日本に13人、茶師十段・小林裕さんに聞く、これからの「抹茶スイーツ」とは?

2019.03.29

日本茶の世界に柔道や、将棋のように「段」があるのをご存知でしょうか。最高位である茶師十段は、日本に13人しかいない、いわば日本茶のプロフェッショナル。

祥玉園の小林裕(こばやし ひろし)さんは京都府で抹茶の栽培・生産から、小売での販売を一貫して行っている、唯一の「茶師十段」です。

テレビや雑誌でもその道のプロフェッショナルとして紹介されるだけでなく、京都府茶業連合青年団の会長も務め、業界の向上にも取り組まれています。

京都といえば、宇治抹茶。製菓企業であるBAKEとして気になるのはやはり「抹茶スイーツ」の動向。

昔は「甘い抹茶」といえば、お茶屋さんに設置されたグリーンティーが定番でした。

が、20年ほど前に「抹茶スイーツ」がコンビニやスーパーに登場、海外でもあっという間に抹茶人気に火が付きました。すっかりスイーツのラインナップとして定着した「抹茶味」。

BAKE CHEESE TARTの海外店舗でも人気だそうで、アジア圏の店舗でも現地のお客様から熱烈なリクエストがありました。

2018年に一部店舗を除き、期間限定で販売された「焼きたて抹茶チーズタルト」。

縁あって取材が叶い、編集部とBAKEのメンバーは京都にある「祥玉園」の小林裕さんを訪ねました。

インタビューでは茶師の仕事に始まり、宇治抹茶の地域ブランドが生まれた理由、そしてこれからの「抹茶スイーツ」づくりにどう取り組むべきかを伺いました。

茶師の仕事と、祥玉園の独自性

小林さんは京都で唯一の「茶師十段」だと伺いました。茶師とは、どんなお仕事をしているのですか。

小林:茶師の仕事としては、お客様からご要望の味を再現するために、「合組(ごうぐみ)」という方法で茶葉をブレンドしてつくっています。

合組の様子

小林:例えばお店で販売するなら、量も必要です。市場で茶葉を見て、飲んで、味を見極めて、量を確保することも茶師の仕事です。

お茶はその年によって全然味が違いますから、合組みによって毎年変わらない味と、価格をつくることが求められます。

いわゆる「茶問屋(ちゃどんや)」という、日本茶の卸業も仕事のひとつです。

繊細な味覚や嗅覚だけでなく、お客様の予算など、ビジネスの感覚も必要になる仕事ですね。

小林:おいしい味がつくれても、高すぎたり、量が足りないとお茶屋さんは商売になりませんからね。茶師としての感覚はもちろんやけど、祥玉園は茶農園を持っていて、栽培の知識があることが強みになってるんちゃうかな。

祥玉園の茶農園を案内してもらいながら、お話を伺いました。茶葉の緑がいきいきと輝いています。

生産と販売、どちらの立場も理解できる茶師は、珍しいですか?

小林:茶師十段の中でもごくわずかだと思います。

そうなんですね。茶業界は若手の育成なども、されるのですか?

小林:京都府の茶業界に関わる人の育成も大事なお役目です。以前、京都府茶業連合青年団の会長をしていましたが、「審査が厳しい!出題が難しい!」と言われることもありました。(笑)

祥玉園に飾られていた、茶審査技術十段位の認定証

スポーツで例えると、地方大会の次は全国ですよね。そこで勝ち上がるコツがあるのでしょうか。

小林:全国大会は、教科書的な対策をするだけでは、必ず頭打ちします。だから京都府の大会は、小手先のテクニックや、傾向対策で通過できないようにしてます。

「全国茶審査技術競技大会」では、実務経験のバックボーンがないと上は目指せません。

参考サイト:http://www.geocities.jp/tochakai/page020.html


なぜ「抹茶といえば宇治」?地域ブランドの歴史的背景

日本茶のなかでも「抹茶」が人気なのはなぜでしょう?

