありながら、稼働に間に合うよう原材料を届けてくれたんですよ。 東京のサポートセンター(BAKE本社)からも、モバイルバッテリーや応援ポスターを届けにきてくれて、本当に励みになりました。
社内外での団結力がグンとアップした出来事でもありました。
工場長1年目、激動の2018年でしたね。最後に、これからの展望をぜひ。
飛鷹:一番にお客様のことを考えると、やはり「安心安全」なものをしっかりと作る。というところでしょうか。
2017年に「HACCP」(厚生労働省が定める衛生管理制度)の認証を取得したのもそうですが、これからもますます安全を強固なものにしていくために、他の安全規格も積極的に取得していきたいです。安全に完璧はないですから、ずっと追求していきます。
「安全」を強化するのは守りでもありますが、攻めでもありますね。
飛鷹:その通りです。海外進出に欠かせない認証もありますし、「安全」という土台を磨くことが、これからのBAKEを鼓舞することにもなると思います。
今後も初心を忘れず、企画者、開発者の想いをしっかりと工場でも繋げ、お客様に届けていきます。
私たちもそうして作られたお菓子の魅力をしっかりと発信できるよう、頑張ります。本日はありがとうございました!
文:根岸未知(BAKE inc.) 写真:名和実咲(THE BAKE MAGAZINE)