<2016.4.15 追記あり> こんにちは。THE BAKE MAGAZINE編集長の塩谷です。先日、BAKEのオンライン事業部長である阿座上が、ニューズ・ツー・ユーさんのセミナーに登壇させていただきました。テーマは「ネットPR」ということで、「ネットで話題になって、ワイドショーで取り上げられて、店舗に長蛇の列が出来るまで…」というお話をさせていただいたのです。 が! このTHE BAKE MAGAZINEで、私たちBAKEのことは既にたくさんお伝えしてきました。 もう1組、ご登壇されていた「近畿大学」さんのネットPR戦略が大学の常識を超えすぎたものだったので、ここでレポートさせていただくことにします。
近畿大学、ご存知でしょうか?私は3年半前まで大阪に住んでいたこともあり、よく知っているのですが…関西の大学といえば、 「京大・阪大・神大」←関西の3強!国公立チーム 京都大学、大阪大学、神戸大学のことですね。 「関・関・同・立」←強い私大チーム これはもちろん、関西学院大学、関西大学、同志社大学、立命館大学のことです。 ここまでは関東・全国の方もご存知なのではないでしょうか?しかし、 「産・近・甲・龍」というチームがあります。 京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学。 ここにくると、関西圏以外で知名度がかなり落ちてしまうという壁…。 そんな現状に、近畿大学の広報部・世耕石弘(せこう いしひろ)さんはこう主張します。 「これは私たちが決めてるんちゃいますねん。東進ハイスクールがバーン!!!! ゆうてますねん!」 た、確かに…… 東進ハイスクールだけに限ったことではないですが、大学受験戦線においてこの枠組みは、あまりに不動。 「でもこの受験速報の枠、一枠だけあまってますやろ?そこにはね」 「新年度入学受付中、と書くんですわ!これくらい、大学業界に入れ替え戦は、ないんです。随分前に遊び半分でつけられた語呂が、いつまでも使われ続けます。それが僕たちの現実です。」 これまで私自身当たり前に「関関同立」と口にしていましたが、改めて考えると、驚くべきことでした。大学のランク付けという不動な評価の下され方。ビジネスシーンでは、こんなチーム分けなんてありえないのに…。 そんな中、2014年に大逆転が起こりました。 それまで4年連続トップだった明治大学を抜いて、2位の早稲田大学も抜いて、なんと近畿大学は志望者数にて全国1位に躍り出たのです。2012年は8位だったというから、その躍進ぶりは驚くべきもの。しかも関西の大学は、そのあと6位の立命館大学まで1校もありません。
「既存メディアは、国立・早慶・関関同立 至上主義です。そこを打破するためには、広報しかない。それもお金のかかる方法はできへん。じゃあ、僕らにはネット広報しかない。インターネットを味方にして、恐ろしいほどに情報発信をするしかないんです。 近畿大学は、卒業生総数48万人の総合大学です。お金はなくても、ネタはいくらでもある。洒落たプライドはないから、なんでも出来ます。」 そんな近畿大学さんが大きく話題となったのは、「出願の完全ネット化」。それまで「当たり前」だった紙の願書を廃止することになりました。 それまでは13万部の願書を印刷しつつも、そのうち3万部は人の手に渡ることもなく廃棄されていました。もったいない。 そこで登場したネーミングが「ネット出願」ではなく「エコ出願」。 「かみ頼みの受験は、もうやめだ。」というユニークなコピーも登場。この新しい取り組みを、関西の駅ナカ広告で告知します。
「近大へは願書請求しないでください。」 この広告はネットで話題になり、さらに 「お父さん。PCのアヤしい履歴、消しといてください。」 …この車内吊りは、Twitterでも大変よく拡散されたとのことです。 ただもちろん「PCがない家庭はどうするんだ?」「紙の出願を廃止するなんて、信じられない!」「入学希望者が減るのではないか?」と懸念する声は、たくさん生まれていたそう。 そんな中で、以前鉄道会社に勤めていたという世耕さんは言います。「インターネットで電車の遅延情報を流そうとしたときにも、周りからは猛反対されました。でも、1年後にはそれがあたり前になってる。ここでも同じことやと思ったんです。」 また、他の大学が「グローバル化」に注力する中で、「英語バリバリの子より、ネットサクサクの子」を輩出していくほうが良い、という私見も。 2015年度、信州大学の学長がスマートフォン依存になっている若者に対して「スマホやめますか、それとも信大生やめますか」と入学式でスピーチをされていましたが、世耕さん曰く「インターネット使える子以外は、お断り」ということで、学歴よりもモラルよりも、「インターネットリテラシー」を足切り要素としているのが、近畿大学。もちろん批判は多いと思います。 でも、それはすごく、今の時代らしい方法だと感じました。 そして見事、入学希望者が13万人にまで増加しただけではなく、「ネット出願のパイオニア校」として多くのメディアに取り上げることに。 これだけでもスゴい偉業ですが、近大のIT化は入学後も止まりません。例えば、「シラバスの印刷廃止・ネット販売化」。