小林:スイーツで食べることはあっても、まだまだ本物の抹茶を飲む人は少ないです。それにも関わらず「抹茶といえば宇治抹茶」と言われるか、不思議に思いませんか。

確かに、不思議です。

小林:日本茶の歴史は800年前、中国から伝わったのが起原と言われています。現在の日光を遮断する抹茶の製法が確立したのは、さらに400年経ったあと。

え、まだ半分ですか!400年前ということは江戸時代ですね。もっと昔から飲まれているのかと思っていました。

小林:抹茶の栽培は、他の茶葉より難しいと言われています。土との相性、光を遮るタイミング、摘む時期、ちょっとした掛け算で味に大きな影響を与えます。

写真はお茶の花。宇治の土地は、水はけがよく、肥沃な土地であるため、良い茶葉の栽培に適している。

そうなんですね。そもそも、なぜ京都ではじまったのか気になります。

小林:話は戦国時代に遡ります。当時、お茶を嗜むことは武将のステータスでした。茶の席に招待したり、茶器を贈ることが、家来への褒美だったと伝わっています。

つまり、宇治の抹茶は政治の道具として特権的な存在でした。その価値を維持するため、栽培を宇治の地域に限定していたそうです。技術的にも全国に広がりにくかったんですよ。

なるほど、歴史的背景を知ると納得です。ちなみに、京都のなかでも、宇治である理由は何ですか?

小林:宇治の土地は水はけが良くて、茶葉の栽培に向いていますし、抹茶は年に一度しか収穫しません。一番歴史の長い京都でも、まだ400回しか収穫を経験していませんが、400年の試行錯誤のなかで革新を続けた技術の蓄積が、強みになっています。

宇治抹茶ブランドは、歴史と土地の恵みがあってこそ生まれたんですね。興味深い……!

抹茶ブームが日本茶業界にもたらしたもの

小林さんは抹茶スイーツについて、どう思いますか?

小林:ひと昔前やったら「お菓子にお抹茶使いまへんか」なんて言うたら、「何言うとんねん」みたいな顔されたかもしれません。

(BAKE一同、緊張感)

小林:けど、今はお菓子に使いたいというお話をよくもらいますね。

そうなんですね!(ホッ)

小林:ハーゲンダッツの抹茶味が出たタイミングくらいからじわじわ始まってきたように感じますね。

ハーゲンダッツ「グリーンティー」が発売されたのは、20年ほど前だそうですね。

小林:そうそう。抹茶フレーバーが一般に知られて、流行したのも、その頃ちゃうかな?広告もよく見かけてたし。 

抹茶スイーツに関して言えば、意外にも東京が火つけ役になったんですね。

小林:ブームは東京からはじまったかもしれないけど、京都は「抹茶スイーツ」という新しい名物ができて、観光産業として元気に商売させてもらってます。

こんなに抹茶スイーツが長く愛されているのか、ちょっと不思議です。

小林:今でもそうですが、飲食店では基本的にお茶は無料で出してますから、日本人は価値を見いだしにくかったと思います。

江戸時代が終わってから茶道が一般的に普及し、和の雰囲気を嗜むものとして庶民にも広まりました。

もちろん、武将や貴族に振る舞われたという文脈の付加価値だけでなく、本質的においしいかが大事ですよね。庶民にとっても、抹茶はお金を払う価値を感じていたんじゃないでしょうか。

抹茶は日本茶の中でも別格な存在なんですね。そうした背景があるからこそ、スイーツになることで、新たな付加価値が生まれたというか。

小林:そうかもしれませんね。現代ではお茶を飲まない生活様式になったことで、茶葉の単価(茶価)が長らく低迷していました。

その中で、抹茶や日本茶のブームに火がついて、もう結構な年数が立ちましたが、抹茶を扱ってる業者さんは元気よく商いさせてもらっていますよ。

最近は抹茶に新規参入するお茶屋さんが増えて来たし、お抹茶の需要は増えていると思います。

祥玉園では高価なお茶も扱われていると聞いています。抹茶がお菓子に使われることについて、実際どのように感じられますか?

祥玉園最高傑作。農林水産大臣賞を受賞した自社のそれぞれの茶園でつくられた、玉露と碾茶を茶士十段が黄金比でブレンドしたオリジナル緑茶。2016年伊勢志摩サミットに採用され、各国首相に振舞われた。祥玉園公式サイトより引用:http://shop.shogyokuen.co.jp/?pid=137242539

小林:今までお茶にまったく興味がなかった方が口にする機会が増えましたし、非常にありがたいことです。

色々なスイーツが出てくる中で、淘汰されずに残っていくのは、お茶の味わいを大事にしているもの。お茶の味をしっかり残してるものは、やっぱりおいしいです。

抹茶を挽き具合を確かめる小林さん。良い香りが立ち込めます。

小林:だからお抹茶が好きなんですよっていうふうに言っていただけるっていうことはお茶が好きやっていう人やと思うんですよね。

抹茶スイーツのご相談もよくもらいますが、スイーツであってもお茶本来の風味を大事にしながら、つくっていきたいですね。

茶葉を挽く臼と、挽きたての抹茶。美しい抹茶色です。

お茶本来の風味、ということは、やはり茶葉が鍵になるのでしょうか。

小林:元になる「抹茶の葉」が一番大事。合わせる素材との相性を考えながら上質な茶葉を選ぶこと事が大事です。

色々な抹茶がありますけど、やっぱりそのスイーツにあった「ほんまもん」を使わないとお客様に美味しいと言ってもらえないですから。

宇治抹茶や京都ブランドなど、付加価値は色々ありますが「美味しさ」はストレートに伝わりますね。製菓業界にいる身として、とても勉強になりました。ありがとうございます。


