BAKE INC.(以下BAKEと記載)は2021年7月1日、コーポレートロゴとMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を刷新。新しいCI(コーポレートアイデンティティ)ともに、新たな一歩を踏み出します。
新しくなったコーポレートロゴとミッションがこちらです!
コーポレートロゴ
ミッション
THE BAKE MAGAZINE では今回のプロジェクトについて、3回に渡って記事を公開予定です。第1回は、BAKE 取締役副社長 近藤章由とCCO 柿﨑弓子のインタビューをお届けします。
コーポレートアイデンティティ(以下、CIと記載)という言葉は、普段ブランディングやデザインに関わっていない人には、少しイメージがしづらいと思います。詳しくご説明いただけますか?
柿﨑:ざっくり言って「会社らしさをつくる」ことだと思います。この「らしさ」について、社員としても、個人としても、お客さまとしても会社を「こういう人だな」と思い描けるようにすることがCIだと思っています。
「らしさ」の構造には3つ種類があって、理念(マインド)の部分とそれを体現する行動の部分、それを形にしたビジュアル(視覚化)があります。その3つが揃うと、「その会社らしいな」という部分が見えてくるという。
社員ひとりひとりが、なんとなくBAKEってこういう「らしさ」だなと… 思い描いていることが空気感としてはあると思うのですが、それはなんらかのかたちにしないとわからないですよね。そこで、今回は社員が思い描く「らしさ」をまとめて、それをBAKEという企業の「らしさ」として、マインド、行動、ビジュアルの部分を統一しました。このように、形にして見えるようにしていくことがCIだと思います。
例えば、好きだっていう感情だったり、単純に一緒にいて楽しいなって思う人とかいるじゃないですか。一緒にいてワクワクできるとか、そういう気持ちを抱いてもらうところまで持っていくのがCIの目的かな。
お客さまをはじめ、生産者さんや、周りの関係者のみなさんにまずは「らしさ」を知ってもらってもらうこと。そしてポジティブな感情を抱いてもらうこと。最終ゴールはそこですね。
CI 作りの一連のプロセスを教えていただけますか?
柿﨑:会社の経営体制の変更などもあり、数年前から「これから会社ってどうなっていくのかな?」という不安がBAKEメンバーの間には漂っていました。そこに、輪をかけるようにコロナが起きたことにより、分断された世界になって。「会社というくくりはどうすればいいんだろう?」という漠然とした不安がありました。経営層にもその感覚はあり、会社という今偶然にもここに集まったメンバーが乗っている「船」を、ひとりも欠けることなく舵を取るにはどういう風にまとめていくのが良いのかを考えました。
プロジェクト発足後、まずは店舗や工場、サポートセンター(本社)で働く全社員を対象にアンケートを取ることから始めました。大半のメンバーが回答してくれて、今会社に対して思っていることや、BAKEの好きなところ・直した方が良いところなど、率直で熱い回答が寄せられました。また、経営陣との度重なるディスカッションや、主要メンバーへの個別ヒアリングも行って、そこから自分たちのポジションを再確認しました。
いきなり、ロゴをデザインするのではなく、まずは「コトバ」ひいては「想い」をかたちにすることから始めたんですね。
柿﨑:冒頭でも3つの構造があると言いましたが、マインドの統一というのはすごく大事。そこがないと、やはり会社としての枠組みを為せなくなります。その上で、みんなの意識が同じ方向に向かえるよう整理していく必要があるので、まずは社内の情報を集め、言葉や行動の指標をまとめました。
今回はBAKE社外のコピーライターさんや webデザイナーさんと一緒にプロジェクトを進めたそうですね。
柿﨑:ひとりのお客さま、いちパートナーとして客観的に、フラットにBAKEを見てもらいたいという思いから、今回は社外のパートナーさんにもプロジェクトに入っていただきました。コピーライティングをお願いした原晋さんには、BAKEの現状を全部開示しました。
原さんには、BAKE CHEESE TART 5周年の時に映像をとっていただいたことがあり、その時は1つのプロダクトブランドの「らしさ」を掘り下げていただきました。そのベースもあったので、今回はBAKE INC.というコーポレートブランドを一緒に掘り下げて、言葉にしていくのにベストなパートナーさんだと思い、プロジェクトに入っていただきました。
コピーライターの原さんの客観的な視点も加わった上で、社員のワークショップを実施しました。社外の人が入ることによってフラットに言えることもあると思うので、思っていることや感じていることをストレートに出してもらうようメンバーには促しました。
これは原さんも仰っていたのですが、もっと不満が出てきてしまうのではないかと思ってたのですが、いい意味で予想に反して希望に満ちたワークショップでした。
参加してくれたメンバーの中には、ワークショップを通して「今回話したことで、ひとりじゃないなと思いました」「BAKEはまだまだいけるな」とポジティブな気持ちになってくれる人もいて、ワークショップ後に熱いメールのやりとりもありました。全てのワークショップに立ち合いましたが、その段階までは私はあまり意見は言わず、ただひたすらインプットに徹しました。
その後、いよいよ言葉を形にするプロセスに入りました。
ミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVVと表記)のワーディングには、2ヶ月ほどかかりました。基本的にこのあたりからデザインは並行して進めていましたが、ここまでのインプットと、初めて言葉という形になったものを総合してVI(ビジュアルアイデンティティ)というところのデザインに入ったイメージですね。
原さんからコピー案を複数いただいていましたが、最終的に今のコピーに決めた理由についてお伺いできますか?
