主食が変われば健康が変わる。完全栄養食ベースフードが取り組む作り方と届け方の再発明

2019.12.23

「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」

このミッションを掲げ、世界初となる完全栄養の主食の開発や販売に挑む企業があります。

それが、ベースフードです。

誰も取り組んだことのない、“主食”のイノベーション。どのように商品開発に取り組み、ファンを広げてきたのか。

きっと、ジャンルは違えど、BAKE Inc. が学べることもあるはず。そう考えたTHE BAKE MAGAZINEは、ベースフード代表の橋本舜さんにお話を伺いました。

前人未到だからこそ、自分の手で作る。自宅キッチンから生まれた完全栄養食

今日はよろしくお願いします。ベースフードのお話を伺うのを楽しみにしてきました。

橋本:ありがとうございます。まず、ベースフードについて簡単に紹介しますね。僕たちは、完全栄養食のブランド「BASE FOOD」を展開しています。現在、提供しているのは、完全栄養ヌードル「BASE NOODLE」と完全栄養パン「BASE BREAD」です。

この商品たちを、自社のECサイトを使って、サブスクリプション(定期購入)方式で販売しています。2017年2月22日に最初の商品を発売開始し、今年9月には累計販売食数が100万食を突破しました。50万食を突破したのが2019年5月なので、販売食数の伸びは加速しています。

BASE BREAD
BASE NOODLE

すごいですね!「完全栄養」という領域にはどういった経緯で着目されたのでしょうか。

橋本:僕が完全栄養食を開発しようと考えたのは、ヘルスケア業界に対して課題意識があったからです。ヘルスケア業界は、「健康意識が高い人をより健康にしよう」という意識が強いように感じていました。

すでに意識が高い人は、自制もするし、健康になるための投資も惜しみません。ただ、当時の自分も含めて、日々忙しく働いている人も多く、健康になるために十分な時間やお金を使えるわけではありません。

そうすると、なかなか健康になることは難しい。とはいえ、健康をおろそかにしていると、いずれ「社会保障費の増大」という形で国民全員に降りかかってくる。この社会全体に関わる課題をなんとかしたい、という気持ちがスタートでした。

なるほど。栄養を補完する食品というと、サプリメントや補助食品、ドリンクなどを思い浮かべる人が多いと思います。なぜ、橋本さんは“主食”に着目したんですか?

橋本:「今の生活リズムを変えずに、多くの人が健康になるためにはどうすればいいのか?」を考えた結果、たどり着いたのが完全栄養の「主食」でした。

商品開発を始めようとした時点で、完全栄養食というジャンルはすでに存在していましたが、その多くはドリンクタイプ。栄養が摂取できたとしても、現在の習慣に組み込まれていないものを新たに習慣化するというのはハードルが高い。

誰もが口にする“主食”を変えて、主食を食べて健康になれれば、一人ひとりが手間をかけずに健康になれると考えたんです。

たしかに、必要な栄養素が主食に組み込まれていれば、手軽にバランスの良い食事ができるし、習慣にもしやすそうですね。商品開発はどうやって?

橋本:もともと僕は食品業界とは別の仕事をしていて、食の知識はゼロ。まずは、栄養士に相談をして、栄養計算の方法を学びました。

近所のスーパーで主食の原材料になりそうな乾燥食品を買い込んで、エクセルで栄養計算、相性の良さそうな材料を組み合わせて、自宅のキッチンで開発していました。

え、自宅のキッチン……ですか?

橋本:はい。当時は会社員だったので、週末の空き時間を使って黙々と作り続けました。商品として完成するまで、1年ほどかかりましたね。

試作品は全て、平日の朝ごはんになっていました(笑)。完成前の商品でも、栄養素は揃っていたので、テストにも、自分の健康にもよかったんです。自分で作って、自分で食べて、というのを続けていて、ある日変化がありました。

変化というのは?

