こんにちは、BAKEの平野です。普段、お菓子のWebメディア「cake.tokyo」の運営をしているのですが、メディアを成長させていく上で、記事を一定数の方に読んでもらうことはできても、次に「多くの人にシェアされるコンテンツ(=バズコンテンツ)」を作ることの難しさを実感しています。 そんなことを考えながら、編集長の塩谷さんに相談したところ、「BuzzFeedの記事、ここ最近ですごくSNSでのシェアが増えてる気がしない?他のメディアにはない記事編集の方法が面白いよね…」という話になり、さっそくアポを取り、BuzzFeed Japan株式会社にお邪魔してきました。今回は、「BUZZエディター」の鳴海さんと「BUZZライター」の嘉島さんのお二人にお話を聞いてきました!
新卒はソフトバンクの営業職として入社。その後、メディアジーンに入社。GIZMODOを2年ほど担当した後、ハフィントンポストに転職。9ヶ月後、BuzzFeed Japanに入社。個人で発信しているnoteも、更新するたびにバズっている。
CNET Japanなどのテック系媒体で7年ほど記者を務めたのち、2011年に当時のライブドアに入社。BLOGOSやlivedoor NEWS、LINE NEWSなどに関わる。その後フリーランスなどを挟んでBuzzFeed Japanに入社。著書に「やせたいならコンビニでおでんを買いなさい 」(日経BP社)など。最近はポッドキャストをがんばっている。
平野 : 今日はお忙しい中、お時間いただきありがとうございます!アメリカで昨年月間60億ビューを達成したオンラインメディア「BuzzFeed」の日本版が始まるぞ、と2015年11月に話題になり、それからも第一線で活躍していた方が続々と入社し、どんどん拡散力をつけているように思いました。 最初に、おふたりはBuzzFeed Japanでどのようなことをやっているのですか? 鳴海 : 僕は「Buzz Editor」として働いています。BuzzFeedって、大きく「NEWS」と「BUZZ」の2つのコンテンツがあるんです。PCでサイトを見てみると2つに分かれていて、右が「NEWS」で、左が「BUZZ」。私は「BUZZ」側のデスク的な役割で、主に記事の取りまとめをしています。 平野 : BUZZエディター! 嘉島 : 私も鳴海さんと同じで、BUZZチームのスタッフライターとして働いています。なので、鳴海さんは上司ですね。上司というか、むしろ先生?(笑)。 鳴海 : 言われてみれば、学校っぽいよね。例えば、「〇〇やりたいです」って言われたら、「そのテーマなら、こうやってみたらいいんじゃないかな」ってアドバイスする感じです。 平野 : どういう経歴の方が多いんでしょう? 何となく、鳴海さんや嘉島さんのように、Web業界出身の方が多いのかなと思っていたんですが……。 鳴海 : そうでもないですよ。元保育士とかいますし。それに、新卒もいます。編集部は約20人くらい。 平野 : 思ってた以上に多いんですね! 嘉島 : ただBuzzFeedは、すべてのコンテンツを自社に所属している人が書いているんです。そこが、他のWebメディアと違うところだと思います。 平野 : 全部内製…すごいです! 記事は、どういう流れで作られていくんですか? 鳴海 : 社内ではSlackを使っていて、常におしゃべりする用のルームがあります。 鳴海 : 気になった記事のURLを投稿したり、写真をアップしたり、ずっと雑談していて。そこで「面白いじゃん」っていう人が何人か現れたら、じゃあ記事にしてみようか、ってなりますね。誰が担当するかは、時と場合によりけりです。 例えば、Twitterが140文字の制限を変更するというニュースが出たときには、「Twitterといえば、嘉島さんよく使ってるよね、やった方がいいんじゃない?」というように。一人一人得意なジャンルがあるので、その人にお願いすることもあります。 嘉島 : 他のメディアでも変更点について記事がありましたが、私にとっては難しかった。多くの人にとっても同様なのでは、と感じたので、Twitter社の方に取材をしたら、快く教えてくれました。その原稿を鳴海さんに何回も見せて、アドバイスをもらいながら仕上げていきました。 [参考記事] : #Twitter 140文字の変更 1分でわかる「何が変わるのか」 [参考記事] : Twitter「リプライとメンションは別物です」じゃあ、何が違うの? 平野 : 一人一人の得意分野に基づいて記事を作っているんですね。ただ、裁量が大きい分、メンバー間の意識の共有が難しくないですか? 嘉島 : みんなBuzzFeedの世界観に共感して入社しているので、雑談を重ねるだけで意識共有はある程度できているのではないかと思います。また、定例ミーティングもあります。 それと毎週金曜日の夜には、全社で集まって意見交換をする時間があります。