柿﨑:「お菓子を、進化させる。」という強い言葉が、5年くらいBAKEを引っ張ってくれたので、これをミッションとして使い続けようかという議論もありました。ただ、色んな人と話す中で「お菓子を、進化させる。」とは、何かやるべきことがあっての「手段」であり、あくまで通過点で、「進化させた先に何があるんだっけ?」「何のために進化させるんだっけ?」というメッセージングが今までできていなかったんです。そこで、今までミッションに掲げていた「お菓子を、進化させる。」をビジョンとして残すことにして、ミッションを新たな言葉で設定することにしました。
ミッションを考えるのにあたっては、私自身もめちゃくちゃ迷いました。最終的に決め手になったのは「ちょっとふざけている方がBAKEらしい」ということ(笑)。途中、企業っぽい結構真面目な案もあったんですよね。真っ当すぎる言葉はちょっと違うかなと。かつ、「幸せにBAKE(バケ)る」の「BAKE」は、BAKEという会社名でしか言えないというところが一番の決め手になり、うちでしか言えない正にアイデンディティとして強いというところと、ちょっとふざけてる。大変なこともふわっと化けさせられるのがBAKEなのかなというところで決めました。
シカク 原 晋さんより 「しあわせに、BAKEる。」は2度目の提案のいちばん最後の案でした。「最もBAKEらしく、他企業には言えない‘幸せ’です。」と伝えました。このMISSIONは企業スローガンと同義だと思っています。だから、BAKEに関わるすべての人々に伝え、約束し、常にそばに置いて意識してほしいと思います。MISSIONは働かせて初めて実現する動力となるからです。 「BAKEはこのままずっと変わらないでほしい。」5周年Movieを作った時にインタビューしたお客様が言っていた、この言葉。それこそがみなさんが行ってきたことが、あらゆる人の「しあわせに、BAKEる。」証です。このMISSIONを選び、実践していこうと決断したBAKEはもう、幸せの一歩目を踏み出すことができたと思います。私も、これからもBAKEの皆さんとともに「しあわせに、BAKEる。」お手伝いをしたいと思います。 原 晋(はら すすむ) |
なぜ、CIとMVV刷新を今のタイミングで行うことにしたのでしょうか?