大学生活を過ごした人にとって、全講義が記載された冊子である「シラバス」という響きは懐かしいですよね…。すごーく重いし、あれを受け取り損ねると、取るべき講義がわからなくて大変な思いをするんですよね…。(怠慢により大変な思いをしました、私は…。) ただそれを完全にネットに移行。必要があれば、プリントオンデマンドで必要なぶんだけ印刷できるような仕組みに。これなら「シラバスもらい忘れたー!」という悪夢も防げるもの。 さらに「教科書をAmazonで公式販売」までやっているから驚き。実は、1人の学生が大学時代で購入する教科書の合計額はおよそ5万円。そして、近大生は3万人。そこだけでもう、10億円のマーケットが生まれているので、Amazonさんにとっても、教科書を並ばずに買える学生にとっても、両者ハッピーな仕組みのようです。 ただ世耕さん曰く「関西の大学生って2割くらいしかクレジットカードもってへんのです。せやから、そっちの普及からやらんとなぁ…」と、もはや大学広報なのかカード会社の営業なのかわからない発言まで。でも、新しい土壌を作っていくことって、きっとそういう想定外の課題を解決していくことの連続でもあるのか、と考えさせられました。 <2016/4/15 追記> なんと!その後、本当に学生さんが使えるVISA付きのプリペイドカードを発行!!!!それも日本初です! →近畿大学、日本初のプリペイド機能つき学生証『近畿大学学生証一体型VISAプリペイド』を発行! いやはやすごい、速い、革命的です。大変びっくりしましたので追記させていただきました。 ============== そんな近畿大学さんのかかげるミッションは「固定概念を、ぶっ壊す。」
「巷では、『これ、関関同立をぶっ壊すって意味なんでしょ?』と言われてますけどね、僕はそんなこと言うてませんよ。」と仰っていましたが…。突っ込みどころ満載のポスターは、やはりインターネットでものすごく突っ込まれ、拡散されました。 しかし何よりも突っ込みたいのは、この「噴火口から突き出たマグロ」です。 近畿大学さん、実はそれまで難しいとされていた「マグロの完全養殖」を、2002年に成功されています。エコ出願で話題になる前は、「マグロといえば近大、近大といえばマグロ」というほどでした。そして大阪・梅田のグランフロント内、東京・銀座の水産研究所内に「近畿大学水産研究所」を設けています。教育機関っぽい名前が付いていますが、完全に…
居 酒 屋 です。 この様子に「大学がマグロの居酒屋をやっている」「あの大学はマグロ屋だ」「マグロ大学wwww」とネットでは様々な意見が飛び交いましたが、そこで挫ける近畿大学さんではありません。 「マグロ大学って言うてるヤツ、誰や?」 -1月3日から一般入試(前期)出願受付開始 信じられない、願書受付ポスターを展開。打たれても打たれても、それをネタに立ち上がる。それがナニワのマンモス校、近畿大学です。(入学志望者数)日本一です! こんなにエネルギーある大学には、エネルギーのある若者が集まります。タレントの赤井英和さんや、つんく♂さん、関西で絶大な人気のDJマーキーさん、スタートアップ業界ではschooの代表・森さん、リノベる。の 山下智弘さんや、スターフェスティバルの岸田祐介さんも近畿大学の出身です。そのエネルギッシュな卒業生一覧はWikipediaにてご覧ください。 1時間にわたる近畿大学広報課・世耕さんのプレゼンテーションは、まるでエンターテイメント。プレゼン後、近畿大学の皆さんに「すっごいですね!」と感動をお伝えしたところ、後ほどご丁寧に御礼のメールをいただいたのですが…… 署名にまで「マグロ大学って言うてるヤツ、誰や?」を仕込む徹底っぷり。 ※こちらは、全職員さんの署名に共通で入っているそうです。全員共通、強制で。 いやぁ、私も大阪人ですが、これには負けました。やられました。ネットPRに悩む方は、何か参考にされると良いかもしれません。この振り切る姿勢、徹底ぶりを…! 今回は近畿大学さんのお話ばかりになりましたが、私たちはお菓子のスタートアップカンパニー・BAKEです。「お菓子にもっと新しい価値を」というミッションのBAKEですが、固定概念をぶっ壊す近畿大学さんの取り組みには(勝手ながら)大きなシンパシーを感じてしまいました。 BAKEのことはこちらの記事などでチェックしてみてください! 「お菓子のスタートアップ」を立ち上げて丸2年。1人から120人に増えたBAKEのこれまでと、今後のミッション(長沼真太郎) また、本イベントは、BAKEもお世話になっているニュースリリース配信サービスニューズ・ツー・ユーさんの企画でした。ニューズ・ツー・ユーさん、ありがとうございました! – – Text by 塩谷 舞( @ciotan ) ・株式会社BAKE 採用情報 ・株式会社BAKE Facebook
THE BAKE MAGAZINEでは週に2回、食や農業、デザイン、サイエンス、テクノロジーなどにまつわる記事を発信したり、BAKEの活動や働く人たちのストーリーをお伝えしています。
最新情報はこちらのアカウントでお届けします!https://t.co/LIxHbzNAS2
— 株式会社BAKE (@bake_jp) 2016年6月2日