人数が増えると意思の共有が難しくなりますが、その時間は大事にしようと意識しています。 鳴海 : その時間は「あ、いま仕事しちゃダメだ」となり、集まって取り留めのない話をしています。たとえ忙しかったとしても、最初の30分だけでもいるようにしています。 平野 : アメリカ本社の方も来る機会は多いんですか? 嘉島 : 結構行き来はありますね。中には、観光に来たついでに寄ったりする人もいます(笑)。日頃からハングアウトなどで電話会議をやっているので、本国とも話す機会も多いです。Twitterでは、フォローし合ったりもしています。 平野 : 会話のやり取りは、もちろん英語で……? 嘉島 : そうですね。でも、たまに日本語も。Google翻訳を駆使して話しかけてくれるメンバーがいるので。Slackは12地域すべてつないでいるので、突然とある役員から「いい記事書いたね」ってメッセージが来ることも(笑)。オフィスの境目がなく、フラットな環境だなと思います。
平野 : BuzzFeedの「読者」っていうのは、鳴海さんの頭の中ではどんな人を想定しているんですか? 鳴海 : 基本的に日本語で書いているので、日本にいる人ですね。BuzzFeedの場合、年齢とかターゲットもなく、かといってテクノロジーとか特定カテゴリーの専門誌でもないので、若い子や自分の親が読んでもわかりやすい記事を意識しています。 嘉島 : 情報を詰め込むことが読み手が求めていることでもないんだな、と分かりました。「読者」よりも「ユーザー」という表現の方が近いかも。 平野 : 先ほどのTwitterの記事のように、裏取りを行っている記事が多い印象があるんですが、そういうことは社内で徹底してるんですか? 鳴海 : 裏取りをすることは、伝えるためのひとつの手段です。必ず取材に足を運ばないといけないわけでもないですし、その方がよければそうする、という感じです。「〇〇しなければならない」というルールはないですね。 嘉島 : ルールではなくって、「読者にとって良いものになるかどうか」で判断しています。それは、ストレートニュースであっても、バズ記事であっても。
平野 : そうやって書いてきた記事の中で、「これはバズった」という記事を教えてください。 嘉島 : そうですね…、例えば、1分で説明するシリーズ。iPhone SEの新製品発表会の記事とか。 [参考記事] : iPhone SE誕生! 1分でわかるAppleの新製品 嘉島 : スマホで読まれることが今後も増えるはずなので、iPhoneの発表会の記事も、スッと理解できないといけない。そうすると、1分から3分で読める記事にまとめなくてはいけないので、当然やらないといけない努力だと考えて、伝え方を模索していますね。 嘉島 : もし取材に行ってたくさんの情報を得たとしても、必要不可欠な要素を1分で理解できるような記事を作りたいと思っています。現場に行ったからって、長い文章を書くことだけがいいとは限らない。あくまで「文章」は、伝えるための一手段にすぎないので。 鳴海 : 文字が多ければ分かりやすいわけでもなく、文章がうまければ分かりやすいわけでもない。文章よりも写真1枚の方が優れていることもある。その場その場で最適な選択ができるように、まっさらな状態で取材に向かうようにしています。そういえば…、嘉島さんが言ったように、記事を「書く」ってあまり言わないかもね。 嘉島 : 確かに、記事を「作る」って言う方が多いかも。みんなで動画を撮ってみたりとか、GIF画像を作ってみたり。 鳴海 : そうしないと、とりあえず「何千文字の記事を書こう」って考えてしまう。でも、そうじゃない。それよりも、動画を撮影してVineやInstagramの埋め込みで表現してみるとか、どうやったら最も効率よく伝わりやすくなるかの方に、注力したいと思っています。 平野 : ちなみに、日本の「バズ」と海外の「バズ」に、違いはあると感じますか? 嘉島 : あまり変わらないかもしれません。日本の熊本地震の記事が海外でも読まれていたり、赤ちゃんのちぎりパンの記事が海外でバズっていたり。 [参考記事] : うおー! 触りてぇ!! #我が子の最強ちぎりパン画像 がTwitterで大流行 嘉島 : サルの撃退実習でおばあちゃんがエアガンを構えてる記事が、なぜかロシアでバズっているのですが、その反響がロシア語だから分からない(笑)。 嘉島 : 記者の人もBuzzFeedを通して世界中に発信できるので、知らない間に海外でバズっていることも。逆も然り。バズには国境を感じないですね。