近藤:タイミングはずっとあったんです。BAKEという会社は元々、お菓子のスタートアップを掲げてきて、それに賛同したメンバーが集まってきたので、オリジナリティを持って何かをしたいという想いがありました。お菓子業界で「自分たちができることはいっぱいある」と思って動いてきたんですね。なので、他にないアプローチの仕方や、他ではやっていないことをやってきたという自負が強く、全てがお菓子の可能性を広げることにつながるんじゃないかと思ってやってきました。
そんな中、経営体制も大きく変わり、
BAKEは「想い」が先行する会社だったのに、その良さが少しずつ失われてきている。この状況は何とかしなくてはと思いました。
そこに、コロナによる苦しい時期が重なり、「自分たちは、なんのために働いているのかな?」ということをみんなが考えるようになり、「何がしたいんだっけ?」という自問自答が始まったように感じました。
会社は一つの個性、人間みたいなものなので、「自分たちは何がしたいんだっけ?」「何のためにやるんだっけ?」ということをちゃんと言葉にしようと。形にしよう。今こそが大事だね!ということでやりました。
これからは人材に投資して行きたいと考えています。これから先、今までの成功パターンが成功とも限らないし、色んなことが予期せず起こるはずです。そんな中「わからない霧の中に入って行く時」にみんなが同じベクトルを向いている、ということを言葉やデザインを通して実現したいと思い、BAKEの期初である7月に決めました。
あとは、柿﨑たちが「今やるべきです!」と言ったのも大きいですね。
柿﨑:やっぱり形になるまで、みんな現実感がないじゃないですか。だから、その無形のものに賭ける勇気ってすごいと思うんですよね!うちの会社は、割りと賭けがちですけどね(笑)。それを外向けのプロダクトブランドに対しては、心血を注いでやってきているんですけど、内向けのコーポレートに関しては結構放っていたかなって思うので今回そこをやろうと。
乗っている「船」側が不透明だと、乗っているもの自体もふらふらしちゃうから。土台の底上げがBAKE INC. のブランドに波及していくから、ということを訴え続けていました。
VI(ビジュアルアイデンティティ)には、「アイデンティティ」という言葉も含まれていますが、今回のVIに込めた「想い」を聞かせてください。
柿﨑:1年近く色んな人の話を聞いたり、言葉としてのMVVが作られてゆく中で、「会社はどうありたいかな?」というみんなの想いや自分の考えも織り交ぜながら考えました。会社がありたい姿というのはやはり土台というか、ベース、基礎の構造体の部分なのではないかという風に思いました。そこに肉付けされて、血と肉になるのは私たちの商品であり、ブランドであり、社員です。どんどん肉付けされていって、色んなキャラクターになっていくので、会社自体は無駄を削ぎ落とした、しっかり支えられる屋台骨にならなきゃいけないと思います。今回は、そのような「ちゃんと支えられる骨格」のイメージをロゴにしました。
「質実剛健」っていう言葉が私はすごく好きなのですが、怖そうだけど、「質実剛健」ってすごくカッコいいなと思っていて、会社はそうあって欲しいという想いを込めています。
ブランドカラーについては、プライマリーカラーはスミ1色ですが、セカンダリーのコーポレートを表すカラーとしては、光の三原色のRGBをベースにしたカラーを選んでいます。
レッド、ブルー、グリーンというのはそれぞれ混じり気のないピュアな個性のようです。BAKEの社員ってそれぞれみんな個性があって、でもその個性がわりと境界なく混ざり合うことで成り立っている会社だと思っていて、個性が混ざり合って無限に色ができるような会社であって欲しいなと思って、RGBをベースにしたカラーを設定しました。
最終的に2案残っていましたが、どのように絞り込んだのでしょうか?もう1案を見ましたが、ファッション性や愛嬌が感じられて異なる印象でした。
柿﨑:分かれましたね(笑)。さっき言った「会社は骨組み、屋台骨」というところがやはり、装飾性というか、残らなかった方の案はちょっと「好かれたい」、「よりキャッチーでありたい」みたいな旧ロゴが持っていたようなフレンドリーさ、愛らしさみたいなところを引き継いだ方がいいんじゃないかみたいな部分のある表現と、今回選んだ方は「質実剛健」ですよね。
コーポレートロゴの理想は、100年そのままであることだと思っています。100年くらい続いているロゴマークってめちゃくちゃカッコいいですよね。少しずつアップデートはすると思いますが、ずっと変わらない普遍的なものを目指したいなと思い今回のロゴに決まりました。
次に、ロゴから発展したサポートエレメントについてお伺いできますか?
柿﨑:三角形をベースにしたパターンは、ロゴのもう一案の方での装飾的な要素として作りました。ロゴから派生するエレメントは、RGBがわかりやすく構築されたイメージにしようと考えていましたが、今回MVVを体現するのは三角形をベースにしたパターンだなという強いメンバーの想いと共感がありました。
社員が行動するための共通の価値観を3つに絞り込んだので、3という要素が非常に重要になってきました。
みんながその3つを体現したらお菓子は進化するし、進化したお菓子は大切な人たちの幸せになるよ、というのが私たちのストーリーなので、この3から派生する形というのはサポートエレメントとして、色んなところに使っていこうという話しになりました。これを今回のデザイン、よりシンプルな形にも使えるような展開としてブラッシュアップして、1案、2案の一部がゴールしたような形になりました。
今回のMISSION・VISION・VALUEとVIの刷新は、あくまでスタートラインですよね。どのような未来が実現していたら、「しあわせに、BAKEる。」というミッションに近づいていると言えそうですか?