橋本:週末に仕事が入って、商品開発ができないときがありました。そうすると、その週の朝ごはんに食べていたものがなくなり、「代わりに何を食べよう?」と悩むことになったんです。栄養に対する知識は身についていたので、適当な食事には抵抗がある。でも、代替案はない状態。完全栄養食の主食が提供できたら、人をもっと楽に健康にできそうだなと実感が持てたんです。

この経験を通して、「自分が開発している商品は、人に必要とされるものかもしれない」と思い、本格的な展開を決めました。会社員時代は新規事業やスタートアップ支援を担当していて、さまざまなサービスの開発に携わりました。「本当に必要とされるサービス」は意外と少ないと感じていたんです。「人に必要としてもらえそうだ」と自分が思えたのは、さらなる挑戦に一歩踏み出す上で大きかったですね。

それは大きな変化ですね。新しい商品を自ら開発するとなると、かなりの苦労だったかと思いますが、自ら開発をした理由はどういったものだったのでしょうか?

橋本:完全栄養の主食は、誰も作ったことがなく、周囲からは「実現は不可能」と言われていました。いわば、前人未到の挑戦。だからこそ、自分が先駆者として取り組むしかないと思ったんです。

それに、事業のコアとなる部分は人に委ねるのではなく、自分の手で開発したいと考えていました。私自身が開発の過程を把握していないと、いずれ開発が行き詰まった時に対策を立てにくくなる。それだけは避けたかったんです。

商品の完成後は、クラウドファンディングサイト「Makuake」で資金を集めながら商品を買ってくれるお客様を募りました。最初は、Amazonを使って商品を販売し、現在は自社のECで商品を販売しています。

チームの目が「商品力の向上」に向くビジネスモデル

試行錯誤を経て完成した「BASE FOOD」は、自社ECサイトを使って販売されています。ECサイトを選んだ理由はなぜだったのでしょう。

橋本:資金などの関係で、店舗を構えられなかったんです。ベースフードは出資を受けて事業を展開していて、予算が少ない上、短期間で事業を成長させる必要がありました。店舗開発にリソースを投入すると、かかるコストも大きいですし、時間もかかります。そこで、なるべくコストがかからない自社のECサイトを活用しました。

ECサイトを選ばざるをえなかったところからスタートしているんですね。

橋本:そうなんです。商品の提供の仕方は常に試行錯誤しています。D2Cと呼ばれる商品を直接顧客に販売する方法もそうですし、「BASE FOOD継続コース」と呼ばれる月額課金プランも、試行錯誤の中から生まれたものです。だが、結果的にこのビジネスモデルにしてよかったと今は考えています。

それはなぜなのでしょうか?

橋本:D2Cとサブスクリプションというビジネスモデルが、僕たちの商品力を伸ばすことに繋がっているからです。D2Cやサブスクリプションは、顧客の反応がダイレクトに現れます。直接販売であれば、小売店の営業力に頼れません。継続して購入していただくためには、お客様の満足度が重要です。商品力と、顧客満足度を考えざるをえないんです。

直接、お客様とコミュニケーションするので声を拾いやすい。アンケートや電話、対面でのインタビューのほか、試食会などでお客様の声を取り入れています。お客様からの声は、Slackを通して社員全員が見られるようになっています。そうすると、チームは「もっと良い商品を作ろう!」となる。D2Cかつ、サブスクリプションのモデルだと、チーム全体の目が「良い商品を作ること」に向きやすくなるんです。

ベースフードのユーザーイベントの様子

どんなふうにお客様の声を商品に反映させていますか?

