2017.07.25

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スイーツのシズるを左右する?照明の色と食欲の関係

スイーツのシズるを左右する?照明の色と食欲の関係

2017.07.25

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sum_1200x700 こんにちは。BAKEのサイエンス担当、大嶋(Facebook)です。 みなさんには、こんな経験はありませんか。友人と行ったレストランで料理写真を撮るとき、同じ料理を撮影したはずなのに、なぜか友人の写真のほうが美味しそうに見える…!というような経験です。こうしたことが続くと「自分は写真が下手なのかな…」と凹むこともあるかもしれません。 でも、安心してください! 料理写真がイマイチなのは、必ずしも撮る人のせいではありません。写真の良さを大きく左右する要因の1つは、店内の照明です。自分の席は暗めで、友人の席は光の真下だった、なんて場合でも、十分写真に差が出る可能性はあるのです。 照明は、食べ物の魅力を大きく左右します。これはフォトジェニックに写真を撮りたいときに限らず、店舗のディスプレイなどでも同じです。照明ひとつで、すごくおいしそうに見えることもあれば、たとえ味はおいしくても食べることに抵抗感が出るほど印象が悪くなることだってあるのです。 食べ物をおいしく見せる照明の条件はさまざまにありますが、今回の記事では、照明の色による食欲への影響について見てみたいと思います!

目はだませても、食欲はごまかせない

まずは、照明の色の効果を体感してみましょう。こちらのショートケーキの写真を見てください。

cake1_1200x800

いちご、クリーム、スポンジ、シンプルな3つの要素で構成されたショートケーキ。それぞれどんな色に見えますか??

少し色褪せては見えるものの、一応、よくあるショートケーキのように、イチゴは赤色に、種の部分は黒色に、スポンジの部分は薄い黄色に、クリーム部分は白色に感じられるのではないでしょうか。 cake2_1200x800 ところが、イメージ写真の色を拡大・抽出してみると、いちごの色は茶とオレンジの中間のような色であり、種の部分も抹茶のような渋い緑色です。それもそのはず。今見ていただいたショートケーキは、緑がかった照明があたっています。 それでも、人間の脳はよくできたもので、緑がかった照明の色合いを考慮して、脳が色情報を補正しているのです。だから、いちごはオレンジではなく赤であり、種は緑ではなく黒であると感じられるのです。 とはいえ、写っているのは普通のショートケーキだと感じられてもなお、白い照明の下のショートケーキよりは、あまり美味しそうには見えませんね…….。目はごまかせても、食欲まではごまかせないことが体感いただけるのではないでしょうか。

デザートは照明の色の影響を受けにくい!?

こうした現象を詳しく調べるために、東京都市大学(論文投稿時は武蔵工業大学)の小林茂雄教授は、濃淡の異なる色付き照明を用意して、20種類の料理を照らし、その印象を調べる実験を行いました。

【実験の詳しい内容】

カフェを想定した、椅子とテーブルが設置されたスペースで行われました。照明の色は赤、緑、青の3種類で、それぞれ濃淡が2種類の、全6種類の照明が使われました。3-4人の参加者が、友人同士で来店した設定で着席し、その後照明が6種類のいずれかに変えられました。その照明の色に5分間目に馴染ませた後で、20種類の料理が提供されました。その料理について参加者は、見た目だけの判断で「抵抗なく食べられる」「抵抗はあるが食べられる」「食べられない」のいずれかで評価しました。

その結果、次のような傾向があることがわかったのです。

1)淡い色はセーフ、濃い色はアウト

たとえば白米では、淡い光の時は、赤、緑、青のいずれの場合でも、80〜100%の人が「抵抗なく食べられる」と回答しました。しかし、濃い光になると、緑と青では32%に低下したのです。また、トマトの場合は、淡い光の場合は74〜92%の人が「抵抗なく食べられる」と回答した一方で、濃い青の場合は12%、濃い緑に至っては0%に低下しました。 色の濃い緑や青の照明は、カビっぽさや品質低下をイメージさせ、食欲を低下させるようです。

確かにこのような色の濃い寒色の照明の店内では、食べ物のツヤがよく見えないどころか、なんの食べ物なのかすらも曖昧になりますね。

2)デザートのストライクゾーンは広い

20種類の中で、デザート類(プリン、クッキー、ショートケーキ、みたらし団子、ヨーグルト)は、濃い光の場合でも比較的食欲が維持されたままでした。先ほどショートケーキの例をお見せしましたが、影響はマシな方だったのですね。特にクッキーの場合は、いずれの濃い光でも、72〜100%の人が「抵抗なく食べられる」と評価しました。 この理由として、デザートは着色料が使われる機会が多いため、光によって見た目の色が変わったとしても、そういう色のデザートなのだとして受け入れやすいことが挙げられています。

日本ではあまり多くはありませんが、確かに海外ではカラフルでおいしそうなデザートはよく見かけますよね!

3)食品の”温度との一致感”も大事

白米では、濃い緑と青では評価が著しく下がったのに対し、濃い赤では88%の人が「抵抗なく食べられる」と判断しました。一方で、牛乳では、濃い赤と濃い緑で「抵抗なく食べられる」を選んだ人は28〜32%だったのに対し、濃い青では64%でした。このことは、白米は温かいものであり、牛乳は冷たいものであるという前提が関係していると考えられています。温かくあるべきものは暖色である赤色を受け入れやすく、冷たくあるべきものは寒色である青色を受け入れやすくなるのですね。

塩むすびという概念? #のはら農研塾 #白米 #下手

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#白米 46ユさん(@46yu_tod)がシェアした投稿 –

照明が赤めの白米(上)と青めの白米(下)を並べてみると、写真には温度の情報を持たないにも関わらず、上の写真のほうが温かそうに感じるような気もします。 他にも、ツヤのあるものは光の色で鮮度や見た目の感じ方に影響が出やすいことや、コーヒーなど元々の色が濃いものは光の色で印象が左右されにくいことが明らかになりました。 このように、いくら脳が見える世界を補正したとしても、食欲自体は、物理的な視覚情報(光の波長など)に左右されるようです。食べ物の写真を編集するときや、店頭に並べるときには、食欲が落ちるような照明にならないように心がけていきたいですね! 詳しい理由についてはコチラでも図解しています。ぜひご覧くださいませ。 text by 大嶋絵理奈(Facebook

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