日本初のフードシェアリングサービス「TABETE」が切り拓く、サステナブルな食の未来とは

2020.12.03

年末年始は、例年、飲み会や贈答などで「食」業界全体が盛り上がる時期。しかし、今年はコロナ禍で特に需要予測が難しく、頭を悩ませているお店や企業も多いのではないでしょうか。
売り切れによる機会損失も防ぎたいけれど、売れ残りによる食品廃棄には罪悪感もある・・・
そんな悩みや社会課題を解決しようと取り組んでいるのが、フードロスを削減する日本最大級のフードシェアリングサービス「TABETE」です。

今回のTHE BAKE MAGAZINEでは、「TABETE」を運営する株式会社コークッキング代表取締役CEOの川越一磨さん(写真左)に、サステナブルな食の未来についてお話を伺います。(聞き手:株式会社BAKE 取締役副社長 近藤章由、写真右)

 

日本初、食品ロスに特化した「TABETE」は現代版のおすそわけ

近藤:「TABETE」というネーミング、いいですね!「食べてー!」という気持ちが伝わって。

川越:ありがとうございます!
「TABETE」は食品ロスが発生しそうな飲食店や惣菜店と、ユーザー(食べ手)をマッチングするフードシェアリングサービス。あらかじめアプリで予約した“食べ手”が店舗に行き、余ってしまった食品を“レスキュー”できる仕組みです。現在(2020年11月)、全国約1,400店舗と約32万人のユーザーにご登録いただいています。

近藤:ユーザー側にもメリットがある?

川越:TABETEでは、お店側に助けてくれてありがとう料を割引してもらっています。食べ手(ユーザー)は、「お得で嬉しい」だけではなくレスキューによって「良いことをした」という満足感も得られます。
ユーザーメリットとしてお得感は必要ですが、安売りだけのサービスにしては駄目。TABETEは、現代版の“おすそわけ”なんですよね。

近藤:なるほど!お店にもユーザーにも地球にも御社にも優しい。良いサービスですね!「TABETE」を立ち上げたきっかけは?

川越:学生時代から料理や店舗運営など飲食業に携わる中で、毎日のように食べ残しや売れ残った食品が捨てられるのを目の当たりにしてきたんです。これは何とかしなきゃと思って。
料理をツールに社会課題を解決しようと、「ディスコスープ」という規格外野菜でスープを作って食べるエンターテイメント型のフードロス啓蒙プロジェクトに携わったりしてきました。
でも、参加者にしか伝わらない。もっと多くの人に伝えていかないと、社会は変えられない。そう思っていた頃、デンマークの「Too Good To Go」という食品ロス削減のサービスがあるのを知り、「これは日本でもできるんじゃないか」と。

2016年4月に行われた「ディスコスープ」イベントの様子 ©Rick Wu

近藤:食の業界ではフードロスは公にしづらい問題です。しかも「TABETE」は日本初のサービス。理解を得るのは大変だったのでは?

川越:そうですね。初めは、飛び込みで飲食店をまわったり電話で営業したり。私自身に飲食業界の経験があったので、お話はしやすかったですね。それでも、「値引きはブランドイメージと合わないから」と断られることもしばしば。
伝え続けて、共感してくれる人たちを巻き込んで、「何かやらなきゃヤバい」と思わせるムードをつくる。1店舗1店舗、1件1件の事例を積み重ねながら、地道な説得と継続あるのみですね。

幸い、2017年9月にβ版をローンチした後、「ガイアの夜明け」をはじめ様々なマスメディアで取り上げていただいて、ユーザーの登録も増えました。2018年4月の正式版サービス開始時には、登録店舗数100店舗、ユーザー数17,000人まで増加。世の中的な風向きが徐々に変わっていきました。

近藤:素晴らしい取り組みですね!地道な啓蒙活動に加えて、「SDGs」(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)による社会的な問題意識の高まりも後押ししている感じですね。

川越:はい。2020年の今、「食品ロスなんて関係ない」と声をあげる人はいません。3年間の活動を通して、社会の機運とリンクさせながら、潜在的な課題を顕在化できたんじゃないかなと。
まさにスタートアップ的なアプローチですよね。TABETEは、今後エコフレンドリーなブランドとして認知される時代になっていくと思います。

 

毎日おにぎりを1人1個捨てている!日本のフードロスの現状

近藤:日本のフードロスは世界的に見ても多いんですよね。

川越世界4位の多さです。
日本では、食べ残しや売れ残り、期限が近いなど、さまざまな理由でまだ食べられる食品が日々捨てられています。その量、なんと年間612万トン!(平成29年度 農林水産省及び環境省推計)国民全員で毎日おにぎり1個を捨てている計算になるんです。
一方で食料自給率はカロリーベースで4割を切っていて、残り年間約5,000万トンを海外からの輸入に頼っています。

近藤:私たちは、大量に輸入して大量に廃棄しているんですね。

川越:はい。少子高齢化で日本の経済は縮小していますが、アフリカや東南アジアなどでは人口が増え経済も成長している。30年後の日本が、今のように食料を輸入し続けられるかどうか疑問です。自分の子供たち、孫たちが、今と同じような食生活を送れないかもしれないんですよ。
それに、輸出入の際に排出されるCO2といったフードマイレージを踏まえても合理的じゃない。

近藤:たしかに。フードロスが多くなる原因はどこにあるのでしょうか。

川越:ひとつは食品業界のサプライチェーンの長さです。消費者に届けるまでに加工業者や卸業者といった中間業者が増えると、比例してロスが増えてしまいます。
ちなみに、約612万トンのなかには畑で規格外として廃棄されるものは含まれません。それを含むと2,000万トンにまで膨れ上がります。