近藤:このMVV刷新を行い、会社の皆とこれらを共有することにすごく意味があります。この想いさえ意識してもらうことができればひとつの成功だなと思っています。今やっていることがちょっとした幸せに通ずるという意識を持つことはとても大切だと感じています。
僕らが実現したい未来については、「しあわせに、BAKEる。」まさにその言葉のとおりだと思っています。お菓子が様々なシーンで、楽しい、嬉しい、幸せというポジティブ感情にBAKEる。辛いときや苦しいときも、BAKEのお菓子が元気を届けることができる。そんな存在でありたいと考えています。
お菓子を作るとき、お店に並べるとき、お客様へと届けるとき。美味しいはもちろんのこと、お客様へお菓子を届けるプロセスも含めて、アップデートしていきたいと思っています。
会社としては、環境に配慮したSDGsの取り組みや、保存食・非常食、アレルギーに配慮した食を、お菓子の切り口から考えてみたいと考えています。
柿﨑:まだアップデートされた状態にないものをBAKEで進化させられたらいいね、というような会話がこのMVVプロジェクトの途中でもありました。例えば、贈答用という枠の中に今までないものを進化させたら、すごくもらって嬉しいものになるというような。
例えばさっきも保存食が出ましたが、まだお菓子というくくりでは考えていなかったものを進化させられたら、きっとそれを幸せと感じたり考えたりもしていなかった世界にBAKEれるかもねって話が印象的で、「たしかになぁ」と思いました。
日本は四季折々の歳時があるので、贈答文化も発達していますが、その枠を超えて「もらう」「あげる」ことってありそうだなと思って。それがなんなのかはこれからですけど、進化させたらそうなれるかもっていうところが、なったらいいなという未来ですね。
3年後、5年後のBAKE INC. について、「まず、自分がやる」と考えていることはありますか。
近藤:保存食・非常食、アレルギーに対応したお菓子!「しあわせに、BAKEる」に挑戦し続けたいです!
柿﨑さんはいかがでしょうか?
柿﨑:私はもうずっと言ってるけど、宇宙食。宇宙が好きなので。自分が作ったものを持って宇宙に飛ぶって夢ありすぎ!スター・ウォーズに出てくるようなごはんとかもすごい気になるんですけど、このあいだ「からあげクン」が宇宙食になったというニュースを見て。お菓子でもやりたいと思いました!
飛行士のトレーニングもほんとハードなので、極限状態に追い込まれた時の状況で平常心を保っていられるかのテストがあるんですよね。そんな中、お菓子はその手助けができるんじゃないかと信じているので、それを提供できたらいいなと思いました。
あとは、宇宙食を開発することで得られる技術革新ってめちゃくちゃあると思うんですよね!ぜひやりたいです。
最後に、BAKE INC. がこれから目指すところについて、大切にしたいことについてお伺いできますか。
近藤:「BAKEらしさ」を守っていきたいですね。
「BAKEっぽいね」とは、僕の中ではオーナーシップ、能動的に動くことで、そこがBAKEの非常に面白いところと思っています。実際、僕は入社して5年で色んなことをやらせてもらって、色んな人に助けてもらいました。
この自分の思っていることを形にしたり、突き進めていく経験を積むと、圧倒的にまた目線が上がるんですよ。BAKEの場合、ブランドを作るとなると、ブランド・事業の多角的な目線で突き進めていかなければならない。そうすると圧倒的に視座が上がるんですね。この経験ができるチャンスが誰にでもある。様々な業種や個性の集合体が、それぞれの解釈でお菓子のことを本気で考えている。それが僕は「BAKEっぽいね」と言われることにつながるだろうなと思うし、そんな会社を創り続けていきたいと思っています。
ブランド作りの様々なプロセスをみんなで進めるというのも、BAKEの特徴かな。例えば、店舗のデザイン、オペレーション、ポスター1つとっても、職種を問わず、意見をぶつけ合う。年次や役職も関係なくみんなが集まって「こんなこともみんなで話すんですか?」ということをやっていて。そういうところは必ず失わずに守っていきたいなと。プロダクトにしてもデザインにしても、店舗にしても、様々な顧客接点にこだわり、今までのお菓子業界とは違う解釈でブランドを作ってきたと自負しています。もちろん失敗したこともたくさんありました。
これからも「BAKEらしさ」を持って、挑戦していきたいですね!
「しあわせに、BAKEる」ために自分たちや会社がすべきこと、在りたい姿。
今回のMVVとCIの刷新には、社員ひとりひとりが、「想いをもつ」きっかけになってほしいです。