橋本:例えば、BASE BREADには、最初冷凍保存しかできず、「冷凍庫に入りきらない」「冷凍配送が受け取りにくい」といった声が挙がっていました。そこで、常温で長持ちするパンの開発を決意。研究を重ね、合成保存料を使わなくても、常温で1カ月間の保存が可能になりました。この他にも、商品の味や届け方など、ほぼ毎月改善をして、お客様に報告しています。

お客さんの声をダイレクトに聞けるからこそ、迅速な改善に繋がっているんですね。

ローカライズするポイントを間違えてはいけない

商品を開発し、提供の仕方もできてきて、次はどのようなことに挑戦しているのでしょうか。

橋本:今年の9月から「BASE NOODLE」の北米展開を始めました。期間限定で現地のラーメン店ともコラボレーションをした際は、3時間待ちの行列ができるなど、反響は上々です。

北米のラーメン屋とのコラボレーション

それは、かなり好評ですね!海外展開を始めたのはどういった理由からだったのでしょうか。

橋本:海外、特に北米においては、保険料が高いので病気になると大変ですし、ビジネスパーソンであれば健康管理が仕事の評価にも影響します。毎日摂取すべき栄養を考えて、健康管理をすることは、ビジネスパーソンとして当然なんです。

北米と比較して日本は保険が充実しており、健康管理が仕事の評価にもつながりにくいので、健康になろうとする理由が生まれにくいのですが、北米は違います。健康に対する意識の高い北米であれば、BASE FOODのニーズもあるはずだと考え、展開を決めました。

海外に展開する際に心がけたことはありますか?

橋本:国内の商品と同じ、高い品質で届ける。これを大切にしました。BAKEさんがサンフランシスコに展開しているBAKE CHEESE TARTも、その点は徹底されていますよね。

BASE NOODLEの北米販売を始めたばかりのとき、麺が切れやすかったんです。現地で採用した社員には、「アメリカはショートパスタもたくさんあるから、このままでも大丈夫」と言われました。

でも、僕は日本と同じクオリティのものと提供したいと思い、何度も工場に足を運んで改良しました。結果、麺は切れにくくなり、お客様の評価も上がって、納入先のレストランも増えました。

品質を追求する姿勢が、結果に伝わったんですね。

橋本:日本の食品は、世界基準で見ても品質が高い。それに、現地の人たちは文化も含めて、日本で展開しているそのままの味や品質を求めていると思うんです。妥協せずに日本と同じものを販売する。この気づきは非常に大きかったです。

逆に、大変なことはありましたか?

橋本:マーケティングは難しいですね。北米は、国籍・人種・宗教など多様なバックグラウンドの人たちがいます。日本と比べて、ターゲティングが難しい。どの層に、どう受けるのか、予測不可能でした。

実際に販売してみると、「テック系の企業で働くインド系アメリカ人」に購入者が多いことがわかりました。テック系の人は、効率を重視する人が多く、食事は短時間で済ませたいと考えている。インド系の人は、宗教の関係でベジタリアンが多い。そのため、多く買われたのだと分析しています。

商品ではなくマーケティングこそ、ローカライズするべきだと考えています。多様なバックグラウンドを持つ現地メンバーを採用して、マーケティングは完全に任せています。

私たちの声が届く範囲には限界がある。自社だけではなく、他社の力も借りて共に成長する

ミッションである「主食をイノベーションし、健康を当たり前に」を叶えるために、今後はどんな展開を考えていますか?

橋本:今までは、私たちのミッションを伝えてお客様を増やし、その声をもとに商品を磨いてきました。「健康を当たり前に」するためには、健康や栄養に関してさらに広く伝える必要があると考えています。そのために、栄養士さんと一緒に活動をしたり、BAKEさんのように他業種の企業とコラボレーションしたりして、健康が当たり前な世の中を作るために、周囲と力を合わせながらBASE FOODを広げていきたいですね。

ロジカルな思考で新たなマーケットに挑戦するBASE FOOD。お菓子というエモーショナルな商品に向き合うBAKE Inc.。対局にあるように見えながらも、美味しさや品質へのこだわり、ブランドやマーケティングの捉え方など共通する部分も多くありました。橋本さん、ありがとうございました。

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