効率的な輸送のためサイズや形の「規格」が必要になる。 © nrd on Unsplash

近藤:フードロス削減のための法整備は進んでいるのでしょうか。

川越:日本では、2019年に「食品ロスの削減の推進に関する法律(略称 食品ロス削減推進法)」が制定されました。これは、フランスで2016年に施行された「食品廃棄禁止法」を参考に作られたものです。
フランスの大型スーパーマーケットでは賞味期限が切れた食品の廃棄が禁じられています。慈善団体への寄付や家畜の飼料への転用などが義務づけられ、違反すると罰金が徴収されたりと、かなり進んでいますね。

近藤:欧州ほどではないものの、日本でも取り組みが始まっているのですね。
製菓業界では、3分の1ルールがフードロス削減を妨げていると感じます。(3分の1ルールとは、製造日から賞味期限までの合計日数の3分の1を経過した日程までを納品可能な日とし、3分の2を経過した日程までを販売可能な日(販売期限)とする商慣習的なルール)

川越:食品業界ならではの慣習ですね。海外と比較しても日本は厳しいと聞きます。メーカーや問屋から出るロスは大きいので、改善に向けた取り組みが必要になりますね。

近藤:はい。業界ルールもだんだんと緩和する動きが出ているようですが、やはり作りすぎが問題なのでしょうか。

川越:「作る量を減らせばいいじゃん」という発生抑制の議論では、現状では不幸が起こってしまう。
廃棄前提の大量生産は良くないですが、売り物がない状態ではお店が潰れてしまうし、出てしまったものを何とかするしかない。

近藤:そこで「TABETE」が選択肢になるのですね。

川越:はい。両輪をうまく回しつつ、最適化する仕組みが必要です。

 

洋菓子業界と、サステナブルな食の未来

近藤:今後の取り組みや展望について教えてください。

川越:TABETEがやっているのは、お店とユーザーの善意のマッチング。これは、ある意味コミュニティーと言えます。まだ仮説段階ですが、TABETEはもっとインタラクティブなコミュニケーションができるメディアプラットフォームになれる可能性があります。

また、中食のビジネスモデルは立地条件が強すぎて、中食の持続可能性も危ういと感じています。既存のサービスでも中食のリストを持っているところは少ないはず。TABETEをきっかけに、フードロス削減の他にも色々なアクションを起こせるサービスに昇華できるじゃないかと思っています。

あとは、フードデリバリーにはない価値を探っていきたいですね。ユーザーが店舗で受け取るのは一見して不便そうですが、行き過ぎた便利さの一歩手前にちょっと違う世界が見えそうな感覚はあります。

近藤:ある意味、昭和のコミュニケーションですね。最後に、川越さんが考える、サスティナブルな食の未来について教えてください。

川越:美味しいものを、今後も食べ続けられることでしょうか。
これは極論ですが、日本は海に囲まれた島国で、四季があり恵まれた土地があります。ロスを減らせば、自給率が低いなりにもエコシステムを回しながら十分豊かに暮らせるのではないでしょうか。

近藤:本当にそうですね。私は、街のケーキ屋さんやフレッシュな美味しさをどう残していけるかが課題だと思っています。多くの洋菓子店では、ショーケースにたくさんの種類の華やかなケーキを並べています。お客さまもたくさんの中から選ぶのを楽しみにしている。しかし、それではどうしてもロスが出てしまうんですよ。

BAKEの場合は、敢えて商品数を絞り込むことで、その課題をクリアしてきたわけですが、それでも季節ごとに新しい商品を出したりして、喜んでもらおうとするとロスも発生しやすくなる。

食育の観点でも、季節感のあるケーキや、焼きたて・出来たての美味しさを残していきたいし、新しい商品にロスを心配することなくチャレンジしていきたい!そう考えると、TABETEの存在はありがたいですね!

川越:TABTEのなかでもスイーツはマッチング率が高いカテゴリーです。ユーザーの7割超が30~40代の女性ですから、スイーツやパンとは相性がいいんでしょうね。BAKEさんのスイーツも、ユーザーさんに喜んでもらえると思います!

近藤:ありがとうございます。BAKEのお店も、地域のお客様なしには存続できません。レスキューという形で、お客様との繋がりがより強固になるのは魅力的です。

川越:生産量を減らすと売上が立たず、お店や生産者がつぶれることもあります。現時点では、最後に「TABETE」が助けてくれる!という気持ちで、新商品に挑戦するなど、事業の存続をしてほしいですね。

近藤:BAKEもまだまだスタートアップ。製菓業界の未来に向けて積極的に取り組んでいきたいです。川越さん、本日はありがとうございました!

 

株式会社コークッキング 代表取締役CEO 川越 一磨(かわごえ かずま)
1991年生まれ。2014年慶應義塾大学総合政策学部卒業後、株式会社サッポロライオンで店舗運営の経験を積む。退職後、2015年7月富士吉田に移住。空き家をリノベーションしたコミュニティカフェやこども食堂の立ち上げなどを行う。同年12月に株式会社コークッキングを創業。2017年日本初のフードロスに特化したシェアリングサービス「TABETE」を事業化。
2016年5月よりフードロスの啓蒙活動「Disco Soup」の運営に従事。2019年4月には一般社団法人日本スローフード協会の理事に就任。SDGs関連トピックやフードビジネスに関する講演なども積極的に行っている。

※ 写真撮影時のみマスクを外し撮影させていただきました。

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