祥玉園とコラボした、新しい「焼きたて抹茶チーズタルト」が登場!(4/9追記)

なんと、京都・祥玉園製茶の小林裕氏とコラボレーションした抹茶チーズタルト2種が、実際に販売されることになりました!

特設サイト:https://cheesetart.com/lp/matcha2019/

1)「焼きたて抹茶チーズタルト『深緑』」:4/15(月)〜4/30(火・祝)

第一弾となる『深緑』は、一口食べると抹茶のインパクトが口いっぱいに広がるチーズタルトです。しっかりと感じる強い抹茶の香りと、深い苦味が特徴で、チーズムースの爽やかな酸味が合わさり、濃厚な味わいが実現いたしました。


2)「焼きたて抹茶チーズタルト『涼』」:5/1(水・祝)〜5/31(金)

『涼』はチーズムースの爽やかさを抹茶が引き立てる一品に仕上げました。抹茶本来の甘みと後引く香り良さがクセになるチーズタルトです。


チーズタルトのためのオリジナルブレンドの抹茶を開発

上質な抹茶本来の苦味・旨味・香りを活かしながら、よりチーズムースの美味しさを引き出すにはどうすれば良いのか。いっそう美味しい抹茶チーズタルトを求めて訪ねたのが、京都・祥玉園製茶でした。

茶師十段位を持つ、小林裕さんにBAKE CHEESE TARTのためだけに30種以上の宇治茶葉をオリジナルブレンドしていただきました。その名も『ファースト・ビター』

オリジナルブレンドの抹茶を贅沢に使用したチーズタルトは、しっかりとした苦味と豊かな香りをたたせるために、あえて早摘みした若い茶葉を採用。そして、抹茶をチーズムースだけでなく、タルト生地にもたっぷりと練り込みました。

お茶の特徴を熟知している小林氏だからこそできる匠の技と、チーズタルトに本気の「BAKE CHEESE TART」が自信を持ってお届けする抹茶チーズタルトをお楽しみください。

焼きたて抹茶チーズタルト 商品概要
■商品名/価格/販売期間:
焼きたて抹茶チーズタルト 『深緑』/320 円(税込)/2019年4月15日(月)〜4月30日(火・祝)
焼きたて抹茶チーズタルト 『涼』 /300 円(税込)/2019年5月1日(水・祝)〜5月31日(金)
■販売店舗:BAKE CHEESE TART 国内全店舗 ※BAKE CHEESE TART広島店を除く

BAKE 抹茶ミルクソフト 商品概要
■商品名/価格/販売期間:BAKE 抹茶ミルクソフト/453円(税込)/2019年4月15日(月)〜5月31日(金)
■販売店舗:BAKE CHEESE TART 自由が丘店、ららぽーと海老名店、テラスモール湘南店、イクスピアリ店、イオンモール高崎店、名古屋タカシマヤ店、mozo ワンダーシティ店、金沢フォーラス店、京都寺町店、コトチカ京都店、そごう神戸店、ゆめタウン徳島店、アミュプラザ長崎店
※コトチカ京都店では、オープン1周年を記念して、5月23日(木)〜31 日(金)の期間限定で、焼きたて抹茶チーズタルト 『深緑』・『涼』を併売いたします。また、6月1日(土)よりご当地商品として、焼きたて抹茶チーズタルト『涼』、BAKE 抹茶ミルクソフトを通年販売いたします。
※自由が丘店は4月16日(火)〜23日(火)まで改装工事のため店休となり、期間中販売を行いません。

公式サイト・SNS

2019年の焼きたて抹茶チーズタルトの特設サイトが公開されました。

https://cheesetart.com/lp/matcha2019/

WEBサイトのディレクションはBAKE Inc.の小野澤慶が、制作はSuper Crowds inc.が担当いたしました。

Instagram:@bakecheesetart
Twitter:@bakecheesetart
Facebook:@bakecheesetart

それぞれの季節にぴったりの味わいを実現するために、抹茶とチーズムース、クッキー生地の黄金バランスを追求いたしました。晩春から初夏へ爽やかさが恋しくなる気分に合わせて、抹茶を贅沢に使った新商品を是非お楽しみください。

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