平野 : お話を聞いていると「伝える」という目的のために、さまざまなツールを柔軟に駆使しているんだな、と感じました。そういえば、BuzzFeedは記事を構成していくシステム(CMS)が優れている、という記事を読んだことがあり、システム面でメリットを感じたことはありますか? 鳴海 : 例えば、有名かもしれないですが、タイトルやサムネイルを何通りか試して、最適なものが自動選別される機能。これとかはいい事例かもしれないですね。あとは、画像をBeforeとAfterでスライドできる機能、投票機能、クイズ機能などがあります。
嘉島 : 使いこなせていない機能がまだまだある。すべての機能を使いこなすのが目標かもしれない(笑)。以前クイズ記事を作ったことがあるんですが、画像を用意するのが大変で大変で…。 鳴海 : クイズって、問題を作る専門の人がいるくらい高度なものじゃないですか。だから、素人がちょうどいい難しさのものを作るのは大変ですね。簡単すぎてもダメだし、難しすぎてもダメ。 嘉島 : そのさじ加減が難しい! 鳴海 : ライターがクイズを作ってきたときには、何度も相談して難易度を調整しています。クイズを監修するのなんて、初めてですけどね(笑)。 平野 : 機能がたくさんあるので、記事の見せ方や伝え方の幅も広がる、ということなんですね。 嘉島 : そうですね、このニュースを読み手に刺さる形にしたいと相談すると「じゃあ、投票機能使って記事を作ってみたら?」とか。そういうアドバイスは、エディターからもよくあります。文章書くだけがライターではないんだなと。 鳴海 : 週に1回、定例ミーティングという形でチームで集まって、長期的な目標や他のメンバーの記事について感想を言い合っているんですが、同時にやっているのが、CMSの機能の使い方や個々人のスキルの共有です。 嘉島 : BuzzFeedには多くのCMSの機能があるため、知識の共有が必要不可欠。それに、自分が誰かに教えることで、自分が分からないときは誰かが教えてくれることも分かっているので、シェアの意識は強いですね。
平野 : 最後に、おふたりが一緒に働きたい人ってどんな人なのか気になったんですが、理想の人物像ってありますか? 鳴海 : そうですね…。自分で変化し続けられる人がいいですね。読者が変化することに合わせて、自分も変化していけるような。 平野 : スキル面だと、どういう強みがある人がいいでしょう? 嘉島 : なんでもいいと思います。スポーツに詳しいでもいいですし。マニアックなものを追求していたり持っていたり、一芸に秀でている人だとうれしいですね。 鳴海 : すごく絵がうまいとか、写真がうまいとか、料理がうまいとか。自分の中で得意分野を持っている人だと、仕事がしやすい環境だと思いますね。 バックグラウンドとか得意ジャンルが違うから、お互いに尊敬し合っている感じですね。だからこそ、どんどん適任な人に任せちゃうのかも。「これ詳しそうだからやれば?」とか。「これ好きでしょ?」とか。 平野 : そういえば、最初に、元保育士の方がいらっしゃるという話をされていましたが、BuzzFeedに入ってきて、パッと記事を作れるようになるんですか? 鳴海 : すぐにできるようになりますよ。難しい記事を書くことが目標なのではなく、読者に伝わる表現ができるようになることが目標なので。 なので、10年記者をやっている人でも、未経験者でも、「スマホで読まれる何か」を作ることにおいては、スタート地点はほぼ一緒です。日本語の表現の違いはあれど、どの写真がいいか、どのSNSの投稿を引用すると見られやすいかとか、そういうセンスを磨くことが求められます。むしろ、常に変化していかないと、誰だって置いてかれる環境ですから。 平野 : 同じことばかりしてると置いていかれちゃいそうですね。今日はすごく勉強になりました。ありがとうございました! 【⇒ BuzzFeed Japanの採用情報はこちら。】
個人的には、記事は「書く」のではなく「作る」ものだという言葉にハッとしました。いい文章を書けば自然と読まれるわけではなく、読者が読みやすいように様々な要素を柔軟に使って、記事を「作る」という配慮が重要なのだなと分かりました。 また、シェアされるバズ記事を作るためには、ライターひとりの主観だけでなく、客観的に判断してくれる編集部メンバーとの気軽なやり取りも大事だなと感じました。 最後にちょっと告知を…。 僕が(主にひとりで…)運営している、お菓子のこだわりをひとつひとつ取材しているwebメディア「cake.tokyo」では、一緒にあれやこれや話しながらメディアを大きくしていける編集メンバーを募集しています。僕ひとりしかいないので…、早く誰かと雑談しながら新しい企画や他メディアとのコラボをしていきたいです!連絡は、メール([email protected])もしくはTwitter(@yriica)でお願いします!後者の方が、スピードは早いと思います。 Text and Photo by 平野太一 (